格差是正と貧困対策に向けた政策について解説 税制改革 貧困削減 SDGs 奨学金制度の拡充 教育費負担の軽減

 

格差是正と貧困対策に向けた政策

税制改革(所得税の累進強化、資産課税の見直しなど)

格差是正と貧困対策に向けては、税制改革が重要な政策手段の一つです。所得再分配機能の強化を通じて、格差の縮小と貧困の削減を図ることが期待されます。
まず、所得税の累進性の強化が検討課題です。現在の日本の所得税は、諸外国と比べて累進性が弱いと指摘されています。高所得層により多くの税負担を求めることで、所得再分配効果を高めることが期待されます。具体的には、最高税率の引き上げや、高所得層向けの控除の縮小などが考えられます。
また、資産課税の見直しも重要な論点です。日本の相続税や贈与税は、国際的に見ても高い水準にありますが、土地や金融資産などの保有課税は相対的に低い水準にあります。資産格差の固定化を防ぐためには、資産課税の強化が求められます。
ただし、税制改革には経済への影響にも留意が必要です。過度な累進強化は、労働意欲を削ぐ恐れがあります。また、資産課税の強化は、投資の抑制や資産の海外流出を招く可能性があります。経済の活力を維持しつつ、格差是正を図るためのバランスの取れた税制設計が求められます。

相続税の課税方式については、法定相続分課税方式が導入されていますが、この方式では、農地や事業用資産などの分割困難な資産を単独で相続することによる税負担への配慮があります。
しかし、現在の相続税の課税方式には問題があり、特に、相続人の間での水平的公平性が保たれていないことが指摘されています。また、相続税の基礎控除額が据え置かれているにもかかわらず、地価の下落が続いてきたため、低所得者ほど税負担が相対的に重くなるとみられます。

加えて、所得再分配政策としては、給付付き税額控除の導入も検討に値します。給付付き税額控除は、低所得者に対して、税額控除を超える部分を現金で給付する仕組みです。就労インセンティブの向上と、所得再分配効果の両立が期待されます。
税制は、格差是正と貧困対策のための強力なツールです。ただし、税制改革だけで格差や貧困の問題が解決するわけではありません。社会保障制度の改革や、教育の充実、雇用対策などと組み合わせて、総合的に取り組むことが重要だと考えられます。

社会保障制度の再構築(年金、医療、介護など)

社会保障制度は、格差の是正と貧困の防止に重要な役割を果たします。しかし、日本の社会保障制度は、急速な高齢化の進展に伴う給付費の増大や、非正規雇用の拡大による制度の空洞化など、様々な課題に直面しています。持続可能で効果的な社会保障制度を再構築することが急務だと言えます。
年金制度については、マクロ経済スライドの適用や、支給開始年齢の引き上げなど、制度の持続可能性を高めるための改革が進められてきました。今後は、基礎年金の水準の引き上げや、最低保障年金の導入など、所得再分配機能の強化も検討課題だと考えられます。
医療保険制度については、高齢者医療費の増大が大きな課題となっています。後期高齢者医療制度の見直しや、予防医療の推進などを通じて、医療費の伸びを抑制することが求められます。同時に、非正規雇用者への適用拡大など、制度の空洞化に対処することも重要です。

後期高齢者医療制度では、10月から1割、2割、3割の3段階の本人負担が導入されました。これにより、75歳以上の自己負担は1割、2割、3割の3区分になりました。また、被用者保険と国民健康保険の間で、加入率に応じた財政調整方式が導入されています。これにより、加入率の低い制度から納付金を集め、加入率の高い制度に交付することで、被用者保険から国保に金が流れるようになりました。
一方、後期高齢者医療制度の抜本改革についても、様々な方向性が検討されています。例えば、突き抜け方式や年齢リスク構造調整方式などが提案されています。これらの方式では、被用者OBを対象とする新たな保険者を創設したり、年齢構成の違いによる支出の格差を調整することで、高齢者医療費の増大に対処することを目指しています。

介護保険制度についても、高齢化の進展に伴う給付費の増大が課題となっています。介護予防の推進や、地域包括ケアシステムの構築などを通じて、持続可能な制度運営を目指すことが重要です。また、介護人材の確保や処遇改善など、サービス基盤の強化も必要です。
社会保障制度の再構築に当たっては、世代間の公平性にも配慮が必要です。現役世代の負担が過重にならないよう、高齢者にも応分の負担を求めることが求められます。また、少子化対策の観点から、子育て支援策の拡充も重要な課題です。
社会保障制度は、国民の生活の安定と、社会の安定の基盤です。制度の持続可能性を高めつつ、セーフティネットとしての機能を強化することが大切です。そのためにも、国民的な議論を深め、時代に合った社会保障制度の再設計を進めていく必要があります。

教育の機会均等の確保(奨学金制度の拡充、教育費負担の軽減など)

教育は、格差の固定化を防ぎ、社会の流動性を高める上で重要な役割を果たします。家庭の経済状況にかかわらず、誰もが質の高い教育を受けられる環境を整備することが、格差是正のために不可欠だと言えます。
まず、奨学金制度の拡充が重要な課題です。日本の奨学金は、諸外国と比べて、給付型の割合が低いと指摘されています。特に、低所得世帯の子どもたちが高等教育を受けられるよう、給付型奨学金の大幅な拡充が求められます。
また、教育費負担の軽減策も検討課題です。幼児教育・保育の無償化や、高等教育の修学支援など、家計の教育費負担を軽減する取り組みが進められてきました。今後は、義務教育段階での教育費負担の軽減なども検討に値すると考えられます。

給付型奨学金の拡充
2017年に日本学生支援機構(JASSO)が返済不要の給付型奨学金を創設し、現在は奨学金受給者の3割が給付型を利用
JASSOの給付型奨学金は2015年の100億円から着実に増加し、2023年現在では1500億円~2000億円の規模に
2020年度からは国公立大学の自宅外通学者への月額6万6,700円の給付を開始
高等教育修学支援新制度の実施
2020年度から、授業料・入学金の免除・減額と給付型奨学金の大幅拡充を行う高等教育修学支援新制度を実施
低所得世帯の高校生の大学進学率向上と、世帯年収約600万円の中間層への拡大を目指す
企業による奨学金返還支援制度の導入
大東建託リーシングやSpelldataなどの企業が、新卒社員の奨学金返還を支援する制度を導入
入社後5年間にわたり毎月1万円を支給するなど、企業の取り組みも広がりつつある
しかし、日本の給付型奨学金はアメリカの5万~10万種類と比べると圧倒的に少なく、学費や生活費をすべてカバーできる制度はまだ限られています。今後も、高等教育の質保証と奨学政策の関係を見据えながら、さらなる改善が期待されます。

加えて、公教育の質の向上も重要な課題です。学校間格差の是正や、教育内容の充実などを通じて、どの学校でも質の高い教育が受けられる環境を整備することが大切です。そのためには、教員の資質向上や、教育予算の拡充などが求められます。
さらに、教育の機会均等を確保するためには、学校外の学びの支援も重要です。地域の図書館や公民館などの社会教育施設の充実や、多様な学習機会の提供などを通じて、家庭の経済状況に左右されない学びの環境を整備することが求められます。
教育は、個人の可能性を開花させ、社会の発展を支える基盤です。教育の機会均等を確保することは、格差のない活力ある社会を実現するための大前提だと言えます。奨学金制度の拡充や教育費負担の軽減などを着実に進め、誰もが夢に挑戦できる環境を整えていくことが大切です。

教育は、個々の能力や才能を育てるだけでなく、社会全体の知識水準や文化的な成熟度を向上させる役割も果たします。歴史的に見ても、日本の教育制度は戦後の経済成長に寄与し、国民の知的水準を高めることに成功してきました。教育が普及することで、科学技術や経済の発展が促進され、それがまた社会全体の安定と繁栄につながるのです。

教育機会の均等は、すべての人々が公平に教育を受けられる環境を提供することを意味します。実際には、家庭環境や地域によって教育機会が制限される場合が多く、特に社会経済的地位(SES)が低い家庭では、その影響が顕著です。例えば、都市部と地方では進学率や学歴に大きな差があり、この格差は将来的な職業選択や収入にも影響を及ぼします。したがって、教育機会均等を実現することは、個人だけでなく社会全体にとっても利益となります。

奨学金制度の拡充や教育費負担の軽減は、具体的な施策として非常に重要です。経済的な理由で進学を断念する学生が増えている現状では、これらの施策が教育へのアクセスを広げるカギとなります。例えば、授業料や教材費などの負担が軽減されれば、多くの学生が夢に挑戦できる環境が整います。このような取り組みは、長期的には国全体の人材育成につながり、経済成長にも寄与するでしょう。

教育機会均等は、多様性と創造性を促進する要素でもあります。異なるバックグラウンドを持つ学生が同じ環境で学ぶことで、多様な視点やアイデアが生まれます。このような環境は、新たな発想やイノベーションを生む土壌となり得ます。また、多様性は社会全体の柔軟性や適応力を高めるためにも重要です。

最低賃金の引き上げと働き方改革

最低賃金の引き上げと働き方改革は、格差の是正と貧困の削減に向けた重要な政策課題です。ワーキングプアの増加や、非正規雇用の拡大など、労働をめぐる問題に対処するためには、賃金の底上げと労働環境の改善が欠かせません。
日本の最低賃金は、OECD加盟国の中でも低い水準にあると指摘されています。最低賃金の引き上げは、低所得層の所得向上に直結します。特に、非正規雇用者の多くが最低賃金近辺で働いていることを考えれば、最低賃金の引き上げは、格差の是正に大きな効果があると期待されます。
ただし、最低賃金の引き上げには、経済への影響にも留意が必要です。中小企業など、経営基盤の脆弱な企業にとっては、人件費の増加が大きな負担となる可能性があります。最低賃金の引き上げと並行して、中小企業支援策の拡充や、生産性向上の取り組みを進めることが重要だと考えられます。
また、働き方改革を通じて、労働環境の改善を図ることも重要です。長時間労働の是正や、非正規雇用の処遇改善などは、働く人々の生活の質を高め、格差の縮小に寄与すると期待されます。

最低賃金の引き上げは、低賃金労働者の生活水準の向上に寄与し、格差の是正に一定の効果があると期待されます。しかし、その効果は限定的であり、以下のような課題もあります。
最低賃金の引き上げが、一般的な賃金水準に大きな影響を与えるほど高い水準に設定された場合、失業率の上昇や経済成長の鈍化などの経済的な反動が起こる可能性がある。
最低賃金の引き上げが、パート労働者の賃金と一般労働者の賃金との格差を縮小させる形で行われれば、生産性向上効果が期待できる可能性があるが、パート賃金との格差を縮める引き上げでは、そのような効果は認められない。
最低賃金の適用範囲が広く、賃金全体への影響度が大きい場合にのみ、マクロ経済政策の手段として有効に機能する。

長時間労働の是正に向けては、時間外労働の上限規制の適用範囲の拡大や、勤務間インターバル制度の普及などが求められます。また、テレワークやフレックスタイム制の活用など、柔軟な働き方を広げることも重要だと考えられます。
非正規雇用の処遇改善については、同一労働同一賃金の原則の徹底が重要です。正社員と非正規雇用の不合理な待遇差の解消を図ることで、非正規雇用で働く人々の所得向上と、雇用の安定化につなげることが期待されます。
加えて、非正規雇用から正社員への転換を促進することも重要な課題です。キャリアアップ助成金の活用や、無期転換ルールの周知などを通じて、非正規雇用で働く人々のキャリア形成を支援することが求められます。
最低賃金の引き上げと働き方改革は、格差の是正と貧困の削減に向けた重要な一歩だと言えます。ただし、これらの取り組みは、企業の経営や雇用にも大きな影響を及ぼします。官民が連携し、働く人々の所得向上と、企業の生産性向上を両立させる取り組みを進めていくことが大切です。

OECD加盟国における最低賃金ランキング(年収換算)では、日本は14位(16,989.5ドル)にランクインしています。最低時給ランキングでも14位(8.2ドル)と、アジア諸国の中では最下位となっています。
一方、平均年収ランキングでは22位(38,515ドル)と、最低賃金に比べ順位が高くなっています。これは格差社会の現れとも言えます。
日本の最低賃金は、東京都の場合2020年度時点で時間額1,013円となっています。先進国の中では最低レベルに位置しますが、アジア諸国の中ではトップ圏内にあります。

日本の個人所得税率
195万円以下の課税所得に対して5%の税率が適用される
195万円超 330万円以下の課税所得に対して10%の税率が適用される
330万円超 695万円以下の課税所得に対して20%の税率が適用される
695万円超 900万円以下の課税所得に対して23%の税率が適用される
900万円超 1800万円以下の課税所得に対して33%の税率が適用される
1800万円超 4000万円以下の課税所得に対して40%の税率が適用される
4000万円超の課税所得に対して45%の税率が適用される
また、2013年1月から2037年12月までの時限措置として、基準所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が課される。
所得税の計算には、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除などが適用される。
非居住者の日本源泉所得に対しては、20.42%の税率が適用される。これには復興特別所得税の2.1%が含まれている。

子育て支援策の強化

少子高齢化が進む中で、子育て支援策の強化は、喫緊の課題だと言えます。子育て世帯の経済的な負担の軽減や、仕事と子育ての両立支援などを通じて、安心して子どもを生み育てられる環境を整備することが求められます。
まず、児童手当の拡充が検討課題です。現在、児童手当は、0歳から15歳までの子どもを対象に、月額1万円から1万5千円が支給されています。この水準を引き上げることで、子育て世帯の経済的な負担を軽減することが期待されます。

現在の児童手当の支給対象と金額
児童手当の現状
支給対象 0歳から15歳までの子ども
支給額
第1子・第2子 月額1万円
第3子以降 月額1万5千円
児童手当拡充の検討課題
児童手当の拡充に向けて、以下のような点が検討課題として挙げられています。
支給対象の拡大
現在は15歳までですが、高校生相当年齢までの拡大を検討
18歳までの子どもを対象とすることで、教育費負担の軽減が期待
支給額の増額
現在の1万円から1万5千円では、子育て世帯の経済的負担を十分に補うには不足
支給額の引き上げにより、子育て世帯の生活の質の向上が期待
所得制限の撤廃
現在は所得制限があるため、高所得者は支給対象外
所得制限を撤廃し、全ての子育て世帯に支給するべき?

また、保育サービスの充実も重要な課題です。待機児童の解消や、保育の質の向上などを通じて、安心して子どもを預けられる環境を整備することが求められます。そのためには、保育士の処遇改善や、保育施設の整備などが不可欠です。
加えて、ひとり親世帯への支援の強化も重要です。ひとり親世帯は、貧困に陥るリスクが高く、子どもの教育や生活に大きな影響を及ぼします。児童扶養手当の拡充や、就労支援、住宅支援などを通じて、ひとり親世帯の生活の安定を図ることが求められます。
さらに、仕事と子育ての両立支援も重要な課題です。育児休業の取得促進や、短時間勤務制度の普及などを通じて、子育て中の労働者が働き続けられる環境を整備することが大切です。また、男性の育児参加を促すための取り組みも求められます。
子育て支援策の強化は、子どもの貧困対策としても重要な意味を持ちます。全ての子どもが健やかに成長できる環境を整えることは、格差の世代間連鎖を断ち切るために不可欠だと言えます。
子育て支援は、社会全体で取り組むべき課題です。国や地方自治体、企業、地域社会が連携し、子育て世帯を支える包括的な支援体制を構築していくことが求められます。子育てに夢と希望を持てる社会の実現に向けて、着実に取り組みを進めていくことが大切だと考えます。

生活保護制度の見直しと自立支援策

生活保護制度は、最後のセーフティネットとして、貧困に苦しむ人々の生活を支える重要な役割を果たしています。しかし、近年、生活保護制度をめぐっては、不正受給の問題や、就労支援の不十分さなど、様々な課題が指摘されています。生活保護制度の見直しと、自立支援策の強化が求められていると言えます。
まず、生活保護制度の適正化が重要な課題です。不正受給の防止や、健康状態の改善が見込まれる被保護者への就労支援などを通じて、制度の信頼性を高めることが求められます。同時に、生活保護の捕捉率(生活保護を受けるべき人のうち、実際に受けている人の割合)の向上にも取り組む必要があります。
また、生活保護からの脱却を支援する取り組みの強化も重要です。就労支援や職業訓練の充実、ハローワークとの連携強化などを通じて、被保護者の自立を後押しすることが求められます。加えて、子どもの学習支援など、貧困の世代間連鎖を断ち切るための取り組みも重要だと考えられます。
さらに、生活困窮者自立支援制度の拡充も検討課題です。生活保護に至る前の段階で、生活困窮者に対する相談支援や就労支援を行うことで、貧困の予防と早期の自立支援を図ることが期待されます。家計相談支援事業や、子どもの学習支援事業など、生活困窮者自立支援制度の各事業の充実が求められます。

生活保護制度
自立支援プログラムの導入
被保護者の抱える問題の多様化や被保護世帯数の増加に伴い、経済的自立、日常生活自立、社会生活自立の観点から、個々の被保護者に必要なプログラムを本人同意の上で決定し、関係機関と連携して組織的に支援
就労支援の強化
ハローワークと福祉事務所が連携したチーム支援により、就労支援員による就労に関する相談・助言、個別の求人開拓やハローワークへの同行等の支援を実施
就労準備支援事業では、就労に向け一定の準備が必要な者への日常生活習慣の改善等の支援を実施
就労自立給付金の支給
生活保護から脱却した際に、就労収入に応じた一定額を就労自立給付金として支給することで、脱却直後の不安定な生活を支え、再度保護に至ることを防止
居宅生活移行支援の実施
生活困窮者及び生活保護受給者のうち、居宅生活への移行に際して支援を必要とする者に対して、転居先の確保や各種契約手続き等の支援、居宅生活移行後の定着支援を実施
これらの取り組みにより、被保護者の自立を促進し、不正受給の防止につなげています。

加えて、住宅支援の強化も重要な課題です。生活保護受給者の多くが、住宅扶助を利用して民間賃貸住宅に居住していますが、家賃滞納などによる退去強要のリスクが指摘されています。居住支援協議会の活用や、住宅手当の拡充など、住宅セーフティネットの強化が求められます。
生活保護制度は、貧困に苦しむ人々の最後の砦です。制度の適正化を図りつつ、自立支援策を強化することで、生活保護が真に必要な人々を支える制度として機能することが期待されます。
また、生活保護制度だけでなく、生活困窮者自立支援制度など、貧困に陥る前の段階での予防的な支援策の拡充も重要だと考えられます。官民が連携し、重層的なセーフティネットを構築していくことが求められます。
貧困問題は、社会の持続可能性を脅かす深刻な問題です。生活保護制度の見直しと自立支援策の強化は、貧困削減に向けた重要な一歩だと言えます。貧困の予防と削減に向けて、社会全体で取り組みを進めていくことが大切だと考えます。

生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至る前の段階から早期に支援を行い、生活困窮状態からの早期自立を支援することを目的としています。

必須事業
自立相談支援事業
就労その他の自立に関する相談支援、事業利用のためのプラン作成等を実施

住居確保給付金
離職により住宅を失った生活困窮者等に対し家賃相当額を有期で支給

任意事業
就労準備支援事業
就労に必要な訓練を日常生活自立、社会生活自立段階から有期で実施

一時生活支援事業
住居のない生活困窮者に対して一定期間宿泊場所や衣食の提供等を実施

家計相談支援事業
家計に関する相談、家計管理に関する指導、貸付のあっせん等を実施

学習支援事業
生活困窮家庭の子どもへの学習支援を実施
これらの事業を通じて、生活困窮者の自立と尊厳の確保、地域づくりを目指しています。

持続可能な経済成長と包摂的社会の実現

成長と分配の好循環の創出

日本経済が直面する構造的な課題に対処し、持続可能な成長を実現するためには、成長と分配の好循環を創出することが不可欠です。成長の果実が広く国民に行き渡り、それが更なる成長の原動力となるような経済社会のシステムを構築することが求められます。
そのためには、まず、イノベーションを通じた生産性の向上が重要です。技術革新や新たなビジネスモデルの創出などを通じて、経済の効率性と付加価値を高めることが求められます。同時に、生産性の向上の果実を、賃上げや雇用の安定化に振り向けることで、家計の所得の向上につなげることが大切です。
また、分配面では、税制や社会保障制度の再構築を通じて、所得再分配機能を強化することが重要です。格差の是正と貧困の削減を図ることで、社会の安定性を高め、消費の拡大を通じた経済成長につなげることが期待されます。
加えて、人的資本への投資の強化も重要な課題です。教育や職業訓練への投資を通じて、労働者の生産性を高め、所得の向上と経済成長の基盤を築くことが求められます。特に、貧困家庭の子どもたちへの教育支援は、格差の固定化を防ぎ、社会の流動性を高める上で重要な意味を持ちます。
成長と分配の好循環を創出するためには、政府と企業、労働者、市民社会など、様々なステークホルダーの協力が欠かせません。対話を通じて、長期的な視点に立った取り組みを進めていくことが求められます。
成長と分配の好循環は、日本経済の持続可能性を高め、包摂的な社会を実現するための鍵だと言えます。活躍でき、活力ある社会を築いていくことが、日本の未来にとって何より大切だと考えます。

格差の是正と貧困の削減は、社会の安定性を高め、消費の拡大を通じた経済成長につながると期待されます。
バブル崩壊後の長引く不況により、非正規雇用者比率が上昇し、格差や貧困が広がったと言われています。1人当たり国民所得も世界の中で相対的な順位を落としてきています。
非正規雇用の増加は、消費の伸び悩みを通じた経済の停滞の要因ともなっています。一方で、企業のコスト削減及び弾力化のニーズにより非正規雇用者が増加し、それに伴い格差も拡大したのではないかと考えられます。
このような状況の中、分厚い中間層の復活が求められています。労働者の希望に応じた無期雇用、直接雇用が重要であり、どのような働き方でも均等・均衡等公正な処遇の確保が重要とされています。
非正規雇用の労働者について、雇用の安定や処遇の改善を図ることによって労働者の士気・能力向上につなげ、企業の生産性の向上、日本経済社会全体の発展という「好循環」を創り出すことが重要だと提言されています。

イノベーションと生産性向上の推進

日本経済が直面する構造的な課題に対処し、持続可能な成長を実現するためには、イノベーションと生産性を向上しなければなりません。第4次産業革命とも呼ばれる技術革新の波を取り込み、新たな付加価値を生み出していくことが求められます。
まず、研究開発投資の拡大が重要な課題です。日本の研究開発投資は、対GDP比で見ると、主要先進国の中でもトップクラスにありますが、政府の研究開発投資の割合は相対的に低い水準にとどまっています。政府の研究開発投資を拡大し、基礎研究やイノベーションの芽を育てる取り組みを強化することが求められます。
また、オープンイノベーションの推進も重要です。大学や公的研究機関、企業などが連携し、知識や技術を持ち寄ることで、新たなイノベーションを生み出すことが期待されます。産学官連携の強化や、スタートアップ企業の育成などを通じて、オープンイノベーションの生態系を築いていくことが大切です。
加えて、デジタル化の推進も重要な課題です。AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用することで、生産性の向上や新たなビジネスの創出が期待されます。政府には、デジタル化を促進するための基盤整備や、規制改革などが求められます。また、企業には、デジタル人材の育成や、デジタル技術の導入などが期待されます。

AI無断学習は合法でも、AI生成出力は違法または著作権者の許諾が必要な場合があります。
著作物に表現された思想や感情を自ら享受したり他人に享受させることを目的とする場合は、著作権法30条の4の権利制限規定の適用外となり、原則として著作権者の許諾が必要です。

著作権法第30条の4は、著作物に表現された思想や感情を自ら享受したり他人に享受させることを目的としない場合に限り、著作物の利用を認める規定です。(享受させる目的でAI生成する場合は許諾が必要です。)
具体的には以下の3つの場合が例示されています
・著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発や実用化のための試験の用に供する場合
・情報解析(多数の著作物等から言語、音、影像等の要素に係る情報を抽出し、比較、分類等の解析を行うこと)の用に供する場合
・著作物の表現についての人の知覚による認識を伴わずに電子計算機による情報処理の過程で利用する場合(プログラムの実行を除く)

ただし、著作物の種類・用途や利用の態様によっては、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではありません。
「思想又は感情の享受」とは、著作物の視聴等を通じて視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることを指します。人が知覚によって著作物の表現を認識し、それにより表現の背後にある思想・感情を受け取ると評価できるかどうかで判断されます。
この規定は、AIによる深層学習やリバースエンジニアリング、コンピュータシステムのバックエンドでの著作物の利用など、著作物の表現そのものを享受することを目的としない利用を可能にするものです。

AIが生成したコンテンツが著作権法上の保護を受けるためには、「思想又は感情」要件を満たす必要があります。これは、人間の創作物に限定されるため、AIが生成したコンテンツがこの要件を満たすかどうかが問題となります。
著作権法第30条の4
「著作物の表現についての人の知覚による認識を伴わずに電子計算機による情報処理の過程で利用する場合(プログラムの実行を除く)」 
画像生成AIのAIイラストは人の近くによる認識を伴うため、著作権法侵害、著作権法違反
AIイラストには創作意図がなく、創作的寄与もない
 
米国著作権局がAI画像生成ツール「Midjourney」によって生成された作品の著作権登録を拒否した理由は、作品に対する人間の創作的寄与が不十分であると判断されたためです。この決定は、著作権法における「創作意図」と「創作的寄与」の概念に基づいています。

創作意図とは、特定の作品を生み出そうとする人間の主観的な意思を指します。これには、どのような作品を生成したいかという具体的なビジョンが含まれます。一方で、創作的寄与は、その作品に対して実際にどのような形で人間が関与したかを示すものです。たとえば、プロンプトを入力することや、生成された画像に対して手を加えることなどが該当します。
著作権局は、624回以上のプロンプトを入力し、さらにAdobe Photoshopで修正を加えたにもかかわらず、このプロセスがAIによって生成された部分に対する「創作的寄与」として十分でないと判断しました。つまり、AIが生成した部分が大きく、人間の手による具体的な創造性が不足していると見なされたのです.

AIが生成した作品は、prompt呪文を入力するだけで、その多くが独立して自律的に作成されるため、著作権法上では人間の創造性が認められない場合があります。具体的には、単なる指示を与えただけではなく、深い関与や独自の創意工夫が求められます。もしAIが自動的に生成したものであれば、それには著作権は発生しません.
この事例では、申請者はAIによって生成された部分について放棄することを求められましたが、それを拒否したために申請は却下されました。

元素法典・NovelAI 呪文prompt 創作的寄与がない 創作意図がないため著作権は無い
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NovelAIとMidjourneyは違法無断転載サイトであるDanbooruタグが効いてしまう
キーワードフィルタリングが搭載されていません 元素法典プロンプトを禁止するべき

「NovelAI Diffusion has been trained on Danbooru tags」
https:// twitter.com/novelaiofficial/status/1576794201672802305

「われわれはNovelAIと関係ない」──海外のイラストサイト「Danbooru」が日本語で声明
https:// www.itmedia.co.jp/news/articles/2210/05/news133.html


Midjourneyの開発者らが選んだ1万6,000人以上のアーティスト名のリストがある
特定のイラストレーターから集中学習するのは著作権法30条の4でも違法である可能性が高い

 
特定のイラストレーターの絵柄を学習したLoRAを公開した場合、著作権侵害の問題が発生する可能性があります。

LoRAは学習データとなったイラストレーターの絵柄を模倣・再現するものであり、これは著作権法上の「翻案」に該当する可能性が高い。翻案とは、既存の著作物を基に新たな表現を付加して別の著作物を創作することを指す。LoRAは学習データのイラストを基に新たな画像を生成しているため、翻案権侵害の問題が生じる。

著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つがあるが、LoRAの公開は特に同一性保持権の侵害につながる可能性がある。同一性保持権とは、著作者が自己の著作物の内容及び形式の同一性を保持する権利で、著作物の改変を禁止するものだ。LoRAは学習データのイラストを基に新たな画像を生成するため、著作者の意に反する改変に該当し得る。

LoRAによって生成された画像が、イラストレーターの名誉を毀損したり、肖像権を侵害したりするような内容であった場合、法的責任を問われる可能性がある。特に実在の人物のポルノや、ディープフェイクなどの非常に問題のある画像が生成されるリスクがある。
 

日本音楽作家団体協議会(FCA)パブリックコメント

著作権法が改正されて「著作権法30条の4」ができた経緯

「著作権法改正の審議の過程で強調されたことは
日本発のイノベーションを促すための法改正で、
日本版検索エンジンの開発のために著作物を利用するということであって、
人が知覚を通じて著作物を享受するものではないということでした」

だまし討ちで著作権法が改正された

AIイラストは享受する目的であるため著作権法30条の4に違反している

 

著作権法第30条の4は、著作物が「思想又は感情の享受」を目的としない場合には、その必要と認められる限度内で自由に利用できることを規定しています。
この条文は、特に以下の3つの条件を満たす場合に適用されます。

・思想又は感情の享受を目的としない利用
利用者が著作物の内容を知的または精神的に享受することを目的としていないことが求められます。具体的には、情報解析や技術開発など、著作物を直接的に楽しむことが目的ではない行為が対象となります。

・必要と認められる限度を超えない利用
利用は必要最小限であるべきであり、過度な使用は許可されません。これは著作権者の権利を尊重するためです。

・著作権者の利益を不当に害さない利用
利用によって著作権者が経済的利益や名誉を損なうことがあってはならず、その点も考慮される必要があります。

 

さらに、人的資本への投資も重要です。イノベーションを生み出し、生産性を高めていくためには、高度な知識やスキルを持った人材が必要です。教育や職業訓練への投資を拡大し、STEM(科学・技術・工学・数学)人材の育成などを進めていくことが求められます。
イノベーションと生産性向上は、日本経済の活性化と持続的な成長に欠かせない要素です。官民が連携し、長期的な視点に立った取り組みを進めていくことが大切だと考えます。

製造業・流通業における変化
製造業や流通業では、消費者の嗜好データをもとにサプライチェーンを最適化し、マス・ラピッド生産やマス・カスタマイズ生産に移行していくことが予測されています。例えば、製品の稼働状況データを収集・活用した保守・点検サービスの提供などが挙げられます。
フィンテック(FinTech)の発展
金融の分野では、ITを活用した革新的な金融サービス事業であるフィンテックが発展しています。これにより、企業への金融サービスだけでなく、個人投資家や新規事業を立ち上げるベンチャー企業などにも最適なサービスの提供が進んでいます。
求められるスキル
第4次産業革命に伴い、働く個人に求められるスキルも変化しています。世界経済フォーラムの調査では、今後5年間で特に重要になるスキルとして、分析的思考、創造的思考、テクノロジー活用リテラシーなどが挙げられています。

人的資本への投資と人材育成

持続可能な経済成長と包摂的社会の実現には、人的資本への投資と人材育成が欠かせません。グローバル化や技術革新が進む中で、高度な知識やスキルを持った人材を育成することが、日本の将来にとって何より重要だと言えます。
まず、教育の質の向上と機会均等の確保が重要な課題です。初等中等教育段階から、創造性や問題解決力、コミュニケーション能力などの育成に力を入れることが求められます。同時に、家庭の経済状況に左右されない教育の機会均等を確保するために、教育費負担の軽減や奨学金制度の拡充などが不可欠です。
高等教育段階では、社会のニーズに合った人材の育成が重要です。産業界と連携し、実践的な教育プログラムを提供することで、即戦力となる人材を育てることが期待されます。また、リベラルアーツ教育の充実を通じて、幅広い教養と批判的思考力を身につけた人材を育成することも重要だと考えられます。

社会のニーズに合った人材育成の必要性
予測不可能な時代に必要な文理の壁を超えた普遍的知識・能力を備えた人材育成が重要
デジタル、人工知能、グリーン、農業、観光など科学技術や地域振興の成長分野をけん引する高度専門人材の育成が必要
好きなことを追究して高い専門性や技術力を身につけ、自ら課題を設定し、多様な人とコミュニケーションをとりながら新たな価値やビジョンを創造し、社会課題の解決を図る人材の育成が求められている
人材育成を取り巻く課題
高等教育の発展と少子化の進行(18歳人口は2022年からの10年間で9%減少)
デジタル人材の不足(2030年には先端IT人材が54.5万人不足)
グリーン人材の不足(2050カーボンニュートラル表明自治体のうち、約9割が外部人材の知見を必要とする)
高等学校段階の理系離れ(高校において理系を選択する生徒は約2割)
諸外国に比べて低い理工系の入学者(学部段階:OECD平均27%、日本17%、うち女性:OECD平均15%、日本7%)
高等学校段階の役割
社会に開かれた教育課程の推進が重要
多様な生徒の興味・関心や特性、背景を踏まえて特色・魅力ある教育活動を行うとともに、特別な支援が必要な生徒に対する個別支援の充実が求められる
地方公共団体、企業、高等教育機関、国際機関、NPO等と連携・協働することによって地域・社会の抱える課題の解決に向けた学びが学校内外で行われ、生徒が自立した学習者として自己の将来のイメージを持ち、高い学習意欲を持って学びに向かうことが重要

加えて、社会人の学び直しの機会の拡充も重要な課題です。

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