地熱発電・太陽熱発電所は環境破壊?30個の理由意見・解説考察 その5 再生エネルギーは環境破壊?3万文字レポート

 

  1. そもそも地熱発電って何?
  2. 太陽熱発電ってそもそも何? 水の無駄遣い
  3. 地熱発電所・太陽熱発電所の冷却水の取水が、河川や海洋の生態系に影響を与える可能性があります。
  4. 太陽熱発電所は広大な土地を必要とするため、建設によって自然環境が大きく変化し、動植物の生息地が奪われる可能性があります。
  5. 太陽熱発電所がバードストライクを誘発している。
  6. 地熱発電所では、冷却システムや蒸気タービンの運転に大量の水が必要とされます。
  7. 太陽熱発電所 地熱発電所 冷却水の排出による水質汚染
  8. 太陽熱発電所 太陽熱集光器の設置による土地の減少
  9. 太陽熱発電所の建設による景観の変化
  10. 太陽熱発電所 集光装置の反射光による影響
  11. 太陽熱発電所の運営に伴う温室効果ガスの排出
  12. 太陽熱発電効率の低さによる土地利用の非効率性
  13. 太陽熱発電所の廃棄物処理による環境負荷
  14. 太陽熱発電所 蓄熱システムに使用される材料の環境影響
  15. 太陽熱発電所 送電線の建設による自然環境の分断
  16. 太陽熱発電所の建設による文化的・歴史的遺産の破壊
  17. 太陽熱発電所の事故や災害による環境汚染
  18. 太陽熱発電所の建設による地域社会への影響 生活の質の低下
  19. 太陽熱発電所、太陽光発電所、風力発電所の建設には、広大な土地が必要とされます。
  20. 風力発電 バードストライク(鳥類の衝突死)の問題
  21. 騒音や低周波音による影響 風力発電所の運転に伴って発生する騒音や低周波音
  22. 景観の変化と地域社会への影響 景観条例の制定や景観ガイドラインの策定
  23. 発電設備の製造・廃棄に伴う環境負荷 太陽光パネルや風車の製造 希少金属 採掘で環境破壊
  24. 太陽光パネルの主要材料であるシリコンの精製には、大量の化学物質とエネルギーが必要とされます。
  25. 太陽熱発電では、大規模な集光装置や熱交換器、蒸気タービンなどの設備が必要で資源の浪費?
  26. 風力発電では、風車のブレードにリサイクルしにくい複合材料(ガラス繊維強化プラスチックなど)が使用されています。
  27. 地熱発電では、地下の高温の蒸気や熱水を利用して発電を行います。
  28. 水質汚染・土壌汚染 太陽熱発電所の集光装置のメンテナンスに使用される化学物質の影響
  29. 太陽熱発電所の建設による土地の価値の変化 地価が下がる
  30. 太陽熱発電所の建設に伴うインフラ整備の環境影響 動物に悪影響
  31. 太陽熱発電所エネルギー政策の観点からの環境影響 非効率すぎる太陽熱
  32. 洋上風力発電所の建設に伴う海底の攪乱が、海洋生物の産卵場所を破壊する可能性があります。
    1. 洋上風力発電所の建設には、風車を支える基礎構造物の設置が必要です。
    2. 海底の攪乱は、産卵場所だけでなく、幼稚仔魚の成育場所にも影響を及ぼす可能性があります。
    3. 発電所の設置場所の選定においては、魚類の主要な産卵場所を避けることが重要です。
    4. 発電所周辺に人工の産卵場所を整備するなど、生態系の保全を図ることも有効な対策と言えます。
    5. 政策面では、洋上風力発電の環境影響評価ガイドラインの策定や、モニタリング体制の整備、生態系保全策の義務化などが必要でしょう。
  33. 洋上風力発電所の設置が、海鳥の渡りのルートを阻害する可能性があります。
    1. 多くの海鳥は、季節ごとに決まった渡りのルートを通って移動します。
    2. 風力発電所の風車の存在が、海鳥の渡りのルートを変更させる可能性もあります。
    3. 日本は、アホウドリやウミネコなど、多様な海鳥の生息地となっています。
    4. 洋上風力発電所の一部の基礎構造物は、人工礁として機能し、一部の海鳥の生息地となる可能性もある。
    5. 人工礁効果と餌資源の回復
    6. 建設工事による影響
    7. 運転に伴う影響

そもそも地熱発電って何?

地熱発電における水の使用量は、発電の効率や環境への影響に大きく関連しています。地熱発電は、地下のマグマによって加熱された水や蒸気を利用して電力を生成する再生可能エネルギーの一形態です。このプロセスにおいて水の役割は多岐にわたります。

地熱発電の仕組み
地熱発電では、地下深くに存在する高温の地熱流体(蒸気や熱水)を取り出し、タービンを回して発電します。具体的には、以下のような流れで行われます。

地熱貯留層からの抽出 地下1,000メートルから3,000メートルの深さにある地熱貯留層から、蒸気や熱水を生産井を通じて引き上げます。

発電 引き上げた蒸気でタービンを回し、そのエネルギーを電力に変換します。

還元 発電後の蒸気は冷却され、熱水として還元井を通じて再び地下に戻されます。このプロセスにより、地熱貯留層内の水が循環し続けることが可能になります。

発電方式
フラッシュ発電 高温の蒸気を直接利用する方式で、この場合は比較的多くの水が必要です。蒸気とともに引き上げられた熱水は還元されるため、全体として循環する水量が大きいです。

バイナリー発電
熱水を用い、水よりも沸点が低い媒体(例 ペンタン)を加熱して蒸気を生成します。この方法では、直接的な蒸気使用が少ないため、水の使用量も相対的に少なくなります。

地域特性
地熱資源が豊富な火山地域では、自然に存在する水源を活用できるため、水の供給が安定しています。しかし、乾燥地域や水資源が限られている場所では、水の使用量が問題視されることがあります。

環境への配慮
地熱発電はCO₂排出量が少なく、持続可能なエネルギー源として注目されていますが、水資源への影響も考慮する必要があります。過剰な抽出や不適切な管理は、地下水位の低下や周辺環境への悪影響を引き起こす可能性があります。

タービンを回して発電するのに温泉資源を利用しているのが地熱発電
火力発電や水力発電、原子力発電もすべてタービンを回して発電している

 

太陽熱発電ってそもそも何? 水の無駄遣い

太陽光発電で十分であるため、日本での太陽熱発電所の商業運転の実績は少ない

冷却水の必要量
太陽熱発電所では、冷却水が重要な役割を果たします。特に、トラフ式やタワー式の太陽熱発電プラントでは、蒸気の復水器に水冷式熱交換器を用いる場合、トラフ式では約3,000リットル/MWh、タワー式では約2,000リットル/MWhの水が必要とされます。この冷却水は、発電効率を維持するために必要です。

水資源が豊富な地域では、これらの水量を確保しやすいですが、水不足が懸念される地域では、冷却用水の供給が難しくなることがあります。そのため、水冷式と比較して熱交換効率が劣る空冷式熱交換器を採用する場合もあります。

水の使用量は運用コストにも影響します。冷却水を多く使用するシステムは、その分水の供給コストや管理コストが増加します。したがって、水資源の管理は経済的な観点からも重要です。

集光型太陽熱発電は、レンズや鏡で太陽光を集め、その熱で水を蒸発させて蒸気タービンを回す方式です。このプロセスでは、水は主に冷却と蒸気生成に使用されます。効率的なエネルギー変換を実現するためには、大量の水が必要となります。

ハイブリッドシステム
一部の太陽熱発電所では、火力発電とのハイブリッドシステムを採用しています。この場合、補助的な燃料を使用して発電するため、水の使用量はその設計によって変わります。特に、夜間や日射量が少ない時間帯でも安定した出力を確保するために、水資源の管理が重要です。

太陽熱発電は再生可能エネルギーとして注目されていますが、水資源の使用は環境への影響も考慮しなければなりません。特に乾燥地域や水不足地域での運用には注意が必要です。

太陽熱で水を蒸発させてタービンを回す発電方法が太陽熱発電
エコに見えるが水の無駄遣い

太陽熱発電システムでは、冷却や蒸気生成のために大量の水が必要です。特に、発電所では冷却塔を使用して蒸気を冷却するために水を大量に消費します。このため、乾燥した地域や水資源が限られている場所では、水不足を引き起こす可能性があります。たとえば、アメリカ南西部では、太陽熱発電所が水資源に与える影響が問題視されています。

農業や都市用水供給といった他の用途と競合することも問題です。特に農業は水を多く必要とするため、太陽熱発電所が新たな水需要を生むことで、既存の水供給システムに圧力をかけることになります。この競争は、水資源の管理や政策にも影響を及ぼします。

水資源の浪費は、環境への影響も考慮しなければなりません。過剰な水使用は生態系に悪影響を与え、河川や湖沼の生物多様性を損なう可能性があります。また、水質の低下も懸念される要素です。これらは持続可能な開発目標にも反する行為となります。
太陽熱発電所では蒸気の復水器に水冷式熱交換器を用いるプラントが多い
水冷式プラントでは冷却用に大量の水を必要とする
十分な水量が得られない地域では、水冷式と比較して熱交換効率に劣り設備費の高い空冷式熱交換器を採用せざるを得ない
空冷式熱交換器の高効率化・低コスト化が求められている

 

地熱発電所・太陽熱発電所の冷却水の取水が、河川や海洋の生態系に影響を与える可能性があります。

大量の冷却水の取水により、河川の流量が減少したり、海洋生物の幼生が取り込まれたりする恐れがあります。ただし、取水口の設計を工夫し、生物の取り込みを防ぐスクリーンを設置するなどの対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることができます。また、河川や海洋の生態系のモニタリングを行い、取水の影響を監視することも重要です。

太陽熱発電所の仕組み
太陽光を反射板などで集めた熱で蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して発電する。
一方、地熱発電所では地下水を利用しています。地熱発電は、地下で熱エネルギーを持っている水を地上に汲み上げて、その熱エネルギーでタービンを回して電気エネルギーに変える仕組みを持っています。

地熱発電に必要な3つの要素は
・熱エネルギーを地上の発電所に効率よく運ぶ媒体としての「水」
・水を溜める「容器」のような地中の構造
・容器の蓋の役目を果たす「キャップロック」

地熱発電所では、地下のマグマに熱せられた地下水の蒸気でタービンを回し、発電機を回して電気を作ります。
つまり、太陽熱発電所と地熱発電所は発電の仕組みが全く異なります。

太陽熱発電所では、主に以下の用途で水を使用しています
・蒸気タービンを回転させるための水蒸気の発生
・冷却水としての使用
・集光ミラーの洗浄
その使用量は、発電方式や冷却方式によって異なります。

トラフ式太陽熱発電では、冷却水として約3,000L/MWh、蒸気タービン駆動用に約8%、ミラー洗浄に約2%が使用されています。
一方、ディッシュ型では冷却に水を必要としません。
また、蒸気の復水器に水冷式熱交換器を用いるプラントでは大量の冷却水を必要としますが、十分な水量が得られない地域では空冷式を採用せざるを得ず、熱交換効率が劣ります。

太陽熱発電の中でも特にディッシュ型は、冷却時に水が不要であるというメリットがあります。
一般的に、太陽熱発電では蒸気の復水器に水冷式熱交換器を用いるプラントが多く、冷却に大量の水を必要とします。しかし、十分な水量が得られない地域では、水冷式と比較して熱交換効率に劣り設備費の高い空冷式熱交換器を採用せざるを得なくなります。
一方、ディッシュ型太陽熱発電は発電効率が高く、冷却時に水が不要であるなどの特徴があります。ディッシュ型は集光ミラーの現地購入・加工が可能で、プラントコストが安いという利点もあります。
このように、ディッシュ型太陽熱発電は冷却に水を必要としないため、水資源に乏しい地域での導入に適しています。今後、高温蓄熱が可能で蓄熱設備を小さくできることから、コスト競争力を持ち主流となる可能性が高いとされています。

地熱発電は、再生可能エネルギーの一つとして注目を集めていますが、発電所の運用には冷却水が不可欠であり、その取水が周辺の河川や海洋の生態系に影響を与える可能性が指摘されています。
地熱発電所では、高温の熱エネルギーを利用して蒸気を発生させ、タービンを回して発電を行います。このプロセスで使用された蒸気は、冷却水によって冷やされ、再び水に戻されます。つまり、発電に使用する水を循環させるために、大量の冷却水が必要となるのです。
冷却水の取水は、主に河川や海洋から行われます。大規模な地熱発電所では、1日に数十万トンから数百万トンもの水を取水することがあります。こうした大量の取水は、河川の流量を大きく減少させる可能性があります。流量の減少は、河川の水位低下や、河床の露出、水温の上昇などにつながり、河川生態系に深刻な影響を及ぼしかねません。

空冷方式の採用
地熱発電所では通常、蒸気タービンを冷却するために大量の水を使用しますが、空冷方式を採用することで水の使用量を大幅に削減できます。

空冷方式では、空気を使ってタービンを冷却するため、水を使う湿式冷却方式に比べて水の消費量を90%以上削減できます。

蒸発エネルギーの活用
水の蒸発から得られるエネルギーを利用する新しい再生可能エネルギー発電方式が研究されています。
この方式では、バクテリアが空気中の水分を吸収・放出する際の膨張・収縮を利用して発電します。米国内の湖沼からの水蒸発だけでも年間発電量の7割に相当するエネルギーが得られる可能性があり、水の蒸発を抑制しつつ発電できる画期的な方式といえます。
実用化にはいくつかの課題があります
現在は実験室レベルで、実際の湖沼での実証実験が必要
蒸発を利用して発電すると、蒸発量が減少するため、水資源への影響を考慮する必要がある
発電効率の向上や、材料・デバイスの改良が求められる

太陽熱湯沸装置の活用
太陽熱を利用して温水を作り、その温水を使って蒸気タービンを回す「太陽熱湯沸装置」を用いた発電方式もあります。
この方式では、蒸気を作るための水の使用量が少なくて済むため、水資源への負荷を抑えられます。また、安全性、安定性、拡張性に優れ、低コストで環境に優しい発電方式だと評されています。
太陽熱発電所の水取量を減らすには、空冷方式の採用、蒸発エネルギーの活用、太陽熱湯沸装置の活用などが有効な手段となります。再生可能エネルギーの導入拡大と環境保全のバランスを取るためにも、これらの技術の活用が期待されます。

太陽熱湯沸装置の変換効率は40〜60%程度と、太陽光発電の10〜20%に比べて非常に高いことがわかります。具体的には、1m2あたりの太陽エネルギーから太陽光パネルは150Wほど(変換効率15%)しか電気エネルギーに変換できませんが、太陽熱温水器は400Wほど(変換効率40%)を熱エネルギーに変換できるとされています。
つまり、同じ面積の太陽エネルギーを利用する場合、太陽熱温水器の方が2倍以上効率的に利用できるということになります。

また、太陽熱温水器は夏場80℃、冬場でも60℃程度の温水を作ることができ、給湯用途に十分活用できる高温の熱エネルギーを得られます。

太陽熱湯沸装置は太陽光発電に比べて高い変換効率を持ち、給湯用途に適した温度の熱エネルギーを得られる優れた技術であるといえます。

特に、河川の水量が少ない乾季などには、取水による影響が顕著に現れると考えられます。河川の流量減少は、魚類などの水生生物の生息環境を悪化させ、種の多様性の低下や個体数の減少を引き起こす恐れがあります。また、河川の水質悪化や、河岸植生の衰退なども懸念されます。
海洋からの取水についても、生態系への影響が問題視されています。海水の取水口には、魚類や甲殻類、プランクトンなどの海洋生物の幼生が大量に取り込まれてしまうことがあるのです。これらの生物は、発電所の冷却システムに取り込まれると、高温の熱水や薬品処理によって大部分が死滅してしまいます。大量の幼生の死は、海洋生態系の食物連鎖に影響を与え、魚類資源の減少などにつながる可能性があります。
ただし、こうした影響は、発電所の立地条件や取水方法、冷却システムの設計などによって大きく異なります。例えば、河川の流量が豊富な地域や、海洋生物の幼生が少ない海域では、影響は比較的小さくなると考えられます。
また、取水口の設計を工夫することで、生態系への影響を最小限に抑えることも可能です。例えば、取水口にスクリーンを設置し、生物の取り込みを防ぐことができます。また、取水口の位置を生物の生息域から離れた場所に設置したり、取水量を必要最小限に抑えたりすることも有効でしょう。
加えて、冷却水の排水についても、適切な処理と管理が求められます。高温の排水を直接河川や海洋に放出すると、水温の上昇による生態系への影響が懸念されます。排水の冷却や、放出場所の選定など、周辺環境への配慮が必要です。
地熱発電所の冷却水取水が生態系に与える影響については、まだ十分な知見が蓄積されているとは言えません。今後、実証事例を増やし、環境影響評価の手法を確立していくことが求められます。
また、発電所の計画段階から、地域の生態系への影響を十分に調査・予測し、適切な対策を講じることが重要です。河川や海洋の生物相や水質、水量などについて、継続的なモニタリングを行い、取水の影響を監視する必要があります。

地熱発電プラントでは、冷却水の使用量が平均して3,000L/MWh程度必要とされています。冷却水は主に復水器の熱交換に使用されますが、水冷式の場合は大量の水を必要とします。水が十分に得られない地域では、水冷式と比べて効率が劣る空冷式熱交換器を採用せざるを得なくなります。
水冷式の太陽熱発電所では、大量の冷却水を取水する必要があります。取水口付近の生態系への影響を防ぐため、対策が取られています。
・取水口の塵芥除去
・取水口周辺の凍結対策
・水車内の異物除去
・冷却水用ストレーナ(フィルタ)の定期的な清掃
これらの対策により、取水口付近の生態系への影響を最小限に抑えることが可能です。ただし、大量の取水が長期的に続けば、取水口周辺の水生生物に何らかの影響が出る可能性は否定できません。
以上のように、地熱発電所の冷却水取水は生態系に一定の影響を与える可能性がありますが、適切な対策を講じることで影響を最小限に抑えることができると考えられます。

さらに、発電所の運用においては、地域の環境保全団体や漁業関係者などのステークホルダーとの対話が欠かせません。生態系への影響について、情報を共有し、理解を得ることが重要です。
太陽熱発電は、化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー源として期待されていますが、冷却水の取水による生態系への影響は無視できない問題です。河川や海洋の生態系を保全しつつ、太陽熱発電を発展させていくためには、科学的知見に基づく適切な対策と、ステークホルダーとの合意形成が不可欠でしょう。

生態系への影響と環境保全措置
発電所建設による土地や自然環境の改変が生物多様性に与える影響

気候変動など長期的な環境への影響
外来種の持ち込みによる生態系への悪影響
環境アセスメントの結果と、生態系保護のための具体的な環境保全措置

事業計画と地域との共生
発電所の設置場所や規模、事業計画の概要
地域の特性や住民の意向を考慮した事業計画の策定
住民説明会の開催や、地域との対話を通じた相互理解の促進
様々なステークホルダーとの協議による地域との共生

発電所の運転管理と監視
遠隔監視システムによる発電所の運転状況や保守点検の情報共有
災害時の緊急対応や、近隣施設・協業企業との連携
発電所の維持管理に関する取り組みと、地域への貢献
これらの情報を、計画段階から運転管理の各段階で、地域の環境保護団体や漁業関係者、行政などのステークホルダーと共有し、対話を重ねることが、太陽光発電所の持続可能な運用につながります。

技術的には、閉鎖式の冷却システムの開発や、冷却水の再利用、代替的な冷却方式の導入などが求められます。また、取水口の設計や運用方法の最適化、モニタリング技術の高度化なども重要な課題です。
政策面では、太陽熱発電所の環境影響評価ガイドラインの策定や、モニタリング体制の整備、生態系保全策の義務化などが必要でしょう。同時に、環境負荷の少ない冷却技術の研究開発を支援し、技術革新を促進することも求められます。

政策面での対応
発電所の環境影響評価に関するガイドラインを策定し、評価の標準化を図る
発電所建設後のモニタリング体制を整備し、長期的な環境影響を把握する
生態系への影響が大きい場合は、代替地の確保など生態系保全策を義務化する

技術開発の支援
発電所の建設や運転に伴う環境負荷を低減する冷却技術などの研究開発を支援し、技術革新を促進する
発電効率の向上により、同じ発電量を得るために必要な発電所の規模を小さくすることで、環境への影響を最小限に抑える

これらの取り組みにより、発電所の環境影響を適切に評価・管理しつつ、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることが重要です。事業者には透明性の高い環境影響評価の実施と環境保全への配慮が求められ、行政は適切な規制と支援策を講じていく必要があります。

持続可能な社会の実現には、再生可能エネルギーの推進が欠かせません。しかし、その過程で生態系を犠牲にすることがあってはなりません。太陽熱発電の健全な発展のためには、環境への影響を最小限に抑える技術と、地域社会との合意形成に基づく適切な管理が必要不可欠なのです。
私たちは、エネルギー問題と環境問題の両立という難しい課題に直面しています。太陽熱発電の可能性を追求しつつ、生態系への影響を最小限に抑える英知を結集することが求められています。科学的知見と社会的合意に基づき、持続可能な形で再生可能エネルギーを発展させていくことが求められています。

太陽熱発電所は広大な土地を必要とするため、建設によって自然環境が大きく変化し、動植物の生息地が奪われる可能性があります。

地域の生態系のバランスが崩れ、生物多様性が損なわれる恐れがあります。生態系とは、ある地域に生息する生物とそれを取り巻く環境が相互に影響を及ぼし合う仕組みのことを指します。

生態系への影響
動植物の生息・生育地が失われ、生物多様性が損なわれる恐れがあります。
地域の生態系のバランスが崩れ、生物種の絶滅や個体数の減少などが起こる可能性があります。
生態系サービス(食料、木材、淡水など自然から得られる恵み)の低下が懸念されます。
環境保全の重要性
事前に専門家による現地調査と環境影響評価を十分に行う必要があります。
動植物の生息地や重要な自然環境への影響を最小限に抑えるよう、適切な環境保全措置を講じることが不可欠です。
自然環境の保護と再生可能エネルギーの導入のバランスを取ることが重要です。
生態系影響評価の重要性
事前に専門家による現地調査と環境影響評価を十分に行う必要性が指摘されています。動植物の生息地や重要な自然環境への影響を最小限に抑えるため、適切な環境保全措置を講じることが不可欠とされています。
生物多様性保全対策
太陽熱発電所の建設に伴い、動植物の生息・生育地が失われ、生物多様性が損なわれる恐れがあります。地域の生態系のバランスが崩れ、生物種の絶滅や個体数の減少が起こる可能性があるため、その対策が研究課題となっています。
生態系サービスへの影響評価
太陽熱発電所の建設により、食料、木材、淡水など自然から得られる恵み(生態系サービス)の低下が懸念されています。生態系サービスへの影響評価と対策が重要な研究テーマとなっています。
総じて、太陽熱発電所の建設が生物多様性や生態系に与える影響を事前に適切に評価し、専門家の助言を踏まえた対策を講じることが、生態系保全の観点から重要であると研究されています。
太陽熱発電所の建設では、地表の掘削や整地で水はけや保水力が低下する可能性があります。

その結果、植生の変化や土壌浸食などの問題が生じ、周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があります。土壌浸食とは、降雨や風などの外的要因によって土壌が流出または飛散することを指します。

水はけや保水力の低下
地表の掘削や整地により、土壌の構造が損なわれ、水はけや保水力が低下する可能性があります。
植生の変化
水はけや保水力の低下により、植生が変化し、在来種の減少や外来種の侵入が起こる可能性があります。
土壌浸食
植生の減少により、土壌が風雨に曝され、浸食が進行する可能性があります。
周辺環境への影響
上記の問題により、発電所周辺の生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。
したがって、太陽熱発電所の建設においては、環境アセスメントを十分に行い、適切な対策を講じることが重要です。

太陽熱発電所がバードストライクを誘発している。

太陽熱発電所では、太陽光を反射して集光するために大型の鏡やレンズが使用されます。これらの集光装置に鳥類が衝突したり、強い光に惑わされて行動に影響が出たりする可能性があります。特に渡り鳥の移動ルート上に発電所が建設された場合、鳥類の生態系に大きな影響を与える恐れがあります。

集光装置に直接衝突して死亡する恐れがある。米国の発電所では2分に1羽の割合で鳥が墜落していたという報告もある。
強い集光光に惑わされて発電所に近づき、高温の部分に触れて焼け死ぬ可能性がある。
集光光に引き寄せられる昆虫を餌として発電所に集まり、その際に発電所の高温部分に触れて死亡する恐れがある。発電所の建設により生息地が失われる。
米国で太陽光発電ブームが起き、多くの大規模な太陽光発電施設が建設された。
これらの発電施設内で長年にわたり、地面に散らばる鳥の死骸が発見されていた。
2016年の研究で、米国の実用規模の太陽光発電施設において年間14万羽近くの鳥が犠牲になっている可能性が示された。
しかし、太陽光発電施設と鳥の死亡との明確な関連性は分かっておらず、その原因は「謎」とされていた。
発電施設の建設により鳥の生息地が失われたことも、死亡の一因と考えられている。

地熱発電所では、冷却システムや蒸気タービンの運転に大量の水が必要とされます。

水資源の大量消費 水資源が限られている地域では、発電所の運営によって水不足が深刻化し、周辺の生態系や農業、地域社会に悪影響を及ぼす可能性があります。

地熱発電は、地下の高温の蒸気や熱水を利用して発電する方式です。発電プロセスには、蒸気タービンの駆動や冷却システムの運用など、多くの段階で水が使用されます。特に、冷却システムは大量の水を必要とするため、水資源への影響が懸念されています。
水資源が限られている地域に地熱発電所が建設された場合、発電所の運営によって水不足が深刻化するリスクがあります。発電に必要な水量が、地域の水資源の許容量を超えてしまうと、周辺の生態系や農業、地域社会に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

水不足の深刻化
地熱発電所の運転に伴う大量の水消費により、地域の水資源が徐々に枯渇していく可能性があります。特に、降水量が少なく、水資源の乏しい地域では、この影響が顕著に現れるでしょう。

水不足が深刻化すると、飲料水や農業用水の確保が困難になります。地下水位の低下により、井戸水の枯渇や地盤沈下なども引き起こされる恐れがあります。
また、地表水の減少は、河川の流量低下や湖沼の水位低下を招きます。これによって、水質の悪化や水温の上昇など、水環境に様々な影響が生じる可能性があります。

生態系への影響
河川や湖沼の水位低下は、水生生物の生息環境に直接的な影響を与えます。例えば、魚類の産卵場所が失われたり、水生植物の成長が阻害されたりする可能性があります。
また、水量の減少は、水質の悪化を引き起こします。水温の上昇や溶存酸素量の低下などにより、水生生物の生存が脅かされるでしょう。
加えて、水位低下によって河川の流れが変化すると、河床の構造が変化し、底生生物の生息環境が損なわれる可能性もあります。
このように、水資源の枯渇は、河川や湖沼の生態系に複合的な影響を及ぼし、生物多様性の低下を引き起こす恐れがあるのです。

 

地熱発電は、地下深くの高温の水蒸気や熱水を利用して発電する技術です。発電には生産井から高温の地熱流体を汲み上げる必要があり、その際に大量の水が消費されます。このプロセスでは、使用された水は冷却後に還元井を通じて地下に戻されますが、還元される水量が自然の補充量を上回ると、地域の水資源が枯渇する恐れがあります。
水資源への影響

地下水位の低下
地熱発電所が大量の地下水を汲み上げることで、地下水位が低下し、井戸水の枯渇や地盤沈下を引き起こす可能性があります。これにより、地域住民や農業への影響が懸念されます。

河川や湖沼への影響
地熱発電による地表水の減少は、河川流量や湖沼の水位低下を引き起こします。これにより、水質の悪化や水温の上昇など、水環境に様々な悪影響が生じる可能性があります。

飲料水と農業用水の確保
水不足が深刻化すると、飲料水や農業用水の確保が困難になります。特に農業依存度が高い地域では、作物への影響が大きくなるでしょう。

地熱発電所の運転による環境への影響は短期的なものだけではありません。長期的には以下のような問題も考えられます。
生態系への影響 地下水位の低下や河川流量の減少は、生態系にも悪影響を及ぼします。特に湿地帯や河川生態系は、水量変化に敏感であり、生物多様性の損失につながる可能性があります。
温泉資源への競合 地熱発電所は温泉資源と競合関係にあり、温泉地周辺で発生する問題として、温泉湧出量の減少や質の低下が挙げられます。これにより観光業にも悪影響を及ぼすことが懸念されます。

 

農業への影響
農業は、多くの水を必要とする産業です。地熱発電所の運営によって農業用水の確保が困難になると、農業生産に大きな打撃を与えることになります。
例えば、灌漑用水の不足により、作物の生育が阻害され、収穫量が減少する可能性があります。また、水質の悪化によって、作物の品質低下や病害の発生なども懸念されます。
農業生産の低下は、地域経済に深刻な影響を及ぼします。農家の収入減少や、関連産業の衰退など、経済的な損失が発生する恐れがあるのです。

地域社会への影響
水不足は、地域住民の生活にも直接的な影響を与えます。飲料水の確保が難しくなると、住民の健康が脅かされる可能性があります。
また、水不足によって衛生状態が悪化すると、感染症の流行などの健康被害が発生する恐れもあります。
さらに、水不足は、住民の日常生活にも支障をきたします。炊事や洗濯、風呂など、水を使う様々な活動が制限されることになるでしょう。
加えて、水不足による経済的な損失は、地域社会の発展を阻害します。農業や関連産業の衰退は、雇用の喪失や所得の減少につながり、地域経済に深刻な打撃を与える可能性があります。

以上のように、地熱発電所の運営が水資源に与える影響は、生態系、農業、地域社会など、様々な側面に及びます。これらの影響は、相互に関連しており、複合的な問題を引き起こす可能性があります。
水資源への影響を最小限に抑えるためには、地熱発電所の立地選定や設計の段階から、水資源の状況を十分に考慮することが重要です。また、発電所の運営に際しては、水の効率的な利用や再利用を図るなど、水資源の保全に努めることが求められます。
加えて、地域社会との対話を通じて、水資源の管理について合意形成を図ることも欠かせません。発電事業者は、地域の水需要を踏まえた上で、水資源の適切な配分を行う必要があるでしょう。
また、発電所の運営が水資源に与える影響を継続的にモニタリングし、問題が生じた場合には速やかに対策を講じることも重要です。

太陽熱発電所 地熱発電所 冷却水の排出による水質汚染

発電所で使用された冷却水は、高温で化学物質を含んでいる場合があります。この冷却水が適切に処理されずに自然水域に放出されると、水質汚染や水温上昇を引き起こし、水生生態系(aquatic ecosystem)、海洋生態系 (marine ecosystem)、淡水生態系 (freshwater ecosystem)に悪影響を及ぼす可能性があります。

発電所建設時の森林の皆伐で地下水が枯渇する可能性があります
太陽熱発電では、水を使用します。

蒸気タービンを回すため
太陽の熱エネルギーで水蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回転させることで発電します。

冷却のため大規模な太陽熱発電では、発電効率を上げるために冷却用の水が必要になります。

水不足の地域では、太陽熱を利用した海水淡水化施設と組み合わせる取り組みも行われています。

太陽熱発電では発電と冷却のために水を使用しますが、その量は太陽光発電に比べて少なく、立地条件によっては水の確保が課題になる可能性があります。

水生生態系は英語で “aquatic ecosystem” と呼ばれます。
水生生態系とは、水の中に存在する生態系のことです。水生生態系には、お互いに依存し合う様々な生物が生息しています。
水生生態系には主に2つのタイプがあります。
海洋生態系 (marine ecosystem)
淡水生態系 (freshwater ecosystem)
水生生態系は、生物多様性の宝庫でもあります。陸上の生物種の少なくとも80%が、水生生態系に依存していると推計されています。
しかし近年、水生生態系の劣化や生物多様性の損失が深刻化しています。水生生態系の保全と持続可能な利用が重要な課題となっています。

冷却水の排出と水質汚濁
太陽熱発電所では、集熱した熱エネルギーを利用して蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電します。この過程で使用される冷却水は、高温になり化学物質が混入している場合があります。
この高温の化学物質を含む冷却水が、適切な処理なく河川や海域に排出されると、問題が生じる可能性があります。
・水温上昇による水生生物への影響
・化学物質による水質汚濁
・富栄養化による赤潮や貧酸素水塊の発生
このため、冷却水の排出に当たっては、十分な冷却と化学物質の除去、排出先の水域環境への配慮が必要です。
環境配慮の重要性
発電所の建設や運用に際しては、環境への配慮が求められます。香川県の環境配慮指針でも、「大気汚染、水質汚濁等による生活環境の保全上の支障が生じないよう、十分な配慮を行う」ことが明記されています。
発電所から排出される冷却水による水質汚濁は、この指針に反するものです。

太陽熱発電プラントでは、冷却水の使用量が非常に多いです。
具体的には、太陽熱発電プラントでは冷却水(約90%)、タービン駆動用蒸気(約8%)、集光ミラーの洗浄(約2%)に水が消費されており、冷却水の使用量が平均的に非常に多いことが示されています。

この冷却水は高温になり、化学物質が混入している可能性があります。
そのため、適切な処理を行わずに自然水域に放出すると、水質汚濁や生態系への悪影響が懸念されます。
具体的な処理方法
太陽熱発電所における冷却水の具体的な処理方法については明確な記載がありませんでした。しかし、一般的な発電所における冷却水処理の考え方として、以下の点が挙げられています。
温度の低下による冷却
化学物質の除去・中和処理
排出先の水域環境への配慮が必要
また、冷却方式として水冷式と空冷式があり、空冷式は水を使用しないため冷却水の処理は不要ですが、熱交換効率が低下する欠点があります。

太陽熱発電プラントの冷却水使用量
トラフ式太陽熱発電プラントでは、蒸気の復水器に水冷式熱交換器を使用する場合、約3,000L/MWhの冷却水が必要となります。
タワー式太陽熱発電プラントでは、約2,000L/MWhの冷却水が必要とされています。
ディッシュ型太陽熱発電システムは、他のシステムと比較して小規模かつ発電効率が良く、さらに冷却水が不要という特徴があります。

 

太陽熱発電所 太陽熱集光器の設置による土地の減少

広大な土地に太陽熱集光器を設置することで、その土地が他の用途に使えなくなります。農地や森林などが発電所の建設によって失われると、食料生産や二酸化炭素吸収などの機能が低下し、環境に負荷がかかる可能性があります。

集光器の設置によって、農地や森林などが失われることで問題が生じる可能性があります
・食料生産の減少
・二酸化炭素吸収機能の低下
・生物多様性の減少
・景観の悪化
これらは環境への負荷につながるため、太陽熱発電所の建設計画を立てる際は、土地利用の観点から慎重に検討する必要があります。
一方で、太陽熱発電は再生可能エネルギーとして、地球温暖化防止に貢献できるクリーンなエネルギー源でもあります。そのため、発電所建設と環境保全のバランスを取ることが重要です。例えば、既存の荒廃地や低利用地を活用したり、発電所の一部に緑地を設けたりするなど、土地利用の最適化を図ることが求められます。

森林が失われると地下水も枯渇する可能性があります

既存の荒廃地や低利用地の活用
既存の荒廃地や低利用地を活用することで、新たな土地の開発を最小限に抑えることができます。

発電所の一部に緑地の設置
発電所の一部に緑地を設けることで、生物多様性の保全や景観の維持に配慮することが可能です。
農地の一時的な転用
農地を一時的に転用することで、太陽熱発電設備を設置しつつ、農地の有効活用と再生可能エネルギーの普及を両立させることができます。
規制の緩和と都市部の再開発地の活用
都市部では土地利用に関する様々な規制が存在しますが、これらの規制を緩和することで、太陽熱発電の設置場所を増やすことが期待されます。また、都市部の再開発地を活用することも一つの方法です。
土地のレンタルや購入サービスの活用
土地を所有していない場合や、所有している土地が太陽熱発電に適していない場合、土地レンタルや買い取りのサービスを利用することで、適した土地を確保することができます。
以上のように、既存の低利用地の活用や、発電所内の緑地設置、農地の一時転用、規制緩和などの取り組みにより、太陽熱発電所の建設による土地の減少を抑えることが可能です。

太陽熱発電所の建設による景観の変化

大規模な太陽熱発電所の建設は、自然景観を大きく変える可能性があります。大型の集光装置や高い塔などの施設が建設されることで、地域の景観が人工的なものに変わり、自然の美しさが損なわれる恐れがあります。

日本では、太陽熱発電所の商業運転は行われていません。
東京工業大学の研究チームが2010年に山梨県に実験設備を建設する計画を発表しましたが、2019年現在に至っても、日本で商業運転されている太陽熱発電所は皆無です。
一方、世界では太陽熱発電所の導入が進んでいます。例えば、アメリカ合衆国やオーストラリア、中華人民共和国などでは従来から注目されていました。近年では、スペイン、南アフリカ共和国、チリなどでも100 MW級の大規模な太陽熱発電所が稼動し始めています。また、産油国のアラブ首長国連邦やサウジアラビア、クウェートでも50 MW級の発電所が稼動を始めました。さらに、人口大国のインドでも100 MW級の発電所が稼動し始めています。
日本では、太陽光発電の導入が進んでおり、世界第3位の導入容量を誇っています。
しかし、太陽熱発電については、まだ実用化には至っていないのが現状です。
発電所の施設を自然の地形に合わせて配置したり、建物の色や素材を周囲の環境に調和させたりすることで、景観への影響を最小限に抑えることができます。また、発電所の周囲に緑地を設けたり、施設の一部を観光スポットとして活用したりするなど、地域の魅力を高める取り組みも考えられます。
太陽光発電所の反射光は「光害」
太陽光発電所の設置に伴う山林の伐採や土地の改変により、自然破壊や景観の悪化が起きている。例えば、熊本県阿蘇地域では、世界有数のカルデラが生み出す特徴的な眺望を覆うように大規模な太陽光発電所が続々と出現している。
茨城県筑波山麓の国定公園内でも、太陽光パネルの設置が風景・眺望を損なうとして、自然公園法に基づき開発が不許可となった事例がある。ただし、裁判所は県の判断を違法と判断し、開発を許可する義務があると判断した。
太陽光パネルの設置は、光を反射して景観を損ねる問題もある。奈良県平群町では、住民約1,000人が土砂災害の危険性と景観悪化を理由に太陽光発電の差し止めを求める訴訟を起こしている。
一方で、太陽光発電は再生可能エネルギーとしてCO2排出量が少なく、エコな発電方式であるというメリットもある。

太陽熱発電所 集光装置の反射光による影響

太陽熱発電所の集光装置は、太陽光を強く反射します。この反射光が周辺の住宅地や自然環境に届くと、眩しさや熱による不快感を引き起こす可能性があります。また、反射光が動植物の行動に影響を与える可能性もあります。

反射光対策
太陽光発電所・太陽熱発電所では、集光ミラーからの反射光が周辺の民家や道路に当たらないよう、ミラーの配置や角度を調整します。また、反射光を吸収するコーティングを施したミラーを使用することで、反射光を抑制しています。

遮光対策
集光ミラーの周囲には、遮光板を設置して反射光の拡散を防ぎます。遮光板は、ミラーの高さに合わせて適切な位置に設置し、反射光が漏れ出ないよう設計されています。

減光装置
集光ミラーの角度を調整する減光装置を設置し、必要以上に反射光が発生しないようにコントロールします。日没時や雲が出たときなど、発電が不要な場合は反射光を抑えるために減光装置を作動させます。

光害防止条例
一部の地域では、光害防止条例を制定し、太陽光発電所・太陽熱発電所からの反射光に関する規制を設けています。事業者は条例に基づいて、反射光の抑制対策を講じる必要があります。

太陽熱発電所の運営に伴う温室効果ガスの排出

太陽熱発電所の建設や運営には、大量のエネルギーが必要とされます。このエネルギーの多くは化石燃料に依存しているため、発電所の運営に伴って温室効果ガスが排出される可能性があります。温室効果ガスとは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素やメタンなどのガスのことを指します。

太陽熱発電所の建設や運営には確かに化石燃料を使用したエネルギーが必要ですが、発電所の運転中に排出される温室効果ガスは非常に少ないと考えられます。
太陽熱発電所の建設時に使用されるエネルギーの多くは、建設資材の製造や輸送、建設作業に伴うものです。これらのエネルギーの多くは化石燃料に依存していますが、発電所の運転期間を考えると建設時のエネルギー使用は無視できるほど小さくなります。
一方、太陽熱発電所の運転中は、燃料を燃焼させる必要がないため、ほとんど温室効果ガスを排出しません。一部の太陽熱発電所では、熱を蓄えるためにわずかな化石燃料を使用することがありますが、全体としての排出量は非常に少ないと言えます。
また、太陽熱発電所は再生可能エネルギーを利用するため、発電所の寿命が尽きた後の廃棄物処理においても、化石燃料発電所に比べて環境負荷が小さいと考えられます。

太陽熱発電効率の低さによる土地利用の非効率性

太陽熱発電は、他の再生可能エネルギーと比べて発電効率が低いとされています。つまり、同じ発電量を得るために、より広い土地が必要になります。土地利用の非効率性は、自然環境への影響を増大させる要因の一つと考えられます。

太陽熱発電のメリット
特別な燃料や道具を必要としないため、太陽光発電よりも低コストで設置可能
蓄熱により夜間発電が可能で、発電量の変動を抑えられる
発電効率が8%~35%と太陽光発電の20%程度よりも高い
熱源として太陽光を用いているだけなので、ボイラーを併設して火力発電との設備の共用が可能
一方、デメリットは以下の通りです。
日照量の多い地域が向いているため、日本には不向きとされている
湿気に強くない太陽熱発電システムは日本の気候に適していない
効率的な発電をするためには、できる限り日照時間の長い土地が必要
大型の設備が必要なため、設置コストが高額になる可能性がある
集光技術の向上
反射鏡やレンズを用いて太陽光を集光する技術を向上させることで、より高温の熱を得られるようになります。タワー型の太陽熱発電では、周囲に設置した平面鏡で光を集めることで高効率化を図っています。
蓄熱技術の改善
発電に使う熱を効率的に蓄えることで、夜間や曇天時でも安定した発電が可能になります。化学反応を用いた蓄熱方法は蓄熱密度が高く、有望な技術の一つです。
発電サイクルの最適化
蒸気タービンの効率を上げたり、熱交換器の性能を向上させたりすることで、発電効率全体を高められます。また、発電サイクルの温度差を大きくすることも効率向上につながります。
大規模化による規模の経済
発電所の規模を大きくすることで、単位面積当たりの発電量を増やせます。広大な土地を使ったモハーベ砂漠のタワー型発電所は、数十億ドルの投資を行っています。
これらの技術開発が進めば、太陽熱発電の発電効率は現在の20%~40%
からさらに向上する可能性があります。ただし、日本では日射量が少なく、設置場所の確保が難しいため、太陽光発電の導入が先行しています。

太陽熱発電所の廃棄物処理による環境負荷

太陽熱発電所では、集光装置や熱交換器などの設備が定期的に交換される必要があります。これらの廃棄物の処理が適切に行われない場合、環境汚染や生態系への悪影響を引き起こす可能性があります。

適切な廃棄物管理
集光装置や熱交換器などの設備を定期的に点検し、必要に応じて修理や交換を行う。
廃棄物を種類ごとに分別し、適切な処理方法を選択する。例えば、金属類は再利用や再生処理を行う。
廃棄物の保管場所を密閉構造とし、漏洩や飛散を防ぐ。
環境に配慮した処理方法の選択
廃棄物の種類に応じて、焼却、埋立、再生処理などの適切な処理方法を選択する。
焼却の際は、ダイオキシン類などの有害物質の発生を抑制するため、適切な燃焼条件を設定する。
埋立処分する場合は、浸出水による地下水汚染を防ぐため、遮水工や浸出水処理設備を設置する。
環境教育の実施
従業員に対し、廃棄物の適切な分別や処理方法に関する教育を実施し、環境意識の向上を図る。
地域住民に対し、発電所の環境への取り組みを積極的に情報発信し、理解を深める。
以上のような対策を講じることで、太陽熱発電所の廃棄物処理による環境負荷を最小限に抑えることができます。

太陽熱発電所 蓄熱システムに使用される材料の環境影響

太陽熱発電所では、夜間や曇天時にも発電を行うために、蓄熱システムが使用される場合があります。蓄熱材料の製造や廃棄の過程で、環境に負荷がかかる可能性があります。例えば、蓄熱材料に使用される溶融塩は、製造や輸送の際に環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。

溶融塩は一般的な蓄熱材料ですが、製造や輸送の際に環境に悪影響を及ぼす可能性があります。溶融塩の製造には高温が必要で、エネルギー消費が大きくなります。また、溶融塩の輸送時に漏れが起こると、土壌や水質を汚染する恐れがあります。
一方、蓄熱システムを導入することで、太陽熱発電の安定性と効率が向上します。蓄熱により、日中に集めた熱エネルギーを夜間に利用できるようになります。これにより、発電量の変動を抑え、系統への負荷を軽減できます。
したがって、蓄熱システムの環境負荷を最小限に抑えつつ、その利点を最大限に活かすためには、以下の取り組みが重要だと考えられます。
蓄熱材料の製造プロセスの省エネ化と環境負荷の低減
蓄熱材料の輸送時の漏洩防止対策の強化
蓄熱材料のリサイクル技術の開発
蓄熱システムの高効率化による発電量の最大化
これらの対策を講じることで、太陽熱発電の安定性と環境性能を両立させることができるでしょう。
融解塩
融解塩は太陽熱発電所の蓄熱システムで一般的に使用される材料の1つです。融解塩は高温で熱を蓄えることができますが、一部の融解塩は環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
オイル
太陽熱発電所では熱媒体としてオイルが使用されることもあります。オイルが漏れた場合、土壌や地下水を汚染する可能性があります。
化学反応を利用した蓄熱材料
化学反応を利用した蓄熱方法も研究されています。化学反応を用いた蓄熱は高い蓄熱密度が得られる利点がありますが、反応に使用される物質によっては環境への悪影響が懸念されます。

溶融塩を反応媒体とする工業プロセスにおいて、腐食や反応の暴走などにより溶融塩が漏洩し、環境汚染を引き起こした事例があります。例えば、アクロレイン製造プラントの反応器の腐食により熱媒と原料が接触し異常反応による漏洩、火災が発生した事例
や、亀裂による熱媒体(硝酸塩)の漏洩のための無水フタル酸製造の化成器の爆発事例
などがあります。
また、溶融塩を用いた塩素化反応プロセスにおいて、反応性の高さから反応の暴走や局所的な過熱により、溶融塩の飛散や火災が発生した事例もあります。
これらの事例から、溶融塩を用いる工業プロセスでは、腐食や反応の制御不能による漏洩や飛散を防ぐため、材質の選定や反応条件の適切な管理が重要であることがわかります。

太陽熱発電所 送電線の建設による自然環境の分断

太陽熱発電所で生産された電力を消費地まで送るために、送電線の建設が必要です。送電線の建設は、森林の伐採や自然環境の分断を引き起こす可能性があります。これにより、動物の移動ルートが遮断されたり、生息地が分断されたりして、生態系に悪影響を及ぼす恐れがあります。

送電線の建設のために、送電線の通る経路の森林が伐採される可能性がある
送電線の鉄塔や送電線自体が、動物の移動ルートを遮断したり、生息地を分断したりする可能性がある
送電線の建設工事に伴う騒音や振動、土地の改変などが、動物の生息に悪影響を及ぼす可能性がある
これらの環境への悪影響を最小限に抑えるためには、送電線の経路選定の際に、自然環境への影響を十分に考慮し、できる限り環境への負荷が小さくなるルートを選ぶことが重要です。また、送電線の建設工事においても、環境への配慮を徹底し、動物の生息地の分断を防ぐための対策を講じることが求められます。
送電線ルートの選定
送電線の経路を選定する際は、自然環境への影響を最小限に抑えるルートを選ぶ
湿地や湿原などの貴重な生態系が周辺に存在する場合は、それらを避けるルートを選ぶ
環境配慮型の工事
送電線の建設工事においては、環境への配慮を徹底し、動物の生息地の分断を防ぐための対策を講じる
工事中の騒音や振動、土地の改変などが動物の生息に悪影響を及ぼさないよう、適切な対策を実施する
生態系への配慮
送電線の建設に伴い、動物の移動ルートが遮断されたり生息地が分断されたりする場合は、動物の移動を確保するための対策を講じる
例えば、送電線の鉄塔の間隔を広くとったり、送電線の高さを高くしたりすることで、動物の移動を確保する

太陽熱発電所の建設による文化的・歴史的遺産の破壊

太陽熱発電所の建設予定地に文化的・歴史的遺産が存在する場合、それらが破壊される可能性があります。地域の文化や歴史を反映する遺跡や建造物が失われることで、地域の文化的多様性が損なわれる恐れがあります。

発電所建設予定地の文化遺産を保護するために、以下のような対策が考えられます。
事前に文化遺産の調査を行い、影響を最小限に抑える場所を選定する
文化遺産の移転や保護措置を講じる
発電所の設計を変更し、文化遺産を損なわないようにする
地域住民や文化財保護団体と協力し、合意形成を図る
第二次世界大戦中、ナチスドイツが核兵器開発のために重水を必要としていたため、ノルウェーのノルスク・ハイドロ重水工場が連合国によって破壊された。この工場は1935年に建設されたヴェモルクの水力発電所の一部であり、歴史的な建造物でした。
1981年、イスラエル空軍がイラクのタムーズ原子力発電所を空爆し破壊しました。この原発は1982年の稼働を目指して建設中だったものの、イスラエルは核兵器開発を警戒し先制攻撃を決行しました。
これらの事例では、発電所そのものや関連施設が軍事的な理由から破壊の対象となりました。文化遺産の保護よりも戦略的な判断が優先されたのです。
一方、原発事故による環境破壊の事例もあります。1986年のチェルノブイリ原発事故では、大量の放射性物質が放出され、広範囲の環境が汚染されました。2011年の東京電力福島第一原発事故でも同様の事態が発生し、多くの地域が長期にわたって立ち入り禁止区域となりました。

太陽熱発電所の事故や災害による環境汚染

太陽熱発電所では、高温の熱媒体や蒸気を扱うため、事故や災害が発生する可能性があります。事故による火災や爆発、有害物質の漏出などが起こると、周辺の環境や生態系に深刻な影響を与える恐れがあります。

火災事故 太陽熱発電所
太陽熱発電所では、集光ミラーの不具合や熱媒体の漏れなどが原因で火災が発生することがある。2016年にはカリフォルニア州の「世界最大の太陽熱発電所」でも火災が発生し、当初の発電目標を達成できなかった。

爆発事故 太陽光発電施設で火災爆発
2024年3月、鹿児島県伊佐市の太陽光発電施設で火災が発生し、消防隊員4人が負傷する爆発事故があった。建物内の蓄電設備が原因と見られ、警察と消防が現場検証を行い原因を調べている。
自然災害による被害
集中豪雨などの自然災害により、発電所構内で土砂崩れが発生し、太陽光パネルやパワーコンディショナーが崩落する被害も報告されている。

太陽熱発電所の建設による地域社会への影響 生活の質の低下

大規模な太陽熱発電所の建設は、地域社会に大きな変化をもたらす可能性があります。建設工事に伴う騒音や交通量の増加、景観の変化などが、地域住民の生活の質に影響を与える恐れがあります。また、発電所の建設によって地域の伝統的な産業や生活様式が脅かされる可能性もあります。

まず、発電所の建設により、一時的に騒音や振動が発生し、近隣住民の生活に支障をきたす可能性があります。また、発電所の稼働後も、景観の変化により地域の魅力が低下したり、観光への悪影響が懸念されます。
さらに、発電所建設に伴う土地の改変は、動植物への影響を及ぼす可能性があり、環境保護の観点から影響度調査が必要とされています。
一方で、発電所からの収益を地域に還元することで、地域経済の活性化や雇用創出に貢献できる可能性もあります。また、再生可能エネルギーの導入を通じて、地域の脱炭素化を推進し、持続可能な社会づくりに寄与することも期待されます。

太陽熱発電所、太陽光発電所、風力発電所の建設には、広大な土地が必要とされます。

大規模な土地の改変は、その地域の自然環境を大きく変化させ、生態系に影響を与える可能性があります。特に、希少種や固有種の生息地が失われることで、生物多様性が損なわれる恐れがあります。

例えば、米国カリフォルニア州の「イバンパ・ソーラー」という大規模太陽熱発電所では、約1,400ヘクタールもの土地が発電所の建設に使用されました。この土地は、絶滅危惧種であるカリフォルニアカタハリヘビの生息地でもあり、発電所の建設によって生息地が分断されたと指摘されています。

カリフォルニア州の「イバンパ太陽発電所」は、世界最大規模の太陽熱発電所です。この発電所は、モハーベ砂漠に位置し、政府が所有する約1,400ヘクタールの敷地に建設されました。
発電所には、高さ約140メートルのタワーが3基あり、その周囲に35万枚もの反射鏡が放射状に設置されています。反射鏡で集めた太陽光は、タワーの上部にある受光器に集まり、ボイラーで蒸気を発生させます。高温の蒸気はタービンを回して発電します。
この発電所の総発電能力は392メガワットで、年間の発電量は約14万世帯分に相当します。総工費は22億ドル(約2,200億円)で、NRG Energy、BrightSource Energy、Googleなどが出資しています。
カリフォルニア州は、新築住宅への太陽光発電の義務化など、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めています。イバンパ太陽発電所は、同州の再エネ政策の一環として建設された、世界最大規模の太陽熱発電所と言えます。

風力発電 バードストライク(鳥類の衝突死)の問題

風力発電では、風車のブレードに鳥類が衝突して死亡する「バードストライク」が問題視されています。特に、渡り鳥の飛行ルート上に風力発電所が建設された場合、多数の鳥類が犠牲になる可能性があります。

アメリカ野鳥保護連盟の推定によると、米国内の風力発電施設では年間約14万羽の鳥類が風車に衝突して死亡しているとされます。また、希少種のワシやタカ、コウモリなども風車に衝突して死亡するケースが報告されており、生態系への影響が懸念されています。

ノルウェーの科学者らが「風車のブレードを視認性の高い黒色に塗ることで、事故で命を落とす鳥の数を約70%削減することに成功した」という研究結果を発表しており、今後は鳥の衝突事故を軽減する対策が進められていくことが期待されます。

騒音や低周波音による影響 風力発電所の運転に伴って発生する騒音や低周波音

風力発電所の運転に伴って発生する騒音や低周波音が、周辺の住民や動物に悪影響を及ぼす可能性があります。風車の回転によって生じる騒音は、人々の生活の質を低下させたり、動物の行動に変化を与えたりする恐れがあります。

例えば、ドイツでは風力発電所の近くに住む住民から、頭痛やめまい、不眠といった健康被害の訴えが報告されています。また、風車の騒音が鳥類や他の動物の繁殖行動に影響を与えることも指摘されています。

景観の変化と地域社会への影響 景観条例の制定や景観ガイドラインの策定

大規模な太陽熱発電所や風力発電所の建設は、地域の景観を大きく変化させます。自然の景観が大型の設備に置き換えられることで、地域の魅力が損なわれたり、観光業に悪影響が出たりする可能性があります。

また、発電所の建設に伴う地域社会への影響も懸念されています。建設工事に伴う騒音や交通量の増加、土地利用の制限などが、地域住民の生活に悪影響を及ぼす恐れがあります。発電所の建設によって、地域の伝統的な産業や文化が脅かされることもあります。

太陽光発電所の景観対策
太陽光発電設備の設置急増に伴う景観面の課題に対応するため、全国の自治体でアンケート調査を実施
環境影響評価条例や景観条例に基づき、事業者に適切な環境配慮を求める制度を設けている
10kW以上の太陽光発電設備の設置に際し、景観への配慮を義務付けている
景観ガイドラインを策定し、事業者に景観への配慮を求めている

風力発電所の景観対策
風力発電施設の建設による景観の変化を予測する際、NEDOマニュアルを参照している
景観ガイドラインを制定し、新設、増設、移転、大規模改修時の景観への配慮を求めている
以上のように、地方自治体は景観条例の制定や景観ガイドラインの策定などにより、発電所建設時の景観への配慮を事業者に求めています。

太陽光発電所やウィンドファームは、メガワット単位の出力を得るために広大な土地を必要とします。これにより、自然の景観が大型の人工物に置き換えられることになります。
景観は複雑な概念で、アイデンティティや歴史など、見えない意味合いも含まれます。客観的な基準を定めるのは難しいのが現状です。

地方創生の一環として、各自治体は持続可能な開発目標(SDGs)に基づいたまちづくりを進めています。例えば石川県白山市では、白山ユネスコパークの理念に基づき、自然環境を重視しつつ地域経済の発展を目指しています。
また、神奈川県横浜市では、港湾都市・観光都市としての魅力を活かしながら、環境・経済・社会の3つの側面で新たな価値創出を目指す先導的な取り組みを行っています。
さらに、内閣府は地方公共団体によるSDGsの達成に向けた優れた取り組みを「SDGs未来都市」として選定しており、2022年には宮城県大崎市や新潟県佐渡市など20都市が選定されました。
以上のように、地方自治体は再生可能エネルギーの導入拡大と地域の景観保全のバランスを取るべく、SDGsの理念に基づいた持続可能なまちづくりに取り組んでいます。

発電設備の製造・廃棄に伴う環境負荷 太陽光パネルや風車の製造 希少金属 採掘で環境破壊

太陽光パネルや風車の製造には、大量の資源とエネルギーが必要とされます。希少金属の採掘や製造工程での化学物質の使用など、環境に負荷をかける要因が存在します。また、発電設備の耐用年数が過ぎた後の廃棄処理も、環境に影響を与える可能性があります。

例えば、太陽光パネルの製造には、シリコンの精製に大量の化学物質とエネルギーが使用されます。また、パネルの主要材料であるガリウムやインジウムは希少金属であり、その採掘による環境破壊が問題視されています。風車のブレードに使用される複合材料も、リサイクルが難しく、廃棄物処理の課題となっています。

太陽光パネルの主要材料であるシリコンの精製には、大量の化学物質とエネルギーが必要とされます。

シリコンを高純度に精製するには、塩化ケイ素を還元する工程が必要で、この過程で塩素ガスや四塩化ケイ素などの有害物質が発生します。また、高温の熱処理が必要なため、多くのエネルギーが消費されます。

さらに、太陽光パネルには、ガリウムやインジウムといった希少金属が使用されています。これらの金属は埋蔵量が限られており、採掘に伴う環境破壊が問題視されています。例えば、中国の江西省では、インジウムの採掘によって土壌や水源が汚染され、農作物への被害も報告されています。
太陽光パネルのリサイクルも課題の一つです。パネルには、ガラスやプラスチック、金属などが使用されており、分離・回収が難しいのが現状です。使用済みのパネルが適切に処理されない場合、有害物質が環境中に放出される恐れがあります。

太陽熱発電では、大規模な集光装置や熱交換器、蒸気タービンなどの設備が必要で資源の浪費?

太陽熱発電では、大規模な集光装置や熱交換器、蒸気タービンなどの設備が必要となります。これらの設備の製造には、鉄やコンクリート、銅、アルミニウムなどの資源が使用されます。
これらの資源の採掘や精製の過程では、確かにエネルギーが消費され、環境負荷が発生します。例えば、鉄やアルミニウムの製造には、大量の電力が必要です。また、銅の採掘では、森林伐採や水質汚濁などの環境問題が指摘されています。
しかし、太陽熱発電設備の製造に必要な資源量は、化石燃料を使用する従来の発電設備と比べて、それほど多くはありません。また、太陽熱発電設備は、一度設置すれば長期間使用できるため、資源の浪費にはつながりにくいと考えられます。
むしろ、太陽熱発電は、化石燃料の使用を減らすことで、資源の節約や環境負荷の低減に寄与すると言えるでしょう。化石燃料の採掘や輸送、燃焼などの過程で消費されるエネルギーや、排出される温室効果ガスを考慮すれば、太陽熱発電の環境面でのメリットは大きいと言えます。
また、太陽熱発電で使用される高温の熱媒体(溶融塩など)や蒸気については、確かに漏出事故が起きると環境汚染につながる恐れがあります。しかし、これらの危険性は、適切な設計や管理によって十分に防ぐことができます。
例えば、熱媒体の漏出を防ぐために、二重構造のタンクや配管を使用したり、漏出検知システムを設置したりするなどの対策が取られています。また、使用済みの熱媒体については、適切な処理施設で無害化処理を行うことで、環境への影響を最小限に抑えることができます。
さらに、太陽熱発電は、発電時に温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギー源であるという大きなメリットがあります。化石燃料による発電と比べて、大幅にCO2排出量を削減できるため、地球温暖化対策に大きく貢献できると期待されています。
加えて、太陽熱発電は、エネルギー自給率の向上にも寄与します。化石燃料の多くを輸入に頼る国々にとって、国産のエネルギー源を確保することは、エネルギー安全保障の観点から重要な意味を持ちます。
ただし、太陽熱発電の普及拡大に際しては、立地選定や環境アセスメントを適切に行うことが重要です。例えば、大規模な集光装置の設置が、景観や生態系に影響を与える可能性があります。また、熱媒体の輸送時の事故リスクなども考慮する必要があるでしょう。
これらの課題については、地域社会との対話を通じて、合意形成を図ることが欠かせません。発電事業者は、環境への影響を最小限に抑える努力を怠らず、地域の理解と信頼を得ることが求められます。
また、太陽熱発電の技術開発を進め、より効率的で安全性の高いシステムを追求することも重要です。例えば、熱媒体の低毒性化や、漏出防止技術の高度化など、環境負荷の低減に直結する技術革新が期待されています。
太陽熱発電は、化石燃料に代わるクリーンなエネルギー源として大きな可能性を秘めています。しかし、その普及拡大には、環境への影響を最小限に抑える努力が欠かせません。

風力発電では、風車のブレードにリサイクルしにくい複合材料(ガラス繊維強化プラスチックなど)が使用されています。

複合材料は、強度と軽量性に優れていますが、リサイクルが難しいという問題があります。使用済みのブレードは、埋め立て処分されることが多く、大量の廃棄物が発生します。

また、風車の基礎部分には、大量のコンクリートが使用されます。コンクリートの製造には、セメントが必要で、その製造過程で多くの二酸化炭素が排出されます。風車の解体時には、基礎部分のコンクリートの処理も課題となります。

 

風力発電に使用される風車のブレードには、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの複合材料が用いられています。GFRPは、軽量で強度に優れているため、大型の風車ブレードの材料として適しています。
しかし、GFRPは、リサイクルが非常に難しいという問題を抱えています。GFRPは、ガラス繊維とプラスチックが複雑に絡み合った構造をしているため、両者を分離することが困難なのです。また、プラスチックの種類によっては、リサイクル時の熱劣化などの問題もあります。
そのため、使用済みのGFRP製のブレードは、リサイクルされずに埋め立て処分されることがほとんどです。風力発電の普及に伴い、大量のGFRP廃棄物が発生することが予想され、最終処分場の逼迫や環境汚染などの問題が懸念されています。
GFRP廃棄物の問題に対しては、様々な対策が検討されています。例えば、使用済みのブレードを粉砕して、セメントの原料や路盤材などに再利用する取り組みが進められています。また、熱分解によってガラス繊維とプラスチックを分離し、それぞれをリサイクルする技術の開発も行われています。
しかし、これらの対策には、コストや技術的な課題が伴います。リサイクルに適した材料設計や、リサイクル技術の実用化など、更なる技術革新が求められるでしょう。
また、風車の基礎部分に使用されるコンクリートも、環境負荷の観点から課題があります。コンクリートの主要材料であるセメントの製造過程では、大量の二酸化炭素(CO2)が排出されます。セメント産業は、世界のCO2排出量の約8%を占めると言われており、気候変動対策の観点から重要な課題となっています。
風車の基礎部分は、巨大な構造物であるため、大量のコンクリートを必要とします。例えば、高さ100メートルクラスの風車では、1基あたり数百トンのコンクリートが使用されます。風力発電の普及に伴い、コンクリートの需要増加とCO2排出量の増大が懸念されているのです。
また、風車の解体時には、基礎部分のコンクリートをどのように処理するかも問題となります。コンクリートは、リサイクルが可能ですが、解体や運搬、再処理に多くのエネルギーを必要とします。
これらの問題に対しては、セメント製造過程でのCO2排出量の削減や、コンクリートの材料設計の工夫などが求められます。例えば、高炉スラグやフライアッシュなどの産業副産物を利用することで、セメントの使用量を減らすことができます。また、CO2を吸収するコンクリートの開発なども進められています。
風車の基礎部分については、リサイクルを前提とした設計や、解体しやすい構造の採用などが考えられます。また、基礎部分の簡素化や、複数の風車で基礎を共有するなどの工夫により、コンクリートの使用量を減らすことも可能でしょう。
風力発電は、化石燃料に代わるクリーンなエネルギー源として期待されていますが、資源利用や廃棄物の問題など、環境負荷の観点から課題も指摘されています。
持続可能な風力発電の実現のためには、これらの課題に真摯に向き合い、解決に向けた努力を重ねることが不可欠です。材料のリサイクル性の向上や、製造過程での環境負荷の低減など、技術革新を進めることが求められるでしょう。
また、風力発電の環境影響を総合的に評価し、他の電源との比較考量を行うことも重要です。CO2排出量の削減効果と、資源利用や廃棄物処理の影響を、トータルで捉える視点が必要です。

地熱発電では、地下の高温の蒸気や熱水を利用して発電を行います。

発電に伴って、地下から汲み上げられた熱水には、重金属や硫化水素などの有害物質が含まれている場合があります。これらの物質が適切に処理されずに環境中に放出されると、水質汚濁や大気汚染につながる恐れがあります。

また、地熱発電では、地下の熱資源を長期的に利用することになるため、熱資源の枯渇が懸念されます。地下の熱水の汲み上げによって、地表に沈下が起きるなどの問題も指摘されています。

 

地熱発電は、地下深くから高温の蒸気や熱水を取り出し、その熱エネルギーを利用して発電を行う方式です。発電の過程で、地下から汲み上げられた熱水に含まれる物質が、環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に懸念されるのは、重金属と硫化水素です。地下の高温環境下では、岩石中の重金属類が熱水に溶け出しやすくなります。よく見られるのは、ヒ素、水銀、カドミウム、鉛などです。これらの重金属は、人の健康や生態系に有害な影響を与えることが知られています。
例えば、ヒ素は発がん性があり、皮膚や肺、膀胱などにがんを引き起こす可能性があります。水銀は、神経系に損傷を与え、特に胎児の脳の発達に悪影響を及ぼします。カドミウムは、腎臓障害や骨軟化症の原因となります。
また、硫化水素は、地下の高温環境下で硫酸塩が還元されることで生成されます。硫化水素は、悪臭があり、低濃度でも目や呼吸器に刺激を与えます。高濃度になると、呼吸困難や意識障害、最悪の場合は死に至ることもあります。
これらの有害物質が、熱水とともに地上に汲み上げられ、適切に処理されずに環境中に放出されると、深刻な汚染問題を引き起こします。土壌や地下水、河川などが汚染され、飲料水の安全性が脅かされる恐れがあります。
また、有害物質を含む蒸気が大気中に放出されると、大気汚染の原因となります。特に、硫化水素は、大気中で酸化されて二酸化硫黄となり、酸性雨の原因物質の一つとなります。
地熱発電所では、汲み上げた熱水を冷却し、蒸気と熱水に分離します。有害物質を含む熱水は、適切な処理施設で浄化する必要があります。重金属類は、凝集沈殿法や吸着法などで除去します。硫化水素は、酸化処理や活性炭吸着などで除去します。
しかし、これらの処理には、高度な技術と多額のコストが必要となります。発電コストの上昇につながるため、適切な処理が行われない事例も報告されています。
さらに、処理の過程で発生する汚泥や廃棄物の処分も課題となります。有害物質を濃縮した汚泥が、不適切に処分された場合、二次的な環境汚染を引き起こす恐れがあります。
もう一つの大きな問題は、地熱資源の枯渇です。地熱発電は、地下の熱水を汲み上げることで成り立っています。しかし、熱水の汲み上げ速度が地下の熱水の再生速度を上回ると、徐々に熱水の温度が低下し、発電効率が低下します。
実際に、長期間の運転で地熱資源が枯渇し、発電所が閉鎖に追い込まれた事例もあります。地熱資源は、化石燃料と異なり、再生可能な資源ですが、その再生速度には限界があるのです。
地熱資源の枯渇は、発電所の運営だけでなく、周辺環境にも影響を及ぼします。地下の熱水が減少すると、温泉の湧出量が減ったり、泉質が変化したりすることがあります。これは、地域の観光資源である温泉に打撃を与えるでしょう。
また、地下の熱水の減少は、地盤沈下を引き起こす可能性もあります。地下の水が減ることで、地層が収縮し、地表が沈下するのです。地盤沈下は、建物の傾斜や断水、道路の陥没など、様々な問題を引き起こします。
地熱発電による環境影響と資源枯渇の問題は、発電所の設計や運営方法に大きく依存します。環境汚染を防ぐためには、汲み上げた熱水の適切な処理が不可欠です。また、資源の枯渇を防ぐためには、熱水の汲み上げ量を適切にコントロールする必要があります。
発電所の設計段階から、環境アセスメントを徹底し、適切な処理施設や監視システムを整備することが求められます。また、周辺の温泉や地下水への影響をモニタリングし、異常が見られた場合は速やかに対策を講じる必要があります。
地域社会との対話も欠かせません。発電所の運営が地域に与える影響について、情報を公開し、住民の理解を得ることが重要です。温泉事業者など、地域の関係者とも協力し、持続可能な資源利用の方策を探ることが求められるでしょう。
技術面でも、より効率的で環境負荷の少ない発電方式の開発が期待されます。例えば、熱水を地下に戻す還元井の技術や、未利用の低温熱水を活用するバイナリー発電などが注目されています。

バイナリー発電は、80~150℃の中高温熱水や蒸気を熱源として、低沸点の媒体を加熱し蒸発させてタービンを回す発電方式です。媒体にはペンタンなどが使用されます。この方式は、従来の地熱発電では利用されなかった低温の熱水を効率的に利用できるため、地熱エネルギーの利用範囲を広げることができます。また、IoTやAI技術を活用することで、発電所の運転効率を向上させる取り組みも行われています

水質汚染・土壌汚染 太陽熱発電所の集光装置のメンテナンスに使用される化学物質の影響

太陽熱発電所の集光装置は、定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスには、洗浄剤や防錆剤などの化学物質が使用される場合があります。これらの化学物質が環境中に放出されると、水質汚染や土壌汚染を引き起こし、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。

洗浄剤 パネルの汚れを落とすために使用される 環境配慮型が発売されることも
防錆剤 金属部品の腐食を防ぐために使用される
具体的な洗浄剤や防錆剤の種類は、メーカーや施工業者によって異なります。
メンテナンスの際は、パネルの割れや汚れ、ボルトの緩み、ケーブルの断線などを目視で確認し、通電状態や絶縁抵抗値などを測定機器で計測します。
発電効率を維持するため、定期的な洗浄と草刈りも重要です。
メンテナンスを怠ると、発電効率の低下や故障、火災事故のリスクがあります。

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