- 断捨離による文化財の喪失 法律は弁護士など、文化財に関しては学芸員、司書など、専門家に相談してください
- 奈良県立大学の植物標本の誤廃棄では、標本台帳作成済みにもかかわらず廃棄されてしまいました
- 奈良県の大和郡山市にある県立民俗博物館が収蔵品の廃棄する可能性?
- 重要文書の誤廃棄に関する法的責任
- 公文書管理法では、国立公文書館等に移管された特定歴史公文書等について、原則として永久保存を義務付けています。
- 寄贈された所蔵品・収蔵品の廃棄に関する法的責任
- 寄贈品の管理と廃棄プロセス
- 寄贈品の廃棄のプロセスと注意点
- 「誤って捨ててしまった」信用を無くすレピュテーションリスク
- 故 岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書の提出について 2024年7月19日 全文
- 故 岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書 全文
- 植物標本「岩田コレクション」の収集者は故・岩田重夫氏です。
- 奈良県立大学における植物標本の誤廃棄事件
- 東京地方裁判所における裁判記録の廃棄問題
- 歴史的資料の喪失 気象庁の「カンテラ日誌」の廃棄 富士山測候所
- 誤廃棄の事例について、いくつかの具体的な事例とその背景を紹介します。
- 学術資料の適切な管理は、研究の信頼性と再現性を確保する上で極めて重要
- 植物標本の作成と保管の重要性
- 鉱物標本の作成と保管の重要性
- 埋蔵文化財の出土品や文献史料を廃棄処分する場合は?
- 収蔵スペースの不足や資料の劣化が問題視され、多くの博物館が資料の選別と廃棄を検討しています。
- データの適切な保存と管理は、研究や業務の継続性と信頼性を確保する上で極めて重要
- 不法行為責任の基本概念
- 博物館や美術館の収蔵スペースの不足
- 文化財の誤廃棄の主な原因とその解決策
- 「所有者がわからないため学内で引き取りを呼びかけたが誰も応じなかったため廃棄」←捨てていい理由になっていない
- 全国の博物館における収蔵スペース不足は、深刻な問題として広がっています。
- 自治体は、なぜ野球場の命名権を売るのか?
- 船橋市西図書館蔵書破棄事件は、2001年に発生した日本の図書館における重要な事例であり、図書館の自由や表現の自由に関する議論を引き起こしました。
- 文化財保護審議会は、日本の文化財の保護と活用に関する重要事項を調査・審議するために設置された機関です。
- 今後は、団塊の世代のコレクションが寄贈されることが急増すると予測します
断捨離による文化財の喪失 法律は弁護士など、文化財に関しては学芸員、司書など、専門家に相談してください
価値がわからないから捨てるという、身勝手な断捨離による文化財の喪失は取り返しがつきません
無断で収蔵品を廃棄処分することは、法律的にも倫理的にも問題があります。特に、他人の所有物を無断で処分することは原則として禁止されています。
二度と手に入らない歴史資料、史料は貴重であり、
たとえ今価値がなくても、年々価値は上がり続けます
植物標本は植物標本館(標本館)に収蔵してもらいましょう 博物館・植物園
標本ラベルと、リストをつくってください。寄贈を受け入れられる可能性が大幅に上がります
ちなみにですが日本人に押し葉標本を伝えたのはシーボルトです 作成方法も伝えられました
シーボルトはドイツ人医師・博物学者です
法的背景 所有権の放棄
所有者が明示的に所有権を放棄した場合、その物は無主物となり、他の人が自由に取得できるようになります。しかし、所有権が放棄されたかどうかは、具体的な状況に依存し、黙示の放棄と判断されるケースは限定的です。
無断処分のリスク
他人の物を勝手に処分した場合、民事上の不法行為に基づく損害賠償請求や、刑事上の器物損壊罪に問われる可能性があります。したがって、所有者の同意なく処分することは避けるべきです。
残置物の処理
賃借人が退去した後に残された物については、賃貸人が処分する前に、所有者に連絡を取り、引き取りを求めることが推奨されます。所有権放棄の合意書を交わしておくことも有効です。
具体的なケース
最近、北海道江別市で市民が約40年前に寄贈した郷土資料約600点が無断で処分された事例があり、これに対して市民団体が抗議しました。 また、奈良県の大和郡山市にある県立民俗博物館でも、収蔵品の廃棄に関する知事の発言が波紋を呼んでいます。
このような事例は、文化財や公共の財産に対する無断処分の問題を浮き彫りにしています。博物館等が収蔵品を廃棄する際は、所有者への連絡や、専門家による審査など、適切な手続きが求められます。
無断で収蔵品を廃棄処分することは、法律的にも倫理的にも問題があり、所有者の同意を得ずに他人の物を処分することは許されません。博物館等は、収蔵品の適切な管理と保存に努める必要があります。
昭和のころは発掘調査でも報告書や目録、資料台帳の作成を怠ってきたため、現在、学芸員が苦労をしています
たらればですが
廃棄されてしまった岩田重夫氏の植物標本は標本ラベルと標本台帳が作成されていたため
県内にこだわらなければ県外や海外ですぐに収蔵・保管されていた可能性が高いです
「奈良県立自然博物館」が設立されるまで海外展示の方が良かったかもしれません
県に寄贈し、県知事に覚書(念書)まで書いてもらったのに県立大学が産業廃棄物扱いで廃棄処分
寄贈先は奈良県であり、
奈良県は植物学部がない奈良県立大学に保管管理委託をしたのがおかしい?
寄贈を受け入れてから20年以上経っても県立自然博物館は設立されていない 思わせぶり
NHK朝ドラマ『らんまん』(植物標本を守り抜くシーンがあります)放送後に誤廃棄
ドラマを見ていたら意識が違った?
他大学に問い合わせたり寄贈関係先への連絡が必要
奈良県立大学の植物標本の誤廃棄では、標本台帳作成済みにもかかわらず廃棄されてしまいました
「管理者不明だから捨てる」ではなく、廃棄する前に入手した経緯と目録を確認し調べるべきです
貴重な植物標本の散逸を防ぐために県が適切に保存するとの奈良県知事との覚書に基づき、本会の元会長であった故岩田重夫氏の植物標本 (岩田コレクション)が2000年8月に県に寄贈されました。この約束にもかかわらず、2023年12月までにこの約10,000点の標本が相談なくすべて廃棄されたことを本会は2024年3月21日に知るところとなりました。
当時標本は新聞紙に
挟み採集地ごとに束ねられた状態であったため、2000 年 8 月に会員 28 人延べ 95 人
日の作業によって、当初県が受贈予定とした奈良県内産の標本に限り、種同定と標
本ラベルの作成・挿入を行い、7,344 点の標本台帳を作成しました。8 月 31 日と 9
月 1 日、奈良県教育委員会派遣の岩田標本評価委員会メンバー5 人が標本を 1 点ず
つ標本台帳と照合した結果、その価値に鑑み県外産の標本もあわせて受け入れると
の意向が示されました。そこで 2001 年 2 月に会員 18 人延 45 人日の作業で 2,732
点が整理され、3 月 6 日に前回と同様に点検を受けました。
寄贈時には県立自然博物館をつくる会会長と奈良県知事との間に「故岩
田重夫氏の植物標本に関わる覚書」が交わされました。
覚書には趣旨として以下のように記されています。
第 1 条 標本については、その学術用研究財産としての重要性を踏まえ、散逸等
を防止するために、乙 (県立自然博物館をつくる会会長 菅沼孝之) が甲 (奈良
県) に寄贈し、甲が現状のまま保管・管理する。
これによると、奈良県は植物標本群を現状のまま保管・管理することになってい
ましたが、2024 年 3 月 21 日に判明した事実によると、奈良県立大学に保管されて
いた植物標本群は、それが学術的な植物標本であることを認識しながら、所有者・
管理者が不明であるとして什器ごと大学当局により廃棄されました。
https:// sites.google.com/view/nara-botany/%E5%B2%A9%E7%94%B0%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
https:// drive.google.com/file/d/1cYCWMU4x39aMTyZj8W5kRl2UoyaDK0XJ/view?usp=sharing
奈良県立大学が植物標本を誤って廃棄した事案ですが、
この植物標本は標本ラベルの作成や標本台帳の作成を終えているものであり
「保管して研究するにはお金がかかる」
「予算外の標本を保管する費用も人員もない」という指摘は的外れであり、誤りです。
「寄贈されても、ありがた迷惑」という指摘も的外れです。
「貴重な植物標本の散逸を防ぐために県が適切に保存する」という
奈良県知事との覚書があるのに、奈良県立大学が植物標本を什器ごと廃棄したことが問題なのです。
奈良県立大学の標本誤廃棄の前には県立民俗博物館でも知事の発言が問題になっていました
奈良県の大和郡山市にある県立民俗博物館が収蔵品の廃棄する可能性?
知事による収蔵品廃棄の発言
奈良県の山下真知事が、同館の収蔵品の一部を廃棄する可能性に言及したことが問題の発端となった。知事は、価値のないものも受け入れてきたため、休館中に収蔵の基準と展示のあり方を検討してほしいと述べている。
収蔵品の管理不足
同館は約4万5千点の収蔵品を所有しているが、そのうち2万点超は閉校した高校や旧事務所など、館外で保管されてきた。管理が不十分だった経緯について、学芸員が来館者に説明を行った。
民具学会による声明
日本民具学会は山下知事の発言を受け、全国各地で「安易な一括廃棄が行われようとしている」と懸念と危機感を示す声明を出した。民具は有形民俗文化財であり、安易な廃棄は許されないという立場である。
香芝市長による引き取り意向
一方、同県香芝市の三橋和史市長は、同館を訪れ、子供の目に触れさせる価値のある収蔵品を市の博物館や小学校で展示したいと述べた。リストから候補を検討し、県に早期に申し入れる考えである。
以上のように、知事の発言を契機に、同館の収蔵品管理の問題が浮き彫りになり、民俗学界や地元自治体からも注目を集めている。収蔵品の適切な保管と有効活用が求められる中、同館は3年後の再開を目指し、展示資料の整理と運営のあり方の検討を進めていく方針である。
重要文書の誤廃棄に関する法的責任
個々のケースによって判断が分かれる複雑な問題です
一般的には以下のような観点から評価されます。
第一に、誤廃棄の違法性が認定されるかどうかが重要なポイントになります。
例えば、神戸地裁の判決では、石綿関連文書の誤廃棄について国の賠償責任が認められました。この判決は、文書の誤廃棄が違法行為に当たり得ることを示した先例として注目されます。違法性が認められれば、誤廃棄によって生じた損害に対する賠償責任が発生する可能性があるのです。
第二に、文書の保存責任についても検討が必要です。
通常、文書の保存責任は、その文書を作成または取得した部署にあると考えられています。したがって、誤廃棄が発生した場合、当該部署における文書管理の適切性が問題となります。保存期間中の文書を誤って廃棄してしまったのであれば、管理責任を問われるリスクがあると言えるでしょう。
第三に、誤廃棄を防止するための教育と内部体制の整備状況も、法的責任の判断に影響を与えます。
文書管理規程の策定、担当者への教育、チェック体制の構築など、誤廃棄を未然に防ぐための取り組みが十分になされていたかどうかが評価の対象となります。これらの対策が不十分であったために誤廃棄が発生したのであれば、組織の法的責任が問われる可能性が高くなるのです。
以上のように、文書の誤廃棄に関する法的責任は、違法性の認定、保存責任の所在、教育と内部体制の整備状況といった観点から総合的に判断されます。もっとも、実際の事案においては、文書の内容や重要性、誤廃棄の経緯、組織の対応など、さまざまな要素が考慮されることになるでしょう。
例えば、誤廃棄された文書の中に個人情報や機密情報が含まれていた場合、より重大な法的責任が生じる可能性があります。また、誤廃棄の事実を隠蔽しようとした場合や、再発防止策を講じなかった場合なども、法的責任の判断に影響を与えると考えられます。
したがって、組織としては、日頃から適切な文書管理体制を整備し、定期的な教育と監査を行うことが求められます。そうした地道な取り組みが、万一の誤廃棄の際の法的リスクを軽減することにつながるのです。
もっとも、いかに体制を整備しても、人為的なミスを完全に防ぐことは困難です。
重要なのは、誤廃棄が発生した際の迅速かつ誠実な対応です。事実関係を速やかに調査し、関係者への説明と損害の回復に努めることが、組織の社会的責任を果たす上で欠かせません。
誤廃棄に関する法的責任の問題は、ともすれば抽象的な議論に陥りがちですが、常に具体的な事案に即して冷静に判断することが肝要です。そのためには、日頃から関連法令に関する知識を深め、他の事例から学ぶことが大切だと言えるでしょう。
歴史資料の誤廃棄を防ぐため、公文書管理法をはじめとする関連法規では、厳格な管理体制と手続きが定められています。その理由は、歴史資料が国民共有の知的資源であり、将来世代に継承すべき貴重な財産だからです。不適切な廃棄は、歴史研究に欠かせない一次資料を失うことを意味し、国民の知る権利や学問の自由を損なう恐れがあります。
公文書管理法では、国立公文書館等に移管された特定歴史公文書等について、原則として永久保存を義務付けています。
これは、重要な公文書を散逸や滅失から確実に守るためです。もっとも、永年の保存の中で文書が劣化し、判読不能となることもあり得ます。そうした例外的な場合に限り、廃棄が認められています。
しかし、その判断を国立公文書館等の長の裁量に委ねてしまうと、誤廃棄や恣意的な廃棄のリスクが高まります。歴史公文書の価値の判断には、時代による見方の変化など、さまざまな考慮要素があるからです。そこで、公文書管理法は、廃棄の際に内閣総理大臣の同意を得ることを要件としています。これにより、専門家の意見も踏まえた慎重な判断を担保しているのです。
万が一、行政文書の紛失や誤廃棄が発覚した場合は、速やかに総括文書管理者への報告と、事態の把握、再発防止策の検討が求められます。歴史公文書の誤廃棄は、行政の説明責任や透明性を損なう重大な問題だからです。早期の対応により、背景事情の解明と信頼回復に努める必要があります。
さらに、裁判所の記録の保存・廃棄に関する規程では、とりわけ重要な事件の記録については、通常の保存期間を超えて、特別に保存すべきことを定めています。司法の公正性や透明性を示す記録、法学研究の基礎資料となる記録は、永く後世に伝える価値があると考えられているのです。
以上のように、公文書管理法をはじめとする関連規程は、歴史資料の重要性に鑑み、その保存と廃棄の手続きを厳格に定めています。国民共有の知的資源を守るためには、恣意的な廃棄を防ぎ、必要な資料を確実に残していく仕組みが不可欠です。その一方で、マニュアルだけでは対応しきれない例外的なケースについては、政府のトップレベルの判断を求めることで、慎重な対処を図っているのです。
もちろん、こうした制度を形骸化させないためには、公文書管理の重要性についての認識を、行政機関全体で共有することが肝要です。日々の文書管理の積み重ねが、将来の歴史研究を支える礎となることを、自覚する必要があります。
同時に、歴史資料の保存と利用をめぐっては、個人情報の保護や国家機密の管理など、時に対立する価値との調整も求められます。
寄贈された所蔵品・収蔵品の廃棄に関する法的責任
法的責任の種類
不法行為責任
寄贈品の廃棄が不法行為に該当する場合、管理者は責任を負う可能性があります。具体的には、寄贈品が廃棄された結果、他者に損害が発生した場合、民法に基づく不法行為責任が問われることがあります。この場合、損害の発生と廃棄行為との因果関係を立証する必要があります。
契約責任
寄贈に関する契約が存在する場合、契約の内容に基づく責任も考慮されます。寄贈者と受領者の間で合意された条件に違反した場合、契約責任が発生することがあります。特に、寄贈品の管理や廃棄に関する明確な規定がある場合、その規定に従わないと契約違反となり、損害賠償請求が可能です。
製造物責任
寄贈された品が製品であり、廃棄後に欠陥が発見された場合、製造物責任が適用されることがあります。製造物責任法に基づき、製造者や販売者は、製品に欠陥があった場合に損害賠償を負うことになります。特に、寄贈品が食品である場合、食品衛生法に基づく責任も考慮されます。
寄贈品の管理と廃棄プロセス
寄贈品の廃棄に際しては、適切な管理と記録が求められます。特に、廃棄理由や廃棄方法を明確にし、証拠を残すことが重要です。これにより、万が一の法的トラブルを回避するための対策となります。また、廃棄の際には、環境保護や地域社会への配慮も考慮する必要があります。
リスクと対策
寄贈品の廃棄に伴うリスクとして、以下の点が挙げられます。
法的リスク
歴史資料の寄贈品の廃棄に伴う法的リスク
法的リスクの種類
所有権と寄贈契約
寄贈品は、寄贈者と受贈者(博物館やアーカイブなど)との間で交わされる契約に基づいています。この契約には、寄贈品の使用、保存、廃棄に関する条件が含まれることが一般的です。寄贈者が寄贈品の所有権を完全に移転したとみなされる場合、受贈者は自由に処分できる一方、契約に特定の条件がある場合、これに違反すると法的なトラブルが生じる可能性があります。
文化財保護法
日本には文化財保護法があり、特に歴史的価値のある資料に関しては、廃棄や処分に対する厳しい規制があります。この法律に違反すると、罰則が科される可能性があるため、廃棄を行う際には十分な注意が必要です。文化財の保存と管理に関する基準を遵守しなければなりません。
環境への配慮
廃棄する際には、環境への影響も考慮する必要があります。特に有害物質を含む資料を不適切に処分すると、環境法に抵触する可能性があります。例えば、古いフィルムがセルロイドである場合、自然発火の危険性があり、適切な処理が求められます。
寄贈品の廃棄のプロセスと注意点
評価と選別
寄贈品の廃棄を決定する前に、まずその資料の歴史的価値や保存状態を評価する必要があります。価値が低いと判断された場合でも、寄贈者の意向や法的な制約を考慮することが重要です。
文書化と報告
廃棄を行う際には、すべてのプロセスを文書化し、関連する機関に報告することが推奨されます。これにより、後々の法的トラブルを避けることができます。特に、寄贈者に対しても適切な説明を行うことが信頼関係を維持する上で重要です。
代替手段の検討
廃棄の代わりに、資料のデジタル化や他の機関への移管など、代替手段を検討することも一つの方法です。これにより、資料の保存と利用を両立させることが可能になります。
結論
歴史資料の寄贈品の廃棄には、所有権、文化財保護法、環境への配慮など、さまざまな法的リスクが伴います。これらのリスクを理解し、適切な手続きを踏むことで、法的トラブルを回避しつつ、文化財の保存と管理を行うことが求められます。廃棄の際には、評価、文書化、代替手段の検討を行い、透明性を持ったプロセスを確保することが重要です。
「誤って捨ててしまった」信用を無くすレピュテーションリスク
廃棄行為が公に知られることで、管理者の評判が低下する可能性があります。特に食品関連の寄贈では、衛生管理の不備が問題視されることがあります。
これらのリスクを軽減するためには、寄贈品の状態を常に監視し、適切な管理体制を整えることが必要です。また、寄贈者とのコミュニケーションを密にし、廃棄に関する合意を明確にすることも重要です。
結論
寄贈された所蔵品の廃棄に関する法的責任は多岐にわたり、状況に応じた適切な管理と法的理解が求められます。寄贈者と受領者の間での明確なコミュニケーションと、法的リスクを意識した行動が、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。
故 岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書の提出について 2024年7月19日 全文
故岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書の提出について 2024年7月19日
奈良植物研究会は、1977年に創設され、奈良県の野生植物を対象としてその分布や分類学的な課題を研究する民間の団体です。また本会は、この間自然史研究教育の分野で関連する諸団体と共に、奈良県に自然系博物館を設立するはたらきかけをして参りました。その流れの中での第一歩として、貴重な植物標本の散逸を防ぐために県が適切に保存するとの奈良県知事との覚書に基づき、本会の元会長であった故岩田重夫氏の植物標本 (岩田コレクション)が2000年8月に県に寄贈されました。この約束にもかかわらず、2023年12月までにこの約10,000点の標本が相談なくすべて廃棄されたことを本会は2024年3月21日に知るところとなりました。これは奈良県ひいては日本の植物学にとっての重大な損失であり、県の自然環境や自然資産に対する認識や姿勢が厳しく問われなければなりません。
本会は、今回の事態について県に厳重に抗議するとともに、県がこのような事態を招いた経緯、原因を明らかにすること、また協働して奈良県の生物多様性の保全を推進するため、今後の県の自然資産への対応姿勢に抜本的な改善を求めることといたしました。奈良植物研究会 会長 松井 淳https:// sites.google.com/view/nara-botany/%E5%B2%A9%E7%94%B0%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
故 岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書 全文
故岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書
奈良県知事
山下 真 殿2024 年 7 月 19 日
奈良植物研究会
会長 松井 淳奈良植物研究会は、去る 2024 年 3 月 21 日に判明した奈良県立大学で保管されて
いた当会寄贈の故岩田重夫氏の植物標本の廃棄について、厳重に抗議するとともに
詳細な説明を要望します。
奈良植物研究会および「県立自然博物館をつくる会 (会長、菅沼孝之)」は、1991
年以来、奈良県に自然史博物館を設立するための活動を続けてきましたが、10 年を
経過しても博物館設立の目途は立ちませんでした。しかしこの間奈良県当局と折衝
を続けるなかで、県より散逸の恐れのある自然史関係の貴重なコレクションを保管
する施設について考慮するとの意向が 1998 年に示され、1999 年 4 月 15 日には
「貴重な標本を受贈する場合の基本的な考え方」が示されました。要約すると以下
のとおりです。
1 受贈の対象は散逸のおそれのある貴重な標本だけとする (文献、地図、写真フ
ィルム等は含まれない)。
2 研究上頻繁に使用する標本は含まれない。
3 受贈後は県に帰属し、保管および管理は県が行う。
4 一般への展示・公開は行わない。
これを受けて故岩田重夫氏の植物標本 (通称岩田コレクション) を県に寄贈する
ことが本会の役員会 (1999 年 5 月 21 日) で承認されました。当時標本は新聞紙に
挟み採集地ごとに束ねられた状態であったため、2000 年 8 月に会員 28 人延べ 95 人
日の作業によって、当初県が受贈予定とした奈良県内産の標本に限り、種同定と標
本ラベルの作成・挿入を行い、7,344 点の標本台帳を作成しました。8 月 31 日と 9
月 1 日、奈良県教育委員会派遣の岩田標本評価委員会メンバー5 人が標本を 1 点ず
つ標本台帳と照合した結果、その価値に鑑み県外産の標本もあわせて受け入れると
の意向が示されました。そこで 2001 年 2 月に会員 18 人延 45 人日の作業で 2,732
点が整理され、3 月 6 日に前回と同様に点検を受けました。
こうして岩田重夫氏の植物標本(県内 7,344 点、県外 2,732 点) を寄贈する準備は
整いました。手続き上の煩雑さを防ぐため、本会所有の岩田コレクションは、交渉
を続けてきた県立自然博物館をつくる会に一旦寄贈され、県立自然博物館をつくる
会から 2001 年 6 月 29 日付で、「故岩田重夫氏が採集した貴重な標本について、散
逸等を防ぐため、奈良県で保管・管理してもらうために」寄贈され、同年 8 月 13 日
に奈良県立大学の標本庫に搬入されその後多数の本会会員により配架が行われました。また、寄贈時には県立自然博物館をつくる会会長と奈良県知事との間に「故岩
田重夫氏の植物標本に関わる覚書」が交わされました。
覚書には趣旨として以下のように記されています。
第 1 条 標本については、その学術用研究財産としての重要性を踏まえ、散逸等
を防止するために、乙 (県立自然博物館をつくる会会長 菅沼孝之) が甲 (奈良
県) に寄贈し、甲が現状のまま保管・管理する。
これによると、奈良県は植物標本群を現状のまま保管・管理することになってい
ましたが、2024 年 3 月 21 日に判明した事実によると、奈良県立大学に保管されて
いた植物標本群は、それが学術的な植物標本であることを認識しながら、所有者・
管理者が不明であるとして什器ごと大学当局により廃棄されました。このことが事
実であり貴重な標本が失われたのであれば、奈良県の重大な過失と言わざるを得ま
せん。過去に採集された標本の中には、現在その採集地で確認できないものなども
含まれており、二度と採集することができないため奈良県、ひいては日本の植物学
における大きな損失であると同時に奈良県民の財産の損失となります。
当会では自然史資料の散逸を防ぐため、奈良県に対し再三に渡って県立自然史博
物館の設立と、自然史資料の保管・管理を要望してきました。その結果として自然
史資料の散逸を防ぐための寄贈と奈良県立大学への収蔵が決定されたにもかかわら
ずその資料が廃棄されたのであれば、断じて許されない行為です。これまで積み上
げられてきた植物標本の収集・管理に対する膨大な努力を無にする暴挙であり、奈
良県における郷土の自然史資料の散逸を防ぎ自然史研究・教育を推進しようとする
当会の願いに反する誠に遺憾な行為です。
当会では奈良県のこの行為に対して深い失望感を抱くとともに強く抗議し、奈良
県が二度と同じような過失をすることなく、自然史資料散逸を防ぐ体制設立に向け
た一層の取り組みを行われるよう強く求めます。当会は正式に奈良県に抗議すると
ともに、今回の事案がどのような過程で生じたのかを詳らかにしていただきたいと
存じます。また、今回の事実を受けて県として今後どのような対応を採られるのか
についてもお尋ねします。
以上に述べたことを踏まえ、次の 5 点を要望します。記
1) 岩田コレクション受け入れに関する奈良県の認識と経緯を教えてくださ
い。
2) 岩田コレクション廃棄に至った経緯を教えてください。
3) 今回の事実に対して奈良県としての本抗議への対応を教えてください。
4) 自然史資料の重要性に鑑み、その散逸を防ぎ自然史研究・教育に資する体
制の創設に向けて奈良県の取り組みを緊急に推進してください。
5) 以上 4 点に関して本要望書受領後 30 日以内に回答をお願いします。
以上https:// drive.google.com/file/d/1cYCWMU4x39aMTyZj8W5kRl2UoyaDK0XJ/view?usp=sharing
植物標本「岩田コレクション」の収集者は故・岩田重夫氏です。
岩田重夫氏は1916年生まれで、1950年から1987年にかけて奈良県南部を中心に約40年間にわたり、1万点もの植物標本を採集しました。
岩田氏が収集した標本は、奈良県版レッドデータブックの作成などに役立ってきた貴重なコレクションで、県内でこの時期に採集された標本は少ないと評価されています。
しかし、この「岩田コレクション」は2000年に標本台帳を作成し2001年に奈良県立大学に寄贈されたものの、2023年10月に大学の職員が誤って廃棄してしまったことが明らかになりました。 収集に40年もの歳月をかけた貴重な標本が散逸してしまったことを、奈良植物研究会は抗議しています。
奈良県立大学は、奈良植物研究会から寄贈された約1万点の植物標本を誤って廃棄したことを明らかにしました。
この標本は、故・岩田重夫氏が昭和25年から62年にかけて県南部を中心に採集した「岩田コレクション」と呼ばれるものです。 研究会によると、この標本は平成13年に奈良県立自然博物館をつくる会から奈良県に寄贈され、同年から奈良県立大学で保管されていました。
つまり、「岩田コレクション」と呼ばれる約1万点の植物標本は、2001年に奈良県に寄贈されたということになります。 標本の中には、奈良県のレッドリストですでに絶滅したと考えられる種も含まれていたといいます。
奈良県立大学は、昨年10月の校舎取り壊しに伴う整理の際に、変色した植物を標本と認識せず誤って廃棄してしまったと説明しています。 研究会は県に対し、廃棄に至った経緯や今後の対応などについて説明を求める要望書を提出しました。
奈良植物研究会は、奈良県立大学が約1万点の貴重な植物標本を誤って廃棄したことに対し、抗議と説明を求める要望書を提出しました。この標本は故・岩田重夫氏が1950年から1987年にかけて収集したもので、県内の絶滅危惧種を含む重要な資料でした
廃棄されたのは2023年10月で、大学の職員が標本と認識せず、産業廃棄物と誤認し、持ち主不明のため処分を依頼したことが原因です。
研究会のメンバーが2024年3月に大学を訪れた際、標本がすべて廃棄されていることが判明しました
奈良県立大学の学長は、誤廃棄に対して謝罪し、今後は重要な資料の管理を徹底する方針を示しました 研究会は、標本の散逸が地域の植物研究に与える影響を懸念しており、今後の対応についての説明を求めています
奈良県立大学における植物標本の誤廃棄事件
学術的価値を持つ約1万点の標本が、大学の管理不備により廃棄されたことから、法的責任や倫理的責任が問われています。
2001年に奈良市の団体から寄贈された「岩田コレクション」は、絶滅危惧種や現在では採取できない植物を含む貴重な標本でした。しかし、2023年10月、標本庫の建物取り壊しに伴い、大学の職員が誤ってこれらの標本を産業廃棄物として処分してしまいました。この廃棄は、職員が標本の価値を認識していなかったことに起因しています。
法的責任
契約上の責任
寄贈時に交わされた覚書には、県が標本を現状のまま保管・管理することが明記されていました。このため、県立大学は契約違反の責任を問われる可能性があります。寄贈者や関係者は、標本が廃棄されたことに対して法的措置を講じることも考えられます。
不法行為責任
誤廃棄の結果、寄贈者の財産権が侵害されたことから、不法行為としての責任も考慮されます。標本の価値を理解せずに廃棄したことは、注意義務の違反と見なされる可能性があります。これにより、大学は損害賠償を求められることもあり得ます。
再掲載 一部略
故岩田重夫氏の植物標本廃棄についての要望書 奈良植物研究会
1999 年 4 月 15 日には
「貴重な標本を受贈する場合の基本的な考え方」が示されました。要約すると以下
のとおりです。
1 受贈の対象は散逸のおそれのある貴重な標本だけとする (文献、地図、写真フ
ィルム等は含まれない)。
2 研究上頻繁に使用する標本は含まれない。
3 受贈後は県に帰属し、保管および管理は県が行う。
4 一般への展示・公開は行わない。
岩田重夫氏の植物標本 (通称岩田コレクション) を県に寄贈する
ことが本会の役員会 (1999 年 5 月 21 日) で承認されました。当時標本は新聞紙に
挟み採集地ごとに束ねられた状態であったため、2000 年 8 月に会員 28 人延べ 95 人
日の作業によって、当初県が受贈予定とした奈良県内産の標本に限り、種同定と標
本ラベルの作成・挿入を行い、7,344 点の標本台帳を作成しました。8 月 31 日と 9
月 1 日、奈良県教育委員会派遣の岩田標本評価委員会メンバー5 人が標本を 1 点ず
つ標本台帳と照合した結果、その価値に鑑み県外産の標本もあわせて受け入れると
の意向が示されました。そこで 2001 年 2 月に会員 18 人延 45 人日の作業で 2,732
点が整理され、3 月 6 日に前回と同様に点検を受けました。(略)
岩田重夫氏の植物標本(県内 7,344 点、県外 2,732 点) を寄贈する準備は
整いました。手続き上の煩雑さを防ぐため、本会所有の岩田コレクションは、交渉
を続けてきた県立自然博物館をつくる会に一旦寄贈され、県立自然博物館をつくる
会から 2001 年 6 月 29 日付で、「故岩田重夫氏が採集した貴重な標本について、散
逸等を防ぐため、奈良県で保管・管理してもらうために」寄贈され、同年 8 月 13 日
に奈良県立大学の標本庫に搬入されその後多数の本会会員により配架が行われました。寄贈時には県立自然博物館をつくる会会長と奈良県知事との間に「故岩田重夫氏の植物標本に関わる覚書」が交わされました。覚書には趣旨として以下のように記されています。
第 1 条 標本については、その学術用研究財産としての重要性を踏まえ、散逸等
を防止するために、乙 (県立自然博物館をつくる会会長 菅沼孝之) が甲 (奈良
県) に寄贈し、甲が現状のまま保管・管理する。
これによると、奈良県は植物標本群を現状のまま保管・管理することになってい
ましたが、2024 年 3 月 21 日に判明した事実によると、奈良県立大学に保管されて
いた植物標本群は、それが学術的な植物標本であることを認識しながら、所有者・
管理者が不明であるとして什器ごと大学当局により廃棄されました。このことが事
実であり貴重な標本が失われたのであれば、奈良県の重大な過失と言わざるを得ま
せん。
https:// drive.google.com/file/d/1cYCWMU4x39aMTyZj8W5kRl2UoyaDK0XJ/view?usp=sharing
倫理的責任
学術的価値の損失
この事件は、学術的な資産の管理における倫理的責任を浮き彫りにしています。標本は研究や教育において重要な役割を果たしており、その廃棄は学術コミュニティ全体に対する損失といえます。大学側は、標本の価値を認識し、適切に管理する責任があったとされます。
社会的責任
奈良県立大学は、地域社会や植物研究者に対しても責任があります。標本の廃棄は、地域の自然資源や文化的遺産に対する無理解を示すものであり、県民の信頼を損なう結果となりました。大学は今後、地域との連携を強化し、信頼回復に努める必要があります
再発防止策
大学は、今後の再発防止に向けて、物品管理の徹底や担当者間の引き継ぎの適正化を進めるとしています。具体的には、重要な資料については目視確認を行い、適切な管理体制を築くことが求められます。
結論
奈良県立大学における標本の誤廃棄は、法的責任、倫理的責任、社会的責任の観点から多面的に考察する必要があります。今後、大学がどのようにこれらの責任を果たし、信頼を回復するかが注目されます。
東京地方裁判所における裁判記録の廃棄問題
特に「特別保存」制度の運用に関する深刻な課題を浮き彫りにしています。この制度は、重要な史料や参考資料となるべき記録を、保存期間が満了した後も保管するためのものですが、実際には多くの記録が機械的に廃棄されていたことが明らかになりました。
廃棄の背景
特別保存制度の運用の不備
東京地裁では、特別保存に付されるべき事件記録が極めて少なく、過去の調査では、保存対象として選定されたのはわずか11件にとどまっていました。特に、神戸市で発生した連続児童殺傷事件に関連する記録が廃棄されたことが注目され、87件の少年事件や民事訴訟の記録のうち、70件以上が保存の検討もされずに廃棄されていたことが指摘されています。
このような状況は、裁判所内での記録廃棄の基準や手続きが適切に運用されていなかったことを示しています。特別保存の基準が狭く解釈され、重要な事件に関する記録が適切に評価されていなかったことが、廃棄の一因とされています。
特別保存の認定プロセスや判断基準が明確でなかった
平成31年に憲法事件記録の廃棄が問題になった後、令和2年に2項特別保存の客観的基準を定めた「運用要領」が東京地裁をはじめ各庁で策定されたが、それ以前は認定プロセスや判断権者等について具体的に明文化した庁はほとんどなく、その結果、重要事件の記録の多くが廃棄処分された。
特別保存の判断権者の認識不足
神戸連続児童殺傷事件など一部の事件では、廃棄時の家裁所長が自身が2項特別保存の判断権者との認識がなかったため、保存につき明確に意見を述べることはなく、結果的に廃棄された。
特別保存の認定基準の適用ミス
運用要領策定後も、日刊紙2紙掲載基準及び判例集登載基準への当てはめが適切に行われず廃棄された事案もあった。
特別保存の事後管理の不備
特別保存に付されたにもかかわらず、その後に廃棄された事件も6件あった。これは担当管理職の管理方法の不備や不十分な引継ぎが原因であった。
以上のように、特別保存の認定プロセスや基準が明確でなく、判断権者の認識不足や基準の適用ミス、事後管理の不備などにより、重要事件記録の多くが廃棄されるという問題が生じていました。裁判所内部での取り組みの不足が指摘されています。
歴史的資料の喪失 気象庁の「カンテラ日誌」の廃棄 富士山測候所
また、気象庁の「カンテラ日誌」の廃棄も同様の問題を示しています。この記録は68年間にわたって富士山測候所の職員によって記録されていたもので、重要な歴史的資料と見なされていましたが、適切な保存が行われずに失われてしまいました。これにより、過去の重要なデータや情報が失われることは、今後の研究や歴史的理解にとって大きな損失となります。
社会的影響と批判
この問題は、法的な透明性や公正性に対する信頼を損なう可能性があります。特に、重要な事件に関する記録が廃棄されることで、被害者やその遺族に対する配慮が欠如しているとの批判もあります。遺族からは「納得できない」という声が上がり、再発防止策の実効性に疑問を呈する意見も多く見受けられます。
改善策と今後の展望
東京地裁は、記録廃棄問題を受けて、特別保存の基準を見直し、より多くの事件記録が保存されるよう努めることを約束しています。具体的には、主要な日刊紙に掲載された事件については特別保存するという新たな基準を設けるなどの改善策が講じられています。
しかし、これらの改善策が実効性を持つためには、裁判所内での意識向上や、記録保存に関する教育・訓練が必要です。また、国民からの要望に応じた柔軟な対応が求められています。重要な記録が失われることのないよう、制度の運用が適切に行われることが今後の課題となるでしょう。
このように、裁判記録の廃棄問題は、法制度の運用や歴史的資料の保存に関する重要な議論を引き起こしています。社会全体でこの問題を考え、解決に向けた取り組みを進めることが求められています。
誤廃棄の事例について、いくつかの具体的な事例とその背景を紹介します。
公文書の誤廃棄
千葉県では、永久保存が必要な歴史公文書を含む139冊の公文書が誤って廃棄されたことが報告されています。この問題は、文書管理の不備や所在不明の状態が原因で発生しました。
行政文書の誤廃棄
厚生労働省では、2021年に医薬・生活衛生局が廃棄作業を行った際、誤って重要な書類を廃棄してしまう事案が発生しました。廃棄業者の管理不足が指摘されています。
消防署における誤廃棄
さいたま市の岩槻消防署では、過去の火災調査書と救助出場報告書が紛失し、誤って廃棄された可能性があるとされています。文書には個人情報が含まれており、管理体制の不備が問題視されています。
金融機関での顧客情報の誤廃棄
金融機関でも顧客情報を含む文書の誤廃棄が多発しています。特に、文書廃棄ルールが不十分で、担当者の判断に依存して廃棄が行われていることが原因とされています。この結果、大量のATMジャーナルが誤って廃棄される事例が報告されています。
誤廃棄の主な原因
これらの事例から明らかになった誤廃棄の主な原因
・文書管理に関する教育不足
・廃棄時のチェック機能の不全
・保存期間に関するルールの曖昧さ
・コミュニケーション不足
これらの問題を解決するためには、文書管理に関する教育の実施や、廃棄時の確認プロセスの強化が求められています。
まとめ
誤廃棄は、文書管理の不備や教育不足、コミュニケーションの欠如から生じることが多く、特に公的機関や金融機関においてはその影響が大きいです。これらの事例を通じて、文書管理の重要性を再認識し、適切な対策を講じることが求められます。文書管理の改善は、情報の保護だけでなく、組織の信頼性向上にも寄与するでしょう。
学術資料の適切な管理は、研究の信頼性と再現性を確保する上で極めて重要
研究データや資料は、科学的な知見を導き出すための基盤であり、それらが失われたり改ざんされたりすることは、学術研究の根幹を揺るがしかねません。
不適切な管理がもたらす影響は、多岐にわたります。第一に、過去の研究成果やデータが失われることで、研究の継続性が損なわれる点が挙げられます。特に、長期的な観察や追跡調査を必要とする研究分野においては、データの欠落は致命的な問題となります。貴重な研究の蓄積が断絶してしまうことで、学術的な進歩が阻害されるおそれがあるのです。
第二に、資料の不適切な管理は、研究結果の信頼性を低下させ、学術コミュニティ内での信用を失墜させる危険性があります。研究の妥当性や再現性は、データの適切な管理によって担保されています。仮に、管理の不備によってデータの改ざんや捏造が行われた場合、その研究は科学的な価値を失い、関連する研究分野全体の信頼が揺らぐことにもなりかねません。
第三に、ずさんな資料管理は、研究における不正行為を助長する環境を生み出しかねません。データの改ざんや捏造は、研究者としての倫理に反する重大な違反行為ですが、管理体制の不備はそうした行為を見逃し、あるいは誘発する温床となります。残念ながら、研究不正のスキャンダルは後を絶ちませんが、その背景には杜撰なデータ管理の問題があることは否定できません。
こうした問題意識から、多くの研究機関では、研究データの適切な管理を推進するためのガイドラインやポリシーの策定が進められています。例えば、京都大学では、公正な研究を行うために、研究データの保存期間や管理方法について明確な指針を設けています。また、大阪大学では、研究データの記録・管理が研究成果の信頼性を担保するために不可欠であると強調しています。
もっとも、ガイドラインの策定だけでは十分とは言えません。何より重要なのは、研究者が、データ管理の重要性を深く認識することです。自らの研究活動の基盤となる資料を適切に管理することは、研究者の基本的な責務であると言えます。そのためには、日頃からデータのバックアップや保管庫の整備など、地道な取り組みを怠らないことが肝要です。
加えて、研究機関全体としても、データ管理に関する教育や支援体制の充実が求められます。例えば、若手研究者へのデータ管理トレーニングや、専門的なアーキビストの配置など、組織的な取り組みが不可欠です。また、データ管理に要するコストを適切に評価し、研究費の配分においても考慮することが必要でしょう。
学術研究の健全な発展は、ひとえにデータの適切な管理にかかっていると言っても過言ではありません。
目先の研究成果だけでなく、将来にわたってデータを活用できる環境を整備しなければなりません。
植物標本の作成と保管の重要性
植物標本の作成は、植物を保存し、観察するための重要なプロセスです。標本を作成することで、植物の形態的特徴を長期間にわたって保存し、研究や教育に役立てることができます。また、標本は植物の分類学的研究や生態学的研究の証拠となるものです。
標本を作成する際は、以下の手順で行います。
採集
野外で植物を採集します。選ぶ際は、花や果実がついているものを選ぶと良いでしょう。採集する際は、植物の生育環境を破壊したり、希少種を絶滅に導くような行為は慎まなければなりません。
乾燥
採集した植物を新聞紙に挟み、乾燥させます。具体的には、以下の手順で行います。
新聞紙を半分に切り、折ったものを用意します。
折った新聞紙の間に植物を整えて並べます。
何も挟んでいない新聞紙4~5枚、植物を挟んだ新聞紙、再び何も挟んでいない新聞紙4~5枚と交互に重ねます。
上から重しを置き、圧力をかけて乾燥させます。この状態で数日間、湿った新聞紙を交換しながら乾燥を続けます。
乾燥後、段ボール紙をはずし、新聞紙に挟んだままの状態でビニール袋に入れて完全に密閉し、冷凍庫(-20~-30°C)に3日以上ストックします。これにより、標本にダメージを与えることなく、標本を食い荒らす害虫やその卵を駆除することができます。
ラベル作成
植物が乾燥したら、採集場所、採集日、採集者名を記入したラベルを作成します。これにより、標本の情報を記録しておくことができます。ラベルは標本の学術的価値を決定する最も重要なものです。
ラベルに記載する情報として、植物の学名や特徴(例えば、科名や属名)も追加すると、学術的価値がさらに高まります。
保存
完成した標本は、適切な台紙に貼り付けて保存します。湿気を避け、直射日光の当たらない場所に保管することが重要です。標本は放置すると、タバコシバンムシ等の標本害虫に食べられてしまうため、防虫剤をいれた大きめのビニール袋に密閉して保管するようにしましょう。
以上のように、植物標本の作成と保管は、正しい手順を踏むことで、植物の特性を長期間保存し、研究や教育に役立てることができます。標本作成の際は、植物の生育環境への配慮と、作成後の適切な保管が重要なポイントです。
鉱物標本の作成と保管の重要性
鉱物標本の作成と保管は、地質学や鉱物学の研究において非常に重要な役割を果たします。標本は、研究資料として貴重な情報を提供し、新しい発見や理解を促進するのに役立ちます。
標本作成の目的
鉱物標本を作成する主な目的
研究や教育のための資料として保存する
鉱物の特徴や性質を記録し、後の比較や分析に役立てる
採集地点や産状を記録し、地質学的な情報を保持する
標本作成の方法
鉱物標本を作成する際は、以下のような手順を踏みます
採集地点や産状を記録する
適切な大きさに鉱物を切り出す
鉱物の表面を研磨し、特徴を明確にする
鉱物の名称、採集地点、採集日などの情報をラベルに記入する
鉱物をケースに収納し、保管する
標本の保管と管理
鉱物標本を適切に保管し、管理することは非常に重要です。以下のような点に留意する必要があります
温度や湿度の変化を最小限に抑える
直射日光や蛍光灯の光を避ける
防虫剤を使用し、カビや害虫の発生を防ぐ
標本の情報を記録し、検索しやすい状態に保つ
標本の活用
適切に作成し、保管された鉱物標本は、以下のような用途で活用されます
研究者による分析や比較のための資料
学生や一般の人々への教育や展示
新しい鉱物種の発見や既知の鉱物の新たな産地の確認
以上のように、鉱物標本の作成と保管は、地質学や鉱物学の発展に欠かせない要素です。標本を通して得られる情報は、研究や教育に大きく貢献し、新しい知見を生み出す可能性を秘めています。
埋蔵文化財の出土品や文献史料を廃棄処分する場合は?
「史料、歴史資料の保管にはコストがかかるから廃棄処分」は歴史の破壊につながります
史料性があるもの、代替不可能性があるものを捨ててしまっては取り返しがつきません
台帳が作られていない、分類整理が終わっていない場合が多いですが、
学芸員を雇用して分類整理を完了させることが重要です
収蔵品のリスト化、分類整理が終わっていない場合まとめて廃棄されるケースが多い
奈良県立大学の植物標本ですが、
ニュース、報道記事では「誤廃棄」とタイトルになっていたり
「価値が分からなかった」と説明がされていますが
『奈良県立大学に保管されていた植物標本群は、それが学術的な植物標本であることを認識しながら、所有者・管理者が不明であるとして什器ごと大学当局により廃棄されました』と奈良植物研究会の発表があります
整理同定作業済みのものがまさかの破棄
標本ラベルと標本台帳も作成済みでも什器(ロッカー)ごと廃棄されるのですから唖然とします。
名乗り出なかったから所有者・管理者不明で即廃棄ではなく目録で寄贈者を確認すべきだったのです
寄贈者に返還すれば、植物標本は「植物標本庫」などに寄贈できたでしょう
出土品の価値と取扱いの制度
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