日本経済の現状と課題
経済成長の鈍化
日本経済は、1990年代初頭のバブル崩壊以降、長期的な低成長が続いています。バブル経済とは、資産価格が実体経済から乖離して高騰した状態を指します。バブル崩壊後、日本経済は「失われた10年」と呼ばれる長期停滞に陥りました。2000年代に入っても、リーマン・ショックや東日本大震災などの影響もあり、安定的な成長軌道に戻ることができていません。
経済成長率は、一国の経済活動の拡大を示す指標です。国内総生産(GDP)の増加率で表されることが多く、日本の経済成長率は1990年代以降、他の先進国と比べて低い水準で推移しています。経済成長の鈍化は、企業収益の低迷や賃金の伸び悩みにつながり、個人消費の停滞を招いています。また、税収の低迷は財政赤字の拡大を招き、政府の経済政策の選択肢を狭めることにもなります。
経済成長を促進するには、イノベーションの推進や生産性の向上が求められます。イノベーションとは、新しい技術や製品、サービスを生み出すことで、付加価値を高め、経済の活力を生み出します。生産性の向上は、同じ投入量でより多くの産出を可能にし、経済成長の源泉となります。日本は、研究開発投資の拡大や、人的資本への投資、規制改革などを通じて、イノベーションと生産性の向上を図ることが求められています。
設備投資の停滞により、生産性が低下し付加価値の高い製品を製造できなくなるため、GDPの増加が鈍化する
賃金の上昇が抑えられ、生活水準の向上が阻害される
他国と比べて相対的に日本人の生活水準が下がっていく
商品の値上がりによって購入できる量が減少し、質の低い製品やサービスを選択せざるを得なくなる
また、経済成長の停滞は人材不足の加速にもつながります。
賃金の低さから、技能実習生や高度外国人材の日本への流入が減少する
日本人技術者の海外流出が増加する
介護や運送などの人手不足分野での人材確保が困難になる
少子高齢化と人口減少
日本は、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進行しています。少子高齢化とは、出生率の低下と平均寿命の延伸により、子どもの数が減り、高齢者の割合が増加する現象を指します。日本の合計特殊出生率は、1.4程度で推移しており、人口を維持するのに必要とされる2.07を大きく下回っています。一方で、日本の平均寿命は世界最高水準にあり、65歳以上の高齢者の割合は、2020年時点で28.7%に達しています。
主な対策
子育て世帯への手当を大幅に増額し、年間の子育て関連支出をGDPの16%まで引き上げる
0歳から2歳児の保育支援を拡充し、2026年4月から就労状況に関わらず誰でも利用可能にする
第3子以降の手当を月1万円から3万円に倍増
低所得の3人以上の子育て世帯への手当増額
育児休業中の給付金増額
子育て支援に関する費用を広く公平に負担する新たな「子育て支援基金」を創設
しかし、日本の財政健全性が先進国最悪であり、急速な高齢化に伴う社会保障費の膨張もあり、対策の実現は容易ではありません。
少子化の現状
14歳以下の子供の人口は43年連続で減少し、2023年4月1日時点で約1401万人と過去最少を更新
総人口に占める子供の割合は11.3%と、過去最低を記録
2022年の出生数は80万人を割り込み、1973年の第2次ベビーブーム時の約209万人から大幅に減少
影響
少子化による労働力不足が深刻化
高齢化に伴う医療・社会保障費の増大
経済成長への悪影響が懸念
少子高齢化は、労働力人口の減少を通じて、経済成長の制約要因となります。労働力人口とは、生産活動に従事する15歳以上の人口を指します。少子高齢化により労働力人口が減少すると、経済の供給能力が低下し、成長の鈍化につながります。また、高齢者人口の増加は、社会保障費の増大を招き、財政の悪化要因ともなります。
少子高齢化への対応としては、出生率の向上に向けた子育て支援策の拡充や、高齢者の就労促進などが求められます。また、女性や高齢者、外国人材など多様な人材の活躍を促進し、労働参加率を高めることも重要な課題です。
日本の人口は2008年をピークに減少に転じ、2022年時点で1億2500万人を下回りました。この傾向が続けば、日本の人口は2100年までに2022年の半分の6300万人にまで減少すると予測されています。
人口減少と少子高齢化の背景には、子供を持つ経済的コストの高さや、結婚・出産に対する価値観の変化などがあります。人口減少は日本のGDPの減少につながりますが、定年延長による高齢者の労働参加の促進や、女性の労働参加の増加などで、この傾向を緩和することは可能です。しかし、これらの対策だけでは、根本的な労働人口の減少問題を解決することはできません。
グローバル化の影響
グローバル化とは、国境を越えた経済活動の拡大を指します。貿易や投資の自由化、交通・通信技術の発達などを背景に、ヒト・モノ・カネ・情報の国際的な移動が活発化しています。日本経済も、グローバル化の影響を大きく受けています。
グローバル化は、国際分業の深化を通じて、経済の効率性を高める一方、国内産業の空洞化や所得格差の拡大などの課題をもたらします。国際分業とは、各国が比較優位のある財やサービスに特化し、貿易を通じて分業する仕組みです。日本は、高度な技術力を背景に、機械や電子部品などの分野で強みを発揮してきました。しかし、新興国の追い上げや、国際競争の激化により、国内生産の縮小や雇用の喪失などの影響も生じています。
企業の海外進出の拡大
日本企業が電気機械や繊維産業を中心にアジアNIESやASEANへ生産拠点を移したことで、国内の雇用と所得が減少した。現在は中国を中心とした東アジア全体に進出し、日本の産業構造が変化している。
既存産業の衰退
家電や繊維などの既存産業が衰退し、地域の中小企業が倒産するなど、地域経済に大きな影響を与えている。
ハングリー精神の低下
厳しい状況を乗り越えようとする意欲が失われ、産業の空洞化が進んでいる。
地方中小都市の産業基盤の弱体化
地方の中小都市では産業基盤が弱体化し、少子高齢化が進んでいる。過疎問題も農山村から地方中小都市へと広がっている。
制度の空洞化
グローバル化の名の下に、日本の産業経済社会を支えてきた重要な制度が崩壊しつつある。
グローバル化への対応としては、国際競争力の強化が不可欠です。イノベーションの促進や、高付加価値分野への特化、人的資本への投資などを通じて、競争優位を確保することが求められます。同時に、グローバル化の負の影響を緩和するための政策も重要です。社会保障制度の充実や、雇用のセーフティネットの整備、教育訓練の強化などを通じて、グローバル化に伴う雇用や所得の不安定性に対処する必要があります。
日本の技術力は、製品への応用力や製造能力の面で世界をリードしてきました。一方、米国は基礎研究や革新的な技術開発で優位性を持っています。日本企業は市場ニーズを重視した漸進的な技術開発を得意としており、これが経済的な成功につながってきました。
しかし、1980年代後半以降、日米の生産性格差は縮小し、技術競争が安定化しました。その後の円高や賃金コストの変動の方が、価格競争力に大きな影響を与えています。
また、日本の産業政策は、高い貯蓄率と投資率を背景に一定の成果を上げてきましたが、その独自の貢献度は明確ではありません。
デフレーションの長期化
デフレーションとは、物価の持続的な下落が続く状態を指します。日本経済は、1990年代後半以降、デフレーションに苦しんできました。デフレーションは、需要の低迷や企業収益の悪化を通じて、経済活動を抑制する効果があります。
デフレーションの背景には、需給ギャップの存在があります。需給ギャップとは、総需要と総供給の乖離を指します。バブル崩壊後の日本経済は、設備や雇用の過剰感が強く、需要不足の状態が続きました。こうした需給ギャップは、価格の下落圧力となり、デフレーションを長期化させる要因となりました。
デフレーションは、実質金利の上昇を通じて、投資や消費を抑制します。実質金利とは、名目金利から物価上昇率を差し引いたものです。物価が下落するデフレ下では、実質金利が上昇し、借り手の実質的な負担が増加します。その結果、投資や消費が抑制され、経済活動が停滞することになります。
デフレ脱却に向けては、金融政策と財政政策の両面からの取り組みが求められます。日本銀行は、量的・質的金融緩和政策を導入し、マネーの供給量を拡大することで、デフレ脱却を目指してきました。また、政府は、積極的な財政支出を通じて、需要の喚起を図ってきました。しかし、構造的な需給ギャップの解消には、イノベーションや生産性の向上を通じた経済の体質強化も不可欠だと考えられます。
企業への影響
物価の持続的な下落は、実質金利の高止まりを意味し、企業の期待成長率を実質金利が上回るため、新たな設備投資を抑制することにつながる
新規の設備投資の減少が、個々の企業の生産性の停滞を招き、経済成長にマイナスの影響を与える
雇用への影響
賃金を引き下げることが容易ではないため、企業は正規雇用を抑制し、非正規雇用のウェイトを高めることで人件費を抑制しようとする
非正規雇用者の増加は、不安定な立場に置かれる労働者を増やし、それに伴い消費が減少する
財政への影響
経済活動の停滞による税収の減少がもたらされる
財政健全化への取組が遅れ、政策の機動力が低下し、国民福祉へのマイナスにつながる
デフレが長引くと、財政危機につながる可能性がある
以上が、日本経済の現状と課題についての考察です。日本経済は、経済成長の鈍化、少子高齢化、グローバル化、デフレーションなど、様々な課題に直面しています。これらの課題に立ち向かうためには、イノベーションの促進や人的資本への投資、社会保障制度の改革など、多面的なアプローチが求められます。同時に、成長と分配のバランスにも配慮しつつ、持続可能な経済社会の実現を目指すことが重要だと考えられます。
予想物価上昇率の押し上げと実質金利の低下
量的・質的金融緩和により、予想物価上昇率が上昇するとともに、名目金利がイールドカーブ全体にわたって低下したことから、実質金利が低下しました。
経済・物価の好転
実質金利の低下により、需給ギャップが改善し、経済・物価の好転をもたらしました。物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなりました。
企業の資金調達環境の改善
量的・質的金融緩和の下、緩和的な金融環境が続き、国債や社債、貸出の金利が低下するなど、企業の資金調達環境が良好となりました。企業は資金調達を拡大しています。
デフレマインドの払拭
日本銀行が物価安定目標の早期実現へのコミットメントの下で量的・質的金融緩和を継続することにより、デフレマインドが払拭されつつあります。
ただし、2%の物価安定目標は未だ実現できていません。予想物価上昇率の動向が重要で、原油価格の下落や消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国経済の減速などの外的要因により、実際の物価上昇率が低下したことが要因の一つとなっています。
格差の拡大と要因
所得格差の実態
所得格差とは、個人や世帯の所得の分布状況を指します。日本の所得格差は、1990年代以降、拡大傾向にあると指摘されています。所得格差の指標の一つであるジニ係数は、1990年代以降、上昇傾向にあり、特に1990年代後半から2000年代にかけて、上昇幅が大きくなっています。
ジニ係数とは、所得分布の不平等度を示す指標で、0から1の値をとります。0に近いほど平等、1に近いほど不平等であることを示します。日本のジニ係数は、1990年代半ばには0.3程度でしたが、2000年代半ばには0.35程度まで上昇しました。その後、若干の低下傾向が見られるものの、他の先進国と比べても高い水準にあると言えます。
所得格差の拡大は、貧困の増加や中間層の減少をもたらします。相対的貧困率は、1990年代半ば以降、上昇傾向にあり、特に子どもの貧困率の上昇が顕著です。相対的貧困率とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割ったもの)が全国の中央値の半分に満たない世帯員の割合を指します。子どもの貧困は、教育格差や将来の格差につながる恐れがあり、大きな社会問題となっています。
労働契約は、雇用主と労働者の間で交わされる信頼に基づくものであり、企業が正社員登用を約束した場合、労働者はその期待に基づいて働きます。雇い止めは、この信頼関係を裏切る行為であり、労働者の精神的な負担や不安を増大させる結果となります。
日本の労働契約法第19条には、雇い止めに関する厳格な規定があります。特に、有期契約労働者が5年を超える雇用契約を持つ場合、無期転換権が発生します。この権利を無視して雇い止めを行うことは法的にも問題があります
企業は社会の一員として、倫理的な行動が求められます。雇い止めは、単に個人の問題ではなく、社会全体に影響を及ぼします。特に非正規雇用者が多い日本では、彼らの安定した雇用が社会的な安定にも寄与するため、企業はその責任を果たす必要があります
企業が倫理的に疑問視される行動を取ると、消費者や取引先からの信頼を失う可能性があります。長期的には、ブランド価値の低下や市場競争力の喪失につながりかねません。
雇い止めが常態化すると、従業員間に不安感が広がり、組織全体の士気が低下します。これは生産性にも悪影響を及ぼし、結果として企業の業績にもマイナスとなります。
日本の労働契約法第16条では、「解雇権濫用法理」が適用される場合があります。これは、解雇が社会通念上相当でない場合には無効とされる原則です。
派遣社員は、雇用契約時に「3年後には正社員登用する」という約束を受けている場合、その期待が生じます。この期待を無視して早期に解雇することは、信頼関係を損なう行為です。労働者は、自分のキャリアや生活設計をこの期待に基づいて行動するため、その裏切りは大きな影響を及ぼします。2年11か月で雇い止めは解雇権乱用法理、倫理に反している。
労働契約法第19条では、長期的な雇用関係が形成されている場合、雇い止めが違法とされる可能性があります。特に、複数回の契約更新が行われている場合、この法理が適用されることがあります。したがって、倫理的には労働者の権利を尊重する必要があります
企業は社会的責任(CSR)を果たすべきです。非正規労働者も企業の一員であり、その労働環境や待遇について配慮が求められます。派遣社員を単なるコスト削減手段として扱うことは、企業の倫理観に反します
過去に反復更新された契約
長期間にわたり契約が更新されている場合、労働者は契約が継続されることを期待する合理的理由があります。このため、突然の雇止めは不当と見なされることがあります。
業務内容が正社員と同等
契約社員が正社員と同じ業務を行っている場合、その雇止めは解雇と同視される可能性があります
雇い止めが違法となる具体的なケース
長期の契約更新 期間中に複数回更新されている場合。
業務内容の同等性 正社員と同様の業務を担当している場合。
合理的な期待 労働者が次回も契約更新されることを期待できる状況である場合。
日本のジニ係数が1990年代から2000年代にかけて上昇したことは、この間に所得格差が広がったことを示唆しています。具体的には、高所得者層と低所得者層の間の所得格差が拡大したと考えられます。
所得格差の拡大には、グローバル化の進展や非正規雇用の増加など、様々な要因が関係していると指摘されています。今後、所得再分配政策の強化などにより、所得格差の是正に向けた取り組みが求められるでしょう。
資産格差の現状
資産格差とは、個人や世帯が保有する資産の分布状況を指します。日本の資産格差は、所得格差以上に大きいと指摘されています。日本の家計資産のジニ係数は、0.6程度とかなり高い水準にあります。
資産格差の背景には、高齢化の進展があります。日本では、高齢者世帯ほど資産を多く保有する傾向があり、高齢化の進展とともに資産格差が拡大しています。また、相続による資産の世代間移転も、資産格差の拡大要因の一つです。
資産格差は、経済的な安定性や将来の生活水準に大きな影響を与えます。資産を十分に持たない世帯は、病気や失業などのリスクに脆弱であり、将来の生活設計にも制約が生じます。また、資産格差は、教育格差や住宅格差とも関連しており、格差の固定化や世代間連鎖につながる恐れがあります。
日本の所得100万ドル(約1億1000万円)以上の割合は約0.1%程度と推測されます。
日本の所得税の最高税率は55%で、この税率が適用されるのは所得2,000万円以上の納税者約50万人(全納税者の0.6%)
所得100万ドル(約1億1000万円)は、日本の所得税の最高税率が適用される所得層よりもさらに高額であり、納税者数はさらに少ないと考えられる
日本の所得税の上位0.1%に相当する納税者数は約7万4千人
日本の家計金融資産の約6割が金融資産1,000万円未満となっている
一方、金融資産1億円以上の割合は約1割(約250兆円)に過ぎない
以上より、所得100万ドル(約1億1000万円)以上の割合は0.1%程度と考えられ、また、所得全体に占める割合も1割程度と推測されます。
日本における所得100万ドル(約1億2千万円)以上の富裕層の割合は、以下のように推計されています。
クレディ・スイスのグローバル・ウェルス・レポート2022によると、日本の成人人口に占める純資産100万ドル以上の富裕層の割合は1.2%です。
三菱UFJ信託銀行の調査では、日本の純資産100万ドル(約1億2千万円)以上の富裕層は約330万人で、総人口に占める割合は約3%とされています。
したがって、日本における所得100万ドル(約1億2千万円)以上の超富裕層の割合は、1%台から3%程度と推計されています。一方で、国税庁の調査では、年収800万円以上の給与所得者は全体の9.2%にとどまっており、所得と資産の間には大きな開きがあることがわかります。
所得水準の高い家計ほど金融資産保有額のシェアが増加しています。
一方、日本の相対的貧困率はG7各国の中でも比較的高い水準で推移しています。日本のジニ係数は統計によって結果に差があり、先進国の中では中程度の水準だと言えます。
教育格差の問題
教育格差とは、教育の機会や質の違いが、個人の学力や将来の社会経済的地位に影響を与える状況を指します。日本では、家庭の経済状況と子どもの学力に相関関係があることが指摘されており、教育格差の問題が注目されています。
教育格差の背景には、教育費の負担増があります。日本の高等教育の私費負担割合は、国際的に見ても高い水準にあり、家計の教育費負担は年々増加しています。また、学校外教育(塾や習い事など)の利用も、家庭の経済力によって差が生じています。
教育格差は、子どもの将来の可能性を左右する重大な問題です。教育は、人的資本への投資であり、個人の生産性や収入に大きな影響を与えます。教育格差は、将来の所得格差や社会的地位の格差につながる恐れがあります。
教育格差への対応としては、教育の機会均等の確保が重要です。奨学金制度の拡充や、教育費負担の軽減策などを通じて、家庭の経済状況にかかわらず、子どもたちが質の高い教育を受けられる環境を整備する必要があります。また、学校教育の質の向上や、学校外教育の充実なども求められます。
教育費負担の軽減
経済的に恵まれない家庭の子供たちが高等教育を受ける機会を奪わないよう、以下の政策的支援が求められます。
高等教育の無償化
教育費減免制度の拡充
これにより、経済的な理由で高等教育を断念することのないよう支援する必要があります。
学習支援の強化
学校外教育の利用格差は、家庭の経済力に応じた学力差を生み出し、教育の機会均等を阻害しています。そのため、以下の取り組みが重要です。
学校の教育活動の充実
経済的に恵まれない家庭の子供たちに対する学習支援策の強化
これにより、すべての子供たちが能力と意欲に応じて教育を受けられる機会を確保することができます。
教育の機会均等を実現し、すべての子供たちが能力と意欲に応じて教育を受けられる社会を目指すべきでしょう。経済的な理由で教育を受ける機会が奪われることのないよう、教育費負担の軽減と学習支援の両面から取り組むことが重要です。
地域間格差の深刻化
地域間格差とは、地域間の経済的・社会的な格差を指します。日本では、東京を中心とする大都市圏と地方圏の格差が拡大しており、地域間格差の深刻化が指摘されています。
地域間格差の背景には、産業構造の変化があります。グローバル化の進展に伴い、製造業の海外移転が進み、地方経済の雇用が減少しています。一方、東京などの大都市圏では、サービス産業を中心に雇用が拡大し、経済が成長しています。こうした産業構造の変化が、地域間の経済格差を生み出しています。
地域間格差は、地方の人口流出を加速させ、地域経済の衰退を招く恐れがあります。若者を中心に、雇用機会を求めて地方から大都市圏へ人口が流出することで、地方の人口減少に拍車がかかっています。人口減少は、地域の消費を減退させ、公共サービスの維持も困難にします。
地域間格差への対応としては、地方創生の取り組みが重要です。地域の特性を活かした産業振興や、雇用の創出、定住の促進などを通じて、地方経済の活性化を図る必要があります。また、地方大学の振興や、企業の地方拠点の強化、テレワークの推進など、地方の魅力を高める取り組みも求められます。
製造業の生産拠点が海外に移転し、地方の工場が閉鎖されることで、地方の雇用が減少している。
一方、東京などの大都市圏ではサービス産業が発展し、雇用が拡大している。
製造業の海外移転は、先進国の伝統的な労働集約的産業を中心に進んでおり、これらの産業の生産は開発途上国に移転している。
先進国では、高度技術産業が発展し、研究開発や高度な技術を必要とする産業が都市部に集中する傾向にある。
格差拡大の要因
格差拡大の要因としては、グローバル化、技術革新、非正規雇用の増加などが指摘されています。
グローバル化は、先述の通り、国内産業の空洞化や雇用の喪失を通じて、格差拡大の一因となっています。新興国との競争激化により、製造業を中心に国内生産が縮小し、雇用が減少しています。一方、海外需要の取り込みや高付加価値分野での競争力を持つ企業は、収益を拡大しています。こうしたグローバル化の影響は、企業間や産業間の格差拡大につながっています。
産業空洞化の主な原因
生産コストの削減
人件費の安い国で現地生産をすることで、生産コストを削減できるため。
貿易摩擦の回避
現地生産をすることで、輸出に伴う貿易摩擦を回避できるため。
為替リスクの回避
現地生産をすることで、円高の影響を受けずに済むため。
為替相場のオーバーシュートに伴うヒステリシス(履歴)現象
一時的な為替相場の変動が、長期的な産業空洞化につながる可能性がある。
国内の規制等による高コスト体質
国内の各種規制が、企業の海外進出を促進している面もある。
技術の保護と活用
知的財産権の保護や技術の活用を通じて、模倣を防ぐことが重要です。
技術の継承と強化
基盤技術を磨く、新たな技術開発を促すことで、技術水準を高めることが必要です。
海外進出の積極的推進
海外市場での成長を目指すことで、国内の技術力を高めることができます。
地域の活力維持
地域の産業を支えるための支援策や、地域の活力維持を目的とした政策が必要です。
政府の規制強化
企業の海外進出を制限する規制強化を望む声もありますが、グローバル化の進展に伴い、明確な処方箋は見当たらないとされています。
企業と国民の利益の一致
企業と国民の利益が一致するような政策や対策が必要です。例えば、製造業の維持を通じて国としての経済力を高めることが重要です。
技術革新も、格差拡大の要因の一つです。IT化やAI化などの技術革新は、生産性の向上や新たな付加価値の創出を通じて、経済成長に寄与する一方、労働の代替を進め、雇用の二極化をもたらす側面もあります。高度な技能を持つ人材への需要が高まる一方、中間的な技能を持つ人材の雇用が減少するという傾向が見られます。こうした雇用の二極化は、所得格差の拡大につながる恐れがあります。
AIの機械学習は、学習段階までにおいては著作権法第30条の4に基づいて、原則として合法です。この条文は、著作物を利用する目的が「人間が鑑賞する目的」でない場合に、著作権者の許可なく著作物を利用することを認めます。
著作権法第30条の4では、著作物に表現された思想や感情を自ら享受したり他人に享受させることを目的としない場合に、著作物の利用を認めています。ただし、この規定が適用されるかどうかは、著作物の利用目的や態様によって判断されます。
具体的に、以下のような場合は著作権者の許諾が必要と考えられます
・パロディなど、著作物の表現を利用して新たな表現を創作する場合
・著作物の視聴等を通じて視聴者の知的・精神的欲求を満たすことを目的とする場合
・著作物の市場と競合し、著作権者の利益を害するおそれがある場合
著作権法第30条の4は、著作物を情報解析の用に供する場合、著作権者の利益を不当に害しないのであれば著作権者の許諾なく利用することを学習段階まで認めています。(無断学習後のAI生成については合法と規定されていない)この規定は、AIによる学習のために著作物を読み込むことを含みます。
具体的には、以下のような流れで著作物をAI学習に利用することが可能です
著作物を学習用データとして収集・複製し、学習用データセットを作成
データセットを学習に利用して、AI(学習済みモデル)を開発
ただし、以下の場合は著作権者の許諾が必要となります
・特定の作家の作品のみを学習に使用し、著作権者の利益を不当に害するとき
・情報解析を主たる目的としつつ、表現の享受を目的とする場合も含むとき
また、情報解析用のデータベースの著作物を無許諾で利用できるとすると、既存のライセンス市場を侵害してしまうため、ただし書に該当し、第30条の4の対象外となります。
以上のように、AIによる学習のために著作物を利用する場合、一定の要件の下で著作権者の許諾なく利用できますが、著作権者の利益を不当に害するような場合は、依然として許諾が必要とされています。
つまりAIイラストなど「人間が鑑賞する目的」である場合は著作権者の許諾が必要です
特定の作家の作品のみを学習に使用し、著作権者の利益を不当に害する場合、AI学習は違法となる可能性があります。
著作権法第30条の4は、AI開発のための著作物の学習を原則として適法としていますが、ただし書きで「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は例外とされています。
この「不当に害する」場合の判断基準は、学習に使用する著作物の種類・用途、学習の態様等を考慮し、著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、潜在的市場を阻害するかどうかで判断されます。
特定の作家の作品のみを大量に学習に使用し、「〇〇風イラスト生成AI」や「〇〇風テキスト生成AI」を開発する場合、当該作家に不当な不利益を与えないかの検討が必要とされています。
AIによる生成は人間が真似る場合と比べ桁違いの量のコンテンツを生み出すため、特定作家の作品のみ学習したAIが出力する生成物は既存作品に類似するケースが相対的に高くなります。
したがって、特定の作家の作品のみを大量に学習に使用し、当該作家の著作物の潜在的市場を阻害するような場合は、著作権者の利益を不当に害するとして、AI学習は違法となる可能性が高いと考えられます。
AI生成物が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるものであれば、類似性が認められる。
依拠性について AI生成物の生成・利用プロセスに鑑みた判断が必要。
元の著作物がAIの学習に用いられていれば、依拠性を認めてよいという見解がある。
AI生成物が、学習に用いられた元の著作物の表現と類似していれば、依拠性ありと推定してよく、その後はAI利用者の側が、元の著作物がAI生成物の作成に寄与していないことを立証すべきという見解もある。
「AI利用者自身の独自創作であること」に加えて、「AI自体が学習対象の著作物をそのまま出力するような状態になっていないこと(AIの独自作成であること)」の両方がいえない限りは依拠性ありと考えるべきという見解もある。
著作権法第30条の4はAI無断学習を合法としていますが、AI生成段階、AI生成利用段階での出力が合法かは書かれていません。
AI生成画像の著作権侵害の具体例
既存の著作物を学習データとして使用し、その表現上の本質的特徴を感得できる画像を生成した場合
例えば、人気漫画家の作品を学習データとして使用し、その画風を真似たイラストを販売するようなケースが該当します。
生成AIを通じて、利用者によるプロンプト入力に応じAI画像生成機能を使って、既存著作物に類似した画像を生成した場合
生成AIサービスを提供する事業者が、利用者のプロンプト入力に応じて既存著作物に類似した画像を生成した場合、その事業者に著作権侵害の責任が問われる可能性があります。
AI開発・学習段階で既存著作物を学習していた場合
AI利用者が既存の著作物の表現内容を認識していなくても、開発・学習段階で当該著作物を学習していた場合、通常、依拠性があったと推認され、著作権侵害になりうるとされています。
生成AIサービスに苦情・通報の仕組みが整備されていない場合
権利者が苦情・通報の仕組みを通じて自己の著作権を保護することが困難な場合、著作権侵害のリスクが高まります。
創作性の要件
著作権法では、「著作物」とは「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義されています。このため、著作権が認められるためには、作品に作者の個性や創造的な寄与が必要です。生成AIによって完全に自動生成された作品には、この「創作性」が欠けているとされ、多くの場合、著作物とは見なされません。text to image(t2i)も実質的に自動生成です。image to image(i2i)は依拠性があるため著作権侵害リスクが高いです。
AIイラストのプロンプトでよく使用される有名なアーティスト名 art by WLOP,Greg Rutkowski,Artgerm,Krenz Cuchart,ilya kuvshinov, これらの存命の絵師名をprompt(呪文)として使うのは依拠性があるため著作権侵害、著作権法違反となる。
創作意図がない創作的寄与がないNovelAI/StableDiffusion画像生成AIプロンプト呪文例
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人間の寄与の重要性
生成AIを用いて作品を制作する際、人間がプロンプトを入力することがあります。このプロンプトが「創作的寄与」と認められる場合、その人間に著作権が帰属する可能性があります。しかし、プロンプトの入力だけでは不十分であり、実質的な創造的貢献が求められます。例えば、プロンプトを600回以上入力しても、創作的寄与が不足していると判断されれば、著作権は認められないという事例もあります。
Midjourneyは、プロンプトを受け取って画像を生成するシステムですが、そのプロセスは人間の指示を単なる入力として扱うため、結果として生成された作品には人間の創造性が反映されていないと見なされました。
米国著作権局がAI画像生成ツール「Midjourney」によって生成された作品の著作権登録を拒否
AIによる学習と著作権侵害
AIは既存の著作物から学習し、それを基に新たな作品を生成します。この過程で、他者の著作物を無断で使用することがあり、LoRAの使用や自称マージモデル、海賊版リークモデルの使用はさらに著作権侵害のリスクを高めます。特に、学習データとして使用された作品との類似性や依拠性が問題視されます。もし生成物が既存の作品と酷似している場合、原作者から訴えられる可能性があります。
法的枠組みの必要性
現在、生成AIによる作品の著作権については明確な法的基準が存在しません。文化庁や法律専門家は、この問題に対する議論を進めており、新たな法的枠組みの整備が求められています
非正規雇用の増加も、格差拡大の大きな要因です。非正規雇用とは、パートタイム労働者や派遣労働者、契約社員などを指します。日本では、1990年代以降、非正規雇用が大幅に増加しており、2020年には雇用者の38%を占めるに至っています。非正規雇用は、正規雇用と比べて賃金が低く、雇用が不安定であるため、所得格差や雇用格差の拡大につながっています。
また、日本特有の要因として、終身雇用・年功序列型の雇用慣行の変化も指摘されています。バブル崩壊後、多くの企業が終身雇用を見直し、成果主義的な賃金体系を導入しました。こうした変化は、企業内の賃金格差を拡大させる要因となっています。
格差拡大は、社会の分断や格差の固定化を招く恐れがあります。格差問題への対応は、持続可能で包摂的な社会の実現に向けた重要な課題だと言えます。教育の機会均等の確保や、セーフティネットの強化、雇用の安定化など、多面的な取り組みが求められます。同時に、成長と分配のバランスを取りながら、格差の是正を図っていくことが重要だと考えられます。
年功賃金は、ハイリスクハイリターンを志向する若手人材のニーズに応えられないばかりでなく、急速な技術革新により、労働能力と賃金のより一層の乖離が予想され、制度としての経済的合理性を失ってしまいます。
そのため、今後は仕事・成果と連動した役割給や業績給、さらには業績や成果と賃金の収支バランスがとれている年俸制などがこれまで以上に導入されていくものと思われます。しかし、その場合でも若年層の雇用の流動化や社員の高齢化による人件費負担の増加への対応が課題となります。
以上が、格差の拡大と要因についての考察です。格差問題は複雑な要因が絡み合っており、簡単に解決できる問題ではありません。しかし、格差の拡大は社会の持続可能性を脅かす深刻な問題であり、早急な対応が求められます。政府や企業、そして私たちが、格差是正に向けて取り組んでいくことが大切だと言えるでしょう。
個人間の所得格差拡大の要因
非正規労働者の給与所得は所得分布の下層に集中している。
非正規労働者の時間当たり賃金率が正規労働者に比べて大きく低いこと、さらに時間当たり賃金率が低い者ほど労働時間が短い傾向にあることが、給与所得の格差拡大を助長している。
フルタイム労働者のみでジニ係数を算出すると31%程度だが、パートタイム労働者を加えると38%程度と7ポイント上昇する。
世帯間の所得格差への影響
一方で、世帯間の所得格差への影響は必ずしも大きくない。
非正規労働者が正規労働者と生計を共にし家計を補助する場合は、むしろ世帯間格差を縮小させる。
しかし、非正規労働者が家計の主たる稼ぎ手の場合は低所得に陥りやすく、ワーキングプアとなる確率が高い。
また、日本では正規と非正規の賃金格差が大きいため、非正規雇用の賃金が上がれば世帯間格差をさらに縮小できる可能性がある。
貧困問題の実態と影響
相対的貧困率の推移
相対的貧困率は、先進国における貧困の度合いを測る指標として広く用いられています。相対的貧困率は、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割ったもの)が全国の中央値の半分に満たない世帯員の割合を指します。つまり、相対的貧困率は、社会の中で相対的に所得が低い状態にある人々の割合を示しています。
日本の相対的貧困率は1990年代半ば以降、上昇傾向にあります。2012年には16.1%に達し、その後若干の低下傾向が見られるものの、15%前後の高い水準で推移しています。
特に、子どもの相対的貧困率の上昇が顕著であり、2012年には16.3%に達しました。これは、OECD加盟国の中でも高い水準です。
2018年の調査では、相対的貧困率は15.4%、子どもの貧困率は13.5%となっています。
相対的貧困率の上昇は、所得格差の拡大を反映しています。グローバル化や技術革新、非正規雇用の増加などを背景に、低所得層の所得が伸び悩む一方、高所得層の所得が増加するという傾向が見られます。その結果、相対的に所得が低い状態にある人々の割合が増加しているのです。
子どもの貧困問題
子どもの貧困は、日本における深刻な社会問題の一つです。子どもの貧困は、教育格差や健康格差、将来の貧困リスクにつながるため、早急な対応が求められています。
子どもの貧困の背景には、ひとり親世帯の増加があります。日本のひとり親世帯の相対的貧困率は50%を超えており、OECD加盟国の中で最も高い水準にあります。ひとり親世帯は、生活費や教育費の負担が重く、貧困に陥るリスクが高いと言えます。
また、共働き世帯の増加も、子どもの貧困問題に影響を与えています。共働き世帯の場合、保育サービスや放課後の居場所の確保が課題となります。特に、低所得の共働き世帯では、十分な保育サービスを受けられない場合があり、子どもの教育や成長に影響を及ぼす恐れがあります。
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