第二次世界大戦後、日本の教育システムは、アメリカの影響を強く受けました。
1947年に施行された学校教育法では、英語が中学校と高校の教科に加えられ、アメリカ式の教育方針が導入されました。当時の英語教育は、アメリカ文化の理解と普及を目的としており、言語の実用性よりも文化的な側面が重視されていました。
また、1960年代以降、日本の英語教育は、大学入試を中心とした受験英語に偏重する傾向が強まりました。この傾向は、アメリカの教育システムとは異なる日本独自の発展であると言えます。受験英語では、読解力や文法知識が重視され、コミュニケーション能力の育成は二の次となる傾向がありました。
1980年代以降、アメリカを中心とした英語圏諸国では、コミュニケーション中心の英語教育が主流となりました。この変化に対応して、
日本の英語教育も、1989年の学習指導要領の改訂で、「コミュニケーション能力の育成」が目標に掲げられるようになりました。
しかし、この改革は十分な成果を上げているとは言えません。日本の英語教育は、依然として受験英語の影響が強く、コミュニケーション能力の育成が不十分だと指摘されています。また、日本人英語教師の多くは、アメリカ式のコミュニケーション中心の教授法に十分に適応できていないという問題もあります。
確かに、戦後の英語教育はアメリカの影響を受けましたが、その後の日本の英語教育の発展は、日本独自の要因が大きく作用しています。
むしろ、日本の英語教育の問題点は、アメリカ式の教育方針を十分に取り入れることができなかったことにあると考えられます。コミュニケーション中心の英語教育を実現するためには、教育システムの改革だけでなく、教師の意識改革や指導力の向上が必要です。
また、日本の社会や文化の特性も、英語教育の在り方に影響を与えています。日本は言語的に均一な社会であり、英語を使用する必然性が低いと言われています。このような環境では、英語学習に対する動機づけが弱くなる傾向があります。
したがって、日本の英語教育の問題点は、アメリカの影響だけでなく、日本の教育システム、社会、文化など、多様な要因が複雑に絡み合った結果であると言えます。これらの要因を総合的に考慮し、日本の実情に合った英語教育の在り方を探ることが重要です。
具体的には、以下のような取り組みが求められると考えられます。
コミュニケーション中心の教授法の導入と定着
教師の英語運用能力の向上と指導力の強化
入試制度の改革と、実用英語能力の評価の重視
英語学習に対する社会的な動機づけの向上
英語使用の機会の拡大と、実際の言語使用場面との連携
このようなアプローチを通じて、日本の英語教育の質を高めていくことが必要です。アメリカの影響を一方的に批判するのではなく、日本の実情に合った英語教育の在り方を模索することが重要だと言えるでしょう。
日本の英語教育の改善には、長期的な視点と継続的な努力が必要です。教育現場、社会、個人のそれぞれのレベルで、英語教育の重要性に対する認識を高め、具体的な行動を起こしていくことが求められます。そのためには、英語教育に関する活発な議論と、関係者の協力が必要です。
日本の英語教育の在り方を見直し、改善していくことは、グローバル化が進展する現代社会において、日本人の国際競争力を高める上で重要な課題であると言えるでしょう。
教育制度の問題点
受験重視の英語教育
日本の英語教育は、長年にわたって受験対策に偏重してきたと指摘されています。中学校や高校での英語の授業は、大学入試に備えるための知識習得に多くの時間が割かれており、実践的なコミュニケーション能力の育成が疎かにされている傾向があります。
この背景には、大学入試における英語の出題形式があります。多くの大学の入試問題では、長文読解や文法・語法問題が中心となっており、リスニングやスピーキングの比重は低くなっています。そのため、学校教育では、読解力や文法知識の習得に力点が置かれ、会話練習などの実践的な活動は後回しにされがちなのです。
この傾向は、「受験英語」と呼ばれ、批判の的となってきました。受験英語では、複雑な文法規則や、日常会話ではあまり使われない古風な表現なども重視されます。例えば、「関係代名詞の非制限用法」や「仮定法過去完了」など、高度な文法事項が出題されることがあります。
確かに、これらの知識は英語の理解を深める上で重要ですが、実際のコミュニケーションでは、それほど頻繁に用いられるものではありません。むしろ、自分の意思を伝えたり、相手の意図を汲み取ったりするための実践的な運用能力の方が、より重要だと言えるでしょう。
しかし、受験英語に偏重した教育では、そうした実践的な能力の育成が疎かになってしまいます。生徒は、受験に必要な知識は身につけても、実際に英語を使う機会が少ないため、習得した知識を活用する力が育ちにくいのです。
さらに、受験英語は、英語に対する学習意欲にも影響を与えています。文法規則の暗記や、長文読解の演習ばかりでは、英語学習の面白さや意義を感じにくくなります。「英語は受験のための科目」という意識が強くなり、英語を使ってコミュニケーションを楽しむという本来の目的が見失われてしまうのです。
加えて、受験英語は、英語の多様性への理解を妨げる側面もあります。入試問題では、アメリカやイギリスの標準的な英語が重視される傾向があります。しかし、実際の世界では、様々な国や地域の英語が使われており、それぞれに特色があります。英語を国際共通語として捉える際には、こうした多様性を理解することが重要ですが、受験英語ではそうした視点が欠けがちです。
では、どのように英語教育を改善していけばよいのでしょうか。
まず重要なのは、大学入試における英語の出題形式の見直しです。読解力や文法知識だけでなく、リスニングやスピーキングの能力も適切に評価できるような試験を導入することが求められます。そうすることで、学校教育でも、より実践的なコミュニケーション能力の育成に力を入れるようになるでしょう。
また、授業方法の工夫も大切です。文法規則の説明や読解演習だけでなく、ペアワークやグループディスカッションなど、生徒が主体的に英語を使う活動を取り入れることが効果的です。その際、生徒の間違いを恐れずに、積極的に英語を使うことを奨励することが重要です。
教材の選定も重要な観点です。受験対策に特化した教材だけでなく、生徒の興味関心に合った、実践的なコミュニケーションを重視した教材を活用することが望まれます。また、様々な英語の変種に触れる機会を設けることで、英語の多様性への理解を深めることもできるでしょう。
さらに、英語教育の目的を再考することも必要です。英語を単なる受験科目としてではなく、グローバル社会で必要とされるコミュニケーションツールとして位置づけることが大切です。そのためには、学校教育だけでなく、社会全体で英語学習の意義を共有し、実践的な英語力の重要性を認識することが求められます。
加えて、教員の指導力向上も欠かせません。英語教員自身が、実践的なコミュニケーション能力を身につけ、効果的な指導方法を習得することが重要です。教員養成や研修の充実により、受験英語から脱却した、より実践的な英語教育を推進することができるでしょう。
指導方法の問題
日本の英語教育では、指導方法にも問題があると指摘されています。多くの学校では、教師主導の一斉授業が中心であり、生徒の能動的な参加を促す指導が不足しているのが実情です。
例えば、英語の授業では、教師が文法規則を説明し、生徒はそれを聞いてノートを取るという、受動的な学習スタイルが一般的です。また、教科書の訳読に多くの時間が割かれ、生徒が英語を実際に使う機会が限られているのも問題点だと言えます。
日本の多くの学校では、英語の授業は教師主導の一斉授業が中心となっています。つまり、教師が前で説明や指示を行い、生徒はそれを聞いて理解するという受動的な学習スタイルが主流なのです。
例えば、英文法の指導では、教師が文法規則を説明し、例文を提示します。生徒は、教師の説明を聞きながらノートを取り、例文を書き写すことが一般的です。この方式では、生徒は文法知識を一方的に与えられるだけで、自ら考えたり、疑問を持ったりする機会が少なくなります。
また、読解指導では、教科書の英文を一文ずつ訳読していくことが多く行われます。教師が英文を読み、日本語訳を説明し、生徒はそれを聞いて理解するという流れが一般的です。この方法では、生徒は英文の意味は理解できても、英語を実際に使う機会が限られてしまいます。
こうした教師主導の一斉授業では、生徒の能動的な参加が促されにくいという問題があります。生徒は受け身の姿勢で授業に臨むことになり、英語を使って自分の思考を表現したり、他者とコミュニケーションを取ったりする経験が不足しがちです。
また、一斉授業では、個々の生徒の理解度や学習スピードに合わせた指導が難しくなります。教師は、クラス全体に合わせた説明を行うため、理解の遅い生徒は置いていかれ、早い生徒は物足りなさを感じることになります。
さらに、教師主導の指導では、英語を実際のコミュニケーションで使う機会が限られてしまいます。文法規則や語彙の知識は身につけても、それを実際の場面で活用する練習が不足しているのです。その結果、知識はあっても、実際に英語を話すことへの抵抗感が強くなったり、聞き取りが難しかったりするという問題が生じます。
加えて、教科書中心の指導も問題点として指摘されています。多くの学校では、教科書に沿って授業が進められ、教科書以外の教材があまり使われません。教科書の英文は、学習項目を効率的に学ぶために作られたものが多く、必ずしも実際の言語使用を反映したものではありません。教科書だけでは、生きた英語に触れる機会が限られてしまうのです。
では、これらの問題を解決するためには、どのような指導方法が求められるのでしょうか。
まず重要なのは、生徒の能動的な参加を促す指導方法の導入です。例えば、ペアワークやグループワークを取り入れ、生徒同士が英語で話し合う機会を設けることが効果的です。教師は、生徒の活動を促進し、サポートする役割を担います。こうした活動を通じて、生徒は英語を実際に使う経験を積み、コミュニケーション能力を高めていくことができるでしょう。
また、個々の生徒の理解度に合わせた指導も大切です。習熟度別クラス編成や、少人数指導など、生徒の能力や学習スピードに応じた指導方法を取り入れることが求められます。ICTの活用などにより、個別最適化された学習環境を提供することも可能になりつつあります。
さらに、教科書以外の教材の活用も重要です。実際の言語使用を反映した、オーセンティックな教材を取り入れることで、生きた英語に触れる機会を増やすことができます。新聞記事やニュース番組、映画やドラマなど、様々な素材を活用することが考えられます。
加えて、教師の役割も見直す必要があります。教師は、知識の伝達者ではなく、学習のファシリテーターとしての役割を担うことが求められます。生徒の主体的な学びを引き出し、サポートすることが重要です。そのためには、教師自身が柔軟な発想を持ち、新しい指導方法を取り入れる姿勢が必要不可欠です。
英語教育の改善には、指導方法の転換だけでなく、教師の意識改革も欠かせません。教師は、自らの指導を振り返り、改善していく姿勢を持つことが大切です。また、教師間の連携を強化し、優れた指導実践を共有していくことも重要でしょう。
こうした指導方法では、生徒は英語を「知識」として習得することはできても、実際に使う力を身につけることは難しくなります。言語の習得には、多くのインプットとアウトプットが不可欠であり、生徒が主体的に英語を使う機会を増やすことが重要だと考えられています。
近年では、コミュニケーション重視の指導法や、アクティブ・ラーニングの手法を取り入れる学校も増えつつあります。しかし、大学入試の影響力が強い中で、抜本的な指導法の改革は容易ではないのが実情です。
教師の英語力不足
日本の英語教育が抱える問題点として、教師の英語力不足も指摘されています。文部科学省の調査によると、中学校の英語教師の約30%、高校の英語教師の約40%が、自身の英語力に不安を感じていることが明らかになっています。
教師自身が英語を流暢に話せなければ、生徒にコミュニケーション能力を効果的に指導することは難しくなります。発音やイントネーションの指導も不十分になりがちです。また、教師が英語を使うことに自信を持てない場合、授業では日本語を多用してしまう傾向があります。
教師の英語力不足は、指導法の問題とも関連しています。文法訳読式の指導であれば、教師自身が流暢に英語を話せなくても、授業を行うことができます。しかし、コミュニケーション重視の指導を行うためには、教師自身の高い英語運用能力が求められるのです。
教師の英語力向上に向けては、研修制度の充実や、資格要件の見直しなどが求められています。また、ALT(外国語指導助手)の活用など、ネイティブスピーカーとの協働による指導体制の強化も重要だと考えられています。
社会環境の問題点
英語使用の機会の少なさ
日本人の英語習得を難しくしている要因の一つは、日常生活における英語使用の機会の少なさです。日本は、言語的に非常に同質的な社会であり、日常的に英語を使う必要性が低いのが実情です。
多くの日本人にとって、英語は学校の授業で学ぶ「教科」の一つに過ぎません。日常生活の中で英語を使う機会はほとんどなく、英語を実践的に使う必要性を感じる場面が限られているのです。
このような環境では、学校で学んだ英語の知識を実際のコミュニケーションに活かすことが難しくなります。言語の習得には、繰り返しの練習と実践が必要ですが、英語を使う機会が限られていては、習得した知識を定着させることが困難なのです。
近年では、グローバル化の進展に伴い、ビジネスの場面での英語使用は増えつつあります。しかし、一般の日本人にとって、日常的に英語を使う環境は依然として限定的だと言えるでしょう。
日本は、世界で最も言語的に均質な国の一つだと言われています。日本国内では、ほとんどの人が日本語を母語としており、日常生活のあらゆる場面で日本語が使用されています。店舗での会話、テレビ番組、街頭の看板など、日本語以外の言語に触れる機会は非常に限られているのが実情です。
このような言語環境では、英語を使う必要性や切実感が生まれにくくなります。多くの日本人にとって、英語は学校の授業で学ぶ「科目」の一つに過ぎないのです。英語を使わなくても日常生活に支障がないため、英語学習へのモチベーションを維持することが難しくなります。
また、日本の英語教育では、読解や文法に重点が置かれ、スピーキングやリスニングの練習が不足しがちです。その結果、英語を「使う」ことよりも、英語について「知る」ことに主眼が置かれてしまいます。しかし、言語の習得には、実際のコミュニケーションを通じた練習が欠かせません。
英語を使う機会が限られていることで、学校で学んだ知識を実践に移す経験が不足します。例えば、英語の授業で習った表現を、実際の会話の中で使ってみる。そうした経験の積み重ねが、言語の定着には重要ですが、日本の言語環境ではそれが難しいのです。
加えて、日本社会では、英語を使うことへの心理的障壁も存在します。完璧を求める傾向が強い日本の文化では、間違いを恐れて英語を話すことをためらう人が少なくありません。ネイティブスピーカーのような発音や流暢さを求めるあまり、コミュニケーションそのものが疎かになってしまうのです。
ただし、近年では、グローバル化の進展に伴い、英語を使う機会は徐々に増えつつあります。特にビジネスの場面では、国際的なコミュニケーションの必要性から、英語の重要性が高まっています。多国籍企業の日本法人や、海外との取引を行う企業では、社内の公用語として英語を採用するケースも見られます。
また、観光業の分野でも、訪日外国人の増加に伴い、英語対応の必要性が高まっています。ホテルや飲食店、観光スポットなどでは、英語を話せるスタッフの需要が増えつつあります。
しかし、こうした変化は、まだ一部の業界や地域に限定的であり、一般の日本人の日常生活では、英語を使う機会は依然として限られているのが実情です。
では、こうした状況を改善するためには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。
まず重要なのは、学校教育における実践的な英語教育の充実です。読解や文法の知識だけでなく、実際のコミュニケーションを重視した指導を行うことが求められます。スピーキングやリスニングの練習を増やし、生徒が英語を「使う」経験を積む機会を設けることが大切です。
また、学校外でも英語に触れる機会を増やすことが重要です。英語の書籍や雑誌、映画やドラマなど、オーセンティックな英語の教材に触れることで、生きた英語を体感することができます。インターネットの普及により、こうした教材へのアクセスは格段に容易になっています。
地域社会レベルでの取り組みも有効でしょう。例えば、英語を使用する機会を提供するイベントの開催や、外国人との交流の場の設定など、英語を使う環境を意図的に作り出すことが考えられます。また、自治体や企業と連携し、実際の仕事の場面で英語を使う機会を提供するインターンシップなどのプログラムも有効かもしれません。
英語を使うことへの心理的障壁を取り除き、間違いを恐れずにコミュニケーションを図ろうとする姿勢が大切です。完璧を求めるのではなく、伝えようとする意欲を大切にすることが、英語習得の第一歩となるでしょう。
日本人の英語習得を困難にしている日常的な英語使用機会の少なさは、簡単には解決できない問題です。しかし、学校教育、社会環境、個人の意識など、様々なレベルでの取り組みを積み重ねることで、少しずつ状況を改善していくことは可能だと考えられます。
英語に対する意識の問題
日本人の英語習得を阻む要因として、英語に対する意識の問題も指摘されています。日本社会では、英語を「外国語」ととらえる意識が根強く、英語を使うことに対する心理的な障壁が存在するのです。
例えば、日本人は、英語を話す際に、完璧な文法や発音を求める傾向があります。間違いを恐れるあまり、積極的に英語を使おうとしない人が少なくないのが実情です。また、日本人同士が英語を使うことに対して、違和感を覚える人も多いと言われています。
こうした意識の問題は、英語教育にも影響を及ぼしています。学校教育では、正確さを重視するあまり、コミュニケーションの流暢さが軽視される傾向があります。その結果、生徒は英語を使うことに自信を持てず、積極的にコミュニケーションを図ろうとしないのです。
英語に対する意識を変えていくためには、英語を「コミュニケーションのツール」としてとらえる視点が重要です。完璧を求めるのではなく、伝えたいことを何とか表現しようとする姿勢が必要だと言えるでしょう。また、学校教育においても、間違いを恐れずに英語を使うことを奨励し、コミュニケーションの楽しさを実感できる指導が求められています。
メディア環境の影響
日本の英語習得の難しさには、メディア環境の影響も指摘されています。日本では、海外の映画やテレビ番組、音楽などのコンテンツの多くが、日本語に吹き替えられるか、字幕が付けられて提供されています。そのため、日常的に英語に触れる機会が限られているのが実情です。
これに対し、欧州諸国では、海外のコンテンツを字幕付きで放映することが一般的です。オランダやスウェーデンなど、英語教育で高い成果を上げている国々では、子どもの頃から英語に触れる環境が整っており、自然な形で英語の習得が進むと言われています。
また、インターネットの普及により、世界中の情報に簡単にアクセスできるようになりました。しかし、日本語のコンテンツが充実している日本では、インターネットを通じて英語に触れる機会も限定的だと指摘されています。
メディア環境の影響は、短期的には改善が難しい問題かもしれません。しかし、英語字幕付きのコンテンツを増やしたり、学校教育の中で英語のコンテンツを積極的に活用したりするなど、工夫の余地はあると考えられます。英語に触れる機会を増やすことは、英語習得の重要な鍵の一つだと言えるでしょう。
言語的特性の問題点
言語構造の違い
日本人にとって英語習得が難しい理由の一つは、日本語と英語の言語構造の違いにあります。日本語は、英語とは大きく異なる文法体系を持つ言語であり、その違いが英語習得の障壁となっているのです。
例えば、日本語は「主語-目的語-動詞」の語順を取るのに対し、英語は「主語-動詞-目的語」の語順が基本です。また、日本語には冠詞や前置詞がなく、語尾変化も少ないのに対し、英語ではこれらの文法要素が重要な役割を果たしています。
このような言語構造の違いは、日本人が英語を学ぶ際の大きな障壁となります。日本語の文法体系に慣れ親しんだ日本人にとって、英語の文法規則は非常に複雑で習得が難しく感じられるのです。
また、日本語は主語を省略することが多い言語ですが、英語では主語を明示することが原則です。このような違いも、日本人が英語を使う際の問題点として指摘されています。
言語構造の違いを克服するためには、体系的な文法指導と多くの練習が必要です。単に文法規則を暗記するのではなく、実際の文脈の中で文法を理解し、使えるようになることが重要だと考えられています。
発音の難しさ
日本人にとって英語習得が難しい理由の一つは、発音の問題です。日本語と英語では、音韻体系が大きく異なっており、日本人が英語の発音を習得するのは容易ではありません。
例えば、日本語には、英語の「l」と「r」の区別がありません。そのため、日本人は「light」と「right」の発音を区別するのが苦手だと言われています。また、日本語は子音で終わる音節が少ないのに対し、英語は子音で終わる音節が多いという違いもあります。
このような発音の違いは、日本人が英語を話す際の大きな障害となります。発音が不正確だと、相手に伝わりにくくなるだけでなく、自信を持って英語を使うことも難しくなるのです。
発音の習得には、早期からの訓練が重要だと考えられています。母語の音韻体系が確立する前の段階から、英語の音に触れることで、自然な発音の習得が期待できます。また、学校教育においても、発音指導を重視し、ネイティブスピーカーの音声に多く触れる機会を提供することが求められています。
語彙の問題
日本人の英語習得を難しくしている要因の一つは、語彙の問題です。英語は、日本語とは異なる語彙体系を持つ言語であり、その習得には多大な努力が必要とされます。
特に、英語の語彙は非常に膨大であり、日常会話で使われる語彙だけでも数万語に上ると言われています。また、同じ単語でも、文脈によって意味が異なるなど、語彙の使い分けも複雑です。
日本の英語教育では、学習指導要領に基づいて語彙指導が行われていますが、その範囲は限定的だと指摘されています。大学入試では、難解な語彙が出題されることも多く、受験のための語彙学習に偏重する傾向があるのです。
このような状況では、実際のコミュニケーションで必要とされる語彙の習得が疎かになりがちです。日常会話で使われる口語表現や、専門分野の語彙など、幅広い語彙の習得が求められているのが実情です。
英語と日本語は、語彙の体系が大きく異なる言語です。英語は屈折語に分類され、語根に接辞を付け加えることで意味や品詞を変化させる言語です。一方、日本語は膠着語と言われ、語と語を組み合わせることで意味を作り出す言語です。このような言語構造の違いが、日本人にとって英語の語彙習得を難しくしている一因と言えます。
また、英語の語彙数は非常に多く、正確な数は定かではありませんが、オックスフォード英語辞典には約60万語が収録されています。もちろん、これらすべての語彙を習得する必要はありませんが、日常会話で使われる語彙だけでも、2万語から3万語に上ると言われています。
これは、日本語の語彙数と比べても非常に多い数字です。日本語の語彙数は、常用漢字が約2000字、ひらがなとカタカナを合わせて約100文字程度です。これらを組み合わせることで、日常会話に必要な語彙はカバーできると言われています。
英語の語彙習得を難しくしているもう一つの要因は、同じ単語が文脈によって異なる意味を持つことです。例えば、”run”という動詞は、「走る」という基本的な意味の他に、「経営する」「出馬する」「液体が流れる」など、多様な意味を持ちます。このような語義の多様性は、英語学習者にとって大きな障壁となります。
加えて、英語には多くのイディオムや慣用表現があり、その意味は個々の単語の意味からは推測できないことが多いです。例えば、”kick the bucket”は直訳すると「バケツを蹴る」ですが、実際の意味は「死ぬ」です。このような表現は、文化的背景を理解していないと適切に使うことが難しいのです。
日本の英語教育では、学習指導要領に基づいて語彙指導が行われています。中学校では1200語程度、高校では3000語程度の語彙を習得することが目標とされています。しかし、この語彙数は、実際のコミュニケーションで必要とされる語彙数と比べると不十分だと指摘されています。
また、大学入試では、難解な語彙が出題されることが多く、受験生は膨大な量の語彙を覚える必要に迫られます。しかし、これらの語彙の多くは、日常会話ではあまり使われないものが多いのです。受験のための語彙学習に偏重することで、実際のコミュニケーションで必要とされる語彙の習得が疎かになってしまうのです。
実際のコミュニケーションで必要とされる語彙としては、日常会話で使われる口語表現や、専門分野の語彙などが挙げられます。しかし、これらの語彙は、学校の英語教育では十分に扱われていないのが実情です。
例えば、日常会話では、”wanna”(want toの口語表現)や”gonna”(going toの口語表現)などの略語が頻繁に使われます。また、”thing”や”stuff”のように、あいまいな意味を持つ語も多用されます。これらの表現は、教科書の英語では扱われることが少ないのです。
また、専門分野の語彙は、大学での学習や仕事で必要とされることが多いですが、一般的な英語教育ではあまり扱われません。例えば、医学や工学などの分野では、専門用語の理解が不可欠ですが、これらの語彙を体系的に学ぶ機会は限られています。
では、これらの問題を解決するためには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。
まず重要なのは、学校教育における語彙指導の改善です。現行の学習指導要領の語彙数では、実際のコミュニケーションに必要な語彙を十分にカバーできていません。学習する語彙数を増やすとともに、より実践的な語彙の選定が求められます。
また、語彙指導の方法も工夫する必要があります。単語の丸暗記ではなく、文脈の中で語彙を理解し、使う練習を取り入れることが大切です。例えば、多読学習や、オーセンティックな教材を使ったアクティビティなどが効果的だと考えられます。
加えて、専門分野の語彙学習の機会を増やすことも重要です。大学や企業と連携し、専門分野の語彙を学ぶプログラムを提供することなどが考えられます。
また、語彙学習へのモチベーションを高めることも大切です。語彙学習を単なる暗記作業ではなく、コミュニケーションの手段として位置づけることが重要です。言葉の面白さや、語彙力の向上がもたらす自信などを実感できるような指導が求められます。
さらに、生涯学習の観点から、学校教育以外でも語彙学習の機会を提供することが重要です。図書館や公民館などで、語彙学習のための講座や教材を提供するなどの取り組みが考えられます。
語彙の習得には、多読や多聴など、大量のインプットが重要だと考えられています。また、語彙を実際の文脈の中で使う機会を増やすことも大切です。学校教育においては、コミュニケーション重視の指導の中で、実践的な語彙指導を行うことが求められているのです。
日本人の英語習得の難しさは、教育制度、社会環境、言語的特性など、様々な要因が複雑に絡み合った結果だと言えます。これらの問題を解決するためには、英語教育の抜本的な改革が必要不可欠です。
学校教育においては、コミュニケーション重視の指導へのシフトが求められています。文法や語彙の知識を重視するだけでなく、実際に英語を使う機会を大幅に増やすことが重要です。また、教師の英語力向上や、ALTの活用など、指導体制の強化も欠かせません。
社会全体としても、英語を使う機会を増やすための環境整備が必要です。
言語的要因
日本語と英語の文法構造の違い(語順、助詞の有無など)
日本語は SOV(主語-目的語-動詞)の語順を取るのに対し、英語は SVO(主語-動詞-目的語)の語順です。この根本的な構造の違いにより、日本人英語学習者は英語の語順に慣れるのに時間がかかります。また、日本語には助詞があり、文法的な関係を明示しますが、英語にはそのような助詞がないため、語順や前置詞などで文法的な関係を表現する必要があります。
日本語特有の言い回しや表現の存在
日本語には、英語に直接対応しない特有の言い回しや表現が数多くあります。例えば、「お腹が空いた」を英語で表現する際、直訳すると “My stomach is empty” となりますが、自然な表現は “I’m hungry” です。このような日本語特有の表現を英語で適切に表現するには、言語の慣用表現や文化的背景の理解が不可欠です。
日本語の「よろしくお願いします」という表現は、様々な場面で使われる汎用的な表現ですが、英語にはこれに直接対応する表現はありません。状況に応じて、 “Nice to meet you”(初対面の挨拶)、 “Thank you for your help”(助けを求める際)、 “I appreciate your support”(支援を求める際)など、適切な表現を選ぶ必要があります。
また、日本語の敬語表現も、英語には直接対応するものがありません。日本語では、相手との関係性や社会的な立場に応じて、尊敬語、謙譲語、丁寧語などを使い分けます。一方、英語では、 “please” や “thank you” などの表現を添えることで、丁寧さを表現します。
さらに、日本語の曖昧な表現も、英語で表現するのが難しい場合があります。例えば、「ちょっと」という言葉は、「少し」「少々」「ほんの少し」など、文脈によって微妙なニュアンスが異なります。英語では、 “a little” や “a bit” などの表現を使い分けますが、日本語ほどの微妙なニュアンスの違いは表現しにくいのです。
このような日本語特有の表現を英語で適切に表現するためには、英語の慣用表現や文化的背景の理解が欠かせません。単に単語を置き換えるだけでは、意図が正確に伝わらない場合があるのです。
例えば、日本語の「頑張ってください」は、応援の気持ちを込めた表現ですが、英語で “Please do your best” と直訳しても、あまり自然ではありません。状況に応じて、 “Good luck”(一般的な応援)、 “Hang in there”(困難な状況での励まし)、 “Keep up the good work”(仕事での励まし)など、適切な表現を選ぶ必要があります。
また、日本語の「おめでとうございます」は、お祝いの言葉ですが、英語では “Congratulations” だけでなく、 “Happy birthday”(誕生日)、 “Happy New Year”(新年)、 “Happy anniversary”(記念日)など、状況に応じた表現を使い分けます。
このように、日本語特有の表現を英語で適切に表現するためには、言葉の一対一の対応関係だけでなく、言葉が使われる文脈や、言葉に込められた文化的な意味合いを理解することが重要です。
この点は、英語教育においても重要な視点だと言えます。単に語彙や文法を教えるだけでなく、言葉が実際に使われる場面を想定し、適切な表現を選択する力を育成することが求められます。
そのためには、オーセンティックな教材を活用し、実際の言語使用場面に触れる機会を増やすことが効果的です。また、言葉の背景にある文化的な価値観についても、理解を深める必要があります。
加えて、日本語と英語の表現方法の違いを意識的に比較し、それぞれの言語の特性を理解することも重要です。両言語の違いを知ることで、より適切な表現方法を選択できるようになるでしょう。
また、言葉の背景にある文化的な価値観を理解することは、言語学習だけでなく、異文化理解の観点からも重要です。言葉は文化の反映であり、言葉を通じて文化を知ることができるのです。
日本語と英語の表現方法の違いは、言語学習における大きな障壁の一つですが、同時に、言語の多様性と豊かさを示す良い例でもあります。英語教育においては、言葉の形式的な側面だけでなく、言葉が持つ文化的な意味合いにも目を向ける必要があります。言葉の背景にある価値観を理解し、状況に応じて適切な表現を選択する力を育てることが重要です。
英語の発音と日本語の音声体系の違い
日本語の音声体系は、英語と比べて母音や子音の種類が少なく、特に英語の “l” と “r” の区別や、”th” の発音は日本人英語学習者にとって難しいとされています。また、日本語は音節が等時的(一定のリズムで発音される)であるのに対し、英語は強弱アクセントがあり、ストレス・タイミング言語に分類されます。このような音声面での違いが、日本人の英語習得を困難にしている要因の一つと考えられます。
日本語の音節構造とリズムが英語と大きく異なること
日本語は子音と母音が交互に現れる開音節構造が基本であり、一音節が一定の長さで発音されるのが特徴です。一方、英語は閉音節(子音で終わる音節)が多く、音節の長短が syllable-timed(音節単位でリズムが刻まれる)ではなく、stress-timed(強勢を基準にリズムが刻まれる)です。このリズムの違いに適応することが、日本人英語学習者にとって大きな課題となっています。
英語の多様な語彙と日本語の漢字の影響
英語には、ラテン語、ギリシャ語、フランス語など、さまざまな言語に由来する語彙が存在します。一方、日本語の語彙は、和語、漢語、外来語に大別されます。特に、日本語の漢字は、一字一字に意味を持つ表意文字であるため、英単語を漢字の意味で理解しようとする傾向があります。このような母語の影響が、英語の語彙習得を困難にしている可能性があります。
日本語の敬語表現と英語の簡潔な表現方法の違い
日本語は、相手との関係性や社会的立場に応じて敬語を使い分ける言語です。敬語は、尊敬語、謙譲語、丁寧語に分類され、それぞれ使い方が異なります。一方、英語には敬語のような複雑な言語体系はなく、比較的簡潔な表現が好まれます。このような言語表現の違いが、日本人英語学習者にとって英語の表現方法を習得する上での障壁となっています。
日本語の主語の省略と英語の主語の必要性
日本語は、文脈から主語が明らかな場合、主語を省略することが多いです。一方、英語では、主語を明示することが文法的に必要とされます。このような言語的な違いが、日本人英語学習者が英語で表現する際に、主語を忘れたり、不自然な表現になったりする原因の一つと考えられます。
日本語の曖昧な表現と英語の明確な表現の違い
日本語は、高コンテクストな言語であり、言葉に明示されていない部分を文脈から読み取ることが重要視されます。そのため、日本語では曖昧な表現が好まれる傾向があります。一方、英語は低コンテクストな言語であり、明確で直接的な表現が求められます。このような言語表現の違いが、日本人英語学習者が英語で明確に意思を伝えることを難しくしている可能性があります。
英語の冠詞やその他の機能語の使い方の難しさ
英語には、”a”、”an”、”the” などの冠詞があり、名詞の種類や指示対象によって使い分ける必要があります。また、前置詞や接続詞などの機能語も、英語では重要な役割を果たします。日本語にはこれらの機能語に相当するものがないため、日本人英語学習者はその使い方を習得するのに苦労します。
英語の多様な動詞の時制と相の表現方法
英語の動詞は、現在形、過去形、現在完了形、過去完了形など、さまざまな時制と相があります。また、進行形や完了形などのアスペクトも重要です。一方、日本語の動詞は、時制と相の区別が英語ほど明確ではありません。このような言語的な違いが、日本人英語学習者が英語の動詞の時制と相を正しく理解し、使いこなすことを難しくしています。
教育的要因
日本の英語教育におけるリスニングとスピーキングの不足
伝統的な日本の英語教育では、リーディングとライティングに重点が置かれ、リスニングとスピーキングの練習が十分に行われてきませんでした。その結果、多くの日本人英語学習者は、英語を読んだり書いたりすることはできても、聞き取りや会話が苦手という傾向があります。近年、コミュニケーション重視の英語教育が導入されつつありますが、まだ改善の余地があると言えます。
文法訳読式教授法の弊害
日本の英語教育では長年、文法訳読式の教授法が主流でした。この教授法は、英文を日本語に翻訳して理解することに重点を置いており、英語を実際に使用する能力の育成には適していません。その結果、英文法の知識は豊富でも、実際に英語を運用する力が身につかないという問題が指摘されています。
受験英語と実用英語のギャップ
日本の英語教育は、大学入試に重点が置かれており、入試で求められる英語力と実際のコミュニケーションで必要とされる英語力との間にギャップがあります。受験英語では、文法や語彙の知識、読解力が重視されますが、リスニングやスピーキングの能力は十分に評価されません。このような教育システムが、日本人英語学習者の実用英語力の向上を妨げている可能性があります。
ネイティブ教師の不足と ALT (外国語指導助手) の効果的な活用の欠如
日本の英語教育では、ネイティブスピーカーの教師が不足しており、生徒が生きた英語に触れる機会が限られています。また、ALT(外国語指導助手)制度があるものの、ALT と日本人教師の連携が十分でなかったり、ALT の活用方法が効果的でなかったりするケースがあります。その結果、生徒がネイティブスピーカーとのコミュニケーションを通じて英語を学ぶ機会が十分に提供されていない状況があります。
日本人英語教師の英語力不足
日本の英語教育を担当する日本人教師の中には、十分な英語運用能力を持っていない者もいます。特に、リスニングやスピーキングの能力が不足している教師が多いと指摘されています。教師自身の英語力不足は、生徒の英語習得に直接的な影響を与えるため、教師の英語力向上が課題となっています。
教科書の内容と実際の英語使用場面とのギャップ
日本の英語教育で使用される教科書の内容は、実際の英語使用場面とは乖離していることがあります。教科書の題材が日本人学習者の興味・関心と結びついていなかったり、扱われる表現が不自然であったりすることがあります。このようなギャップが、学習者の英語学習に対するモチベーションを下げ、実用的な英語力の習得を妨げている可能性があります。
英語学習の動機付けの欠如
日本の英語教育では、英語を学ぶ目的や必要性が学習者に十分に伝えられていないことがあります。そのため、多くの学習者は、英語を学ぶ明確な動機を持たずに、受動的に学習に取り組んでいます。内発的な動機付けが不足していることが、英語学習に対する積極的な姿勢を妨げ、学習効果を低下させている可能性があります。
日本の教育システムにおける暗記重視の学習方法
日本の教育システムは、暗記重視の学習方法を採用する傾向があります。英語教育においても、単語や文法規則の丸暗記が重視され、実際の言語使用場面での応用力の育成が軽視されがちです。このような学習方法では、英語を実際に運用する能力を身につけることが難しく、学習者は英語に対する苦手意識を持ちやすくなります。
英語教育における個人差への対応の不足
日本の英語教育では、学習者の個人差に十分に対応できていない面があります。学習者の英語習得速度や理解度には個人差がありますが、画一的な教育方法では、個々の学習者のニーズに合わせた指導が行われにくくなります。その結果、英語が苦手な学習者は、適切な支援を受けられず、英語学習に対する意欲を失う可能性があります。
教室内での英語使用機会の不足
日本の英語教育では、教室内で英語を実際に使用する機会が限られています。多くの授業が日本語で行われ、英語を話す機会が少ないため、学習者は英語を使うことに慣れません。また、教師が英語を使用しても、学習者が英語で応答する機会が十分に与えられていないことがあります。このような教室環境が、学習者の英語運用能力の向上を妨げている可能性があります。
心理的要因
英語を話すことへの恥ずかしさや抵抗感
日本人は、一般的に恥ずかしがり屋だと言われています。このような性質は、英語を話すことに対する抵抗感につながります。特に、自分の英語力に自信がない学習者は、間違いを恐れて英語を話すことを避ける傾向があります。この心理的な障壁が、英語学習の進展を妨げる要因の一つと考えられます。
完璧主義による間違いを恐れる心理
日本人は、完璧主義の傾向が強いと言われています。このような性質は、英語学習においても、間違いを極端に恐れる心理につながります。完璧を求めるあまり、少しでも間違いがあると英語を話すことをためらったり、自分の英語力を過小評価したりする傾向があります。この心理が、英語学習に対する積極的な姿勢を妨げている可能性があります。
英語学習に対する自信のなさ
多くの日本人英語学習者は、自分の英語力に自信を持てずにいます。この自信のなさは、英語を学ぶ過程で、失敗や挫折を経験することから生じることがあります。また、周囲の人と自分の英語力を比較して、劣等感を抱くこともあります。このような自信のなさが、英語学習に対する意欲を低下させ、学習の進展を妨げている可能性があります。
コミュニケーションに対する消極的な態度
日本人は、コミュニケーションに対して消極的な態度を取る傾向があると言われています。これは、日本社会が集団主義的であり、個人の主張よりも集団の和を重んじる傾向があることと関連していると考えられます。このような文化的背景が、英語でのコミュニケーションに対する消極的な態度につながり、英語学習の妨げとなっている可能性があります。
外国人とのインタラクションに対する不安感
日本人英語学習者の中には、外国人とのインタラクションに対して不安を感じる者が少なくありません。これは、言語の壁だけでなく、文化の違いに起因する不安感でもあります。外国人とのコミュニケーションでは、適切な振る舞い方が分からないことへの不安や、自分の英語力が相手に伝わらないことへの恐れなどが、この不安感の要因として考えられます。このような心理的障壁が、英語学習者が外国人とのコミュニケーションを積極的に行うことを妨げている可能性があります。
日本人特有の内向的な性格傾向
日本人は、外向的な欧米人と比べて、内向的な性格傾向があると言われています。内向的な性格は、自分の意見を積極的に表明したり、他者とコミュニケーションを図ったりすることを苦手とする傾向があります。このような性格傾向が、英語学習において、自分の意見を述べたり、他者と英語でコミュニケーションを取ったりすることを困難にしている可能性があります。
失敗を恐れる心理が言語の実践を妨げること
日本人は、失敗を恐れる傾向が強いと言われています。これは、日本社会が失敗に対して寛容ではなく、失敗が個人の評価を下げるものと捉えられがちであることと関連していると考えられます。このような失敗を恐れる心理が、英語の実践において、間違いを恐れて英語を使うことを躊躇させ、学習の進展を妨げている可能性があります。
英語学習に対する動機の欠如
日本人英語学習者の中には、英語を学ぶ明確な目的や動機を持たない者が少なくありません。英語学習が単なる学校の科目や受験のための手段と捉えられ、実際の言語使用場面とのつながりが感じられないことが、この動機の欠如につながっていると考えられます。内発的な動機づけが不足していることが、英語学習に対する積極的な姿勢を妨げている可能性があります。
英語を使う必要性を感じていない環境
日本は、言語的に均一な社会であり、日常生活で英語を使う必要性が低いと言われています。このような環境では、英語学習者が英語を使う必然性を感じにくく、英語学習に対するモチベーションが維持しにくくなります。英語を使う具体的な場面をイメージできないことが、英語学習への取り組みを消極的にさせている可能性があります。
英語学習に対する固定観念(言語学習は才能が必要など)
日本人の中には、言語学習には特別な才能が必要だと考える者がいます。このような固定観念は、自分には言語学習の才能がないと決めつけ、英語学習に消極的になる原因となります。また、言語学習には膨大な時間と努力が必要だと考えることで、英語学習に対する意欲が削がれることもあります。このような固定観念が、英語学習への取り組みを妨げている可能性があります。
社会的要因
日本社会における英語の必要性の低さ
日本は、言語的に均一な社会であり、日常生活で英語を使う必要性が低いと言われています。ほとんどの場面で日本語でコミュニケーションが可能であるため、英語を使用しなければならない状況が限られています。このような社会環境が、英語学習に対する動機づけを低下させ、学習への取り組みを消極的にさせている可能性があります。
日常生活で英語を使用する機会の不足
日本国内では、英語を使用する機会が限られています。街中の看板や広告、テレビ番組などで英語に触れる機会はありますが、実際に英語でコミュニケーションを取る必要性は低いと言えます。このような環境では、英語学習者が習得した英語を実際に使う機会が少なく、学習の成果を実感しにくくなります。英語を使用する具体的な場面が想定しにくいことが、学習意欲の低下につながっている可能性があります。
英語を使用する職場環境の限定性
日本の職場環境では、英語を使用する必要性は業種や職種によって大きく異なります。国際的な業務に携わる企業や部署では英語が必要とされますが、国内業務が中心の企業や部署では英語を使う機会が限られています。このような職場環境の違いが、社会人の英語学習に対する意識やモチベーションに影響を与えている可能性があります。
日本の言語的・文化的に同質な社会環境
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