第2章 ベーシックインカムの必要性
現代社会における貧困と格差の実態
ベーシックインカムが注目される背景には、現代社会における貧困と格差の問題があります。グローバル化や技術革新が進む中で、所得や富の分配の不平等が拡大しており、多くの国で貧困と格差が深刻な社会問題となっています。
例えば、OECDのデータによると、加盟国の平均で、上位10%の所得が下位10%の所得の9.6倍に達しています。また、貧困率(可処分所得が全人口の中央値の50%未満の人の割合)は、OECD平均で11.8%となっています。
特に、先進国では、相対的貧困の問題が深刻化しています。相対的貧困とは、社会の中で相対的に所得が低い状態を指します。先進国では、経済成長の果実が広く国民に行き渡らず、一部の富裕層に富が集中する一方で、多くの人々が相対的な貧困状態に置かれています。
また、新興国や途上国では、絶対的貧困の問題が依然として存在しています。絶対的貧困とは、基本的なニーズ(食料、住居、衣服など)を満たすことができない状態を指します。世界銀行のデータによると、2015年時点で、1日1.90ドル未満で生活する極度の貧困層は7億3,600万人に上ります。
貧困は、単に経済的な問題にとどまりません。貧困は、健康、教育、社会参加など、人間の基本的な権利の剥奪につながります。また、貧困は、社会の不安定化や犯罪の増加などの社会問題にもつながる可能性があります。
相対的貧困の特徴
高齢者が多い 高齢者が多く、特に60歳以上の世帯が多いことが指摘されています。
単身世帯や一人親家庭が多い 単身世帯や一人親家庭が多く、夫婦のみ世帯や夫婦と子どものみ世帯が少ないことが指摘されています。
郡部・町村居住者が多い 郡部・町村居住者が多く、都市部に比べて貧困率が高いことが指摘されています。
相対的貧困率の問題
深刻な問題 相対的貧困率は、15.6%と深刻な状態であり、特に一人親家庭の相対的貧困率は50.8%と非常に高いことが指摘されています。
貧困が固定化される 相対的貧困は、チャンスが制限されるため、現在の貧困状態から抜け出すチャンスも奪われてしまうことが指摘されています。
解決策
持続可能な開発目標(SDGs) 2030年までにあらゆる形態の貧困を無くし、全ての人々が豊かで平和に暮らすことができるよう、SDGsが設定されています。
貧困対策の強化 貧困対策を強化し、特に高齢者や単身世帯、一人親家庭に対する支援を強化することが必要です。
世界の相対的貧困状況
世界各国の相対的貧困率 OECDが加盟国を中心とする37カ国のランキングを示しています。日本は15.7%とG7の中で最悪の数字であり、先進国で最も貧困率が高い国とさえいえるでしょう。
格差の拡大も大きな問題です。格差は、社会の分断や対立を生む可能性があります。また、格差は、社会の公正さに対する信頼を損ない、社会の安定性を脅かす可能性もあります。
さらに、格差は、経済的な非効率性をもたらす可能性もあります。所得や富が一部の人々に集中することで、消費が抑制され、経済全体の需要が減少する可能性があります。また、格差は、教育や健康への投資の機会を奪い、人的資本の形成を阻害する可能性もあります。
このような貧困と格差の問題に対して、従来の社会保障制度では十分に対応できていないという指摘があります。特に、近年では、非正規雇用の増加や、テクノロジーの進展による雇用の不安定化など、新たな貧困と格差のリスクが生じています。
これに対して、ベーシックインカムは、全ての国民に無条件で一定の所得を保障することで、貧困と格差に対する新たなセーフティネットになると期待されています。ベーシックインカムによって、全ての人々の基本的なニーズが満たされ、社会的に排除されることなく、尊厳ある生活を送ることができるようになります。
ベーシックインカム導入メリット
生活保障により、貧困層の生活水準を引き上げ、格差を縮小できる
労働環境の改善や、起業意欲の向上など、労働者の自由度を高められる
社会全体の優先事項の根本的な方向転換を促す可能性がある
一方で、ベーシックインカムの財源確保が大きな課題となります。単独では国家予算の全てを使い切る規模が必要で、増税だけでは難しいとされています。
ベーシックインカムと並行して、教育や雇用の分野でも取り組みが重要
教育の機会の平等化や質の向上により、社会的流動性を高める
非正規雇用の改善や、中小企業の支援などで、良質な雇用を創出する
社会保障制度の改革により、格差の固定化を防ぐ
また、ベーシックインカムは、所得再分配の効果により、格差の是正にも寄与すると考えられています。ベーシックインカムによって、富裕層から貧困層への所得移転が行われることで、社会全体の所得分配の平等性が高まることが期待されます。
ただし、ベーシックインカムが貧困と格差の解消に寄与するためには、十分な給付水準が必要です。あまりに低い水準では、貧困の解消には不十分です。また、ベーシックインカムと並行して、教育や雇用など、貧困と格差の根本的な原因に対処するための施策も求められます。
以上のように、現代社会における貧困と格差の実態は、ベーシックインカムの必要性を示す重要な背景となっています。ベーシックインカムは、貧困と格差に対する新たなセーフティネットとして期待されていますが、その実現のためには、十分な給付水準と、他の施策との連携が必要とされています。
非正規雇用は、労働者が安定した雇用契約を持たず、短期的または不定期に雇用される形態です。解雇規制が緩和されると、企業は労働者を容易に解雇できるようになり、その結果として非正規雇用を選択する企業が増える傾向があります。このような状況では、労働者は職を失うリスクが高まり、安定した収入を得ることが難しくなるため、生活基盤が脆弱化します。
非正規雇用者は通常、正社員に比べて社会保障制度からの保護が薄いです。医療保険や年金制度への加入が不十分であるため、将来的な生活保障が脅かされます。これにより、経済的な不安定さが増し、貧困層が拡大する要因となります。
解雇規制緩和によって企業は人件費を削減しやすくなり、その結果として賃金水準が低下することがあります。特に非正規雇用者は低賃金で働くことが多く、これが所得格差を拡大させる要因となります。富裕層と貧困層の間の経済的な格差が広がり、中間層の減少も懸念されます。
格差社会では、経済的な背景によって社会階層が固定化される傾向があります。教育や職業選択の機会が限られることで、貧困層から抜け出すことが難しくなり、世代を超えた貧困の再生産が進む可能性があります。このような状況は、社会全体の流動性を低下させ、経済成長にも悪影響を及ぼします。
非正規雇用者の増加と所得格差の拡大は、消費市場にも影響を与えます。低所得層は消費支出を抑えざるを得なくなるため、市場全体の需要が減少し、経済成長にブレーキをかけることになります。このような消費市場の縮小は企業にも悪影響を及ぼし、さらなる雇用削減につながる恐れがあります
経済的不平等や階層固定化は社会的な不満や対立を生む要因ともなります。特に若年層や非正規労働者の間で不満が高まると、それが社会運動や政治的不安定につながる可能性があります。このような状況は長期的には国全体の安定性を損ねることになります.
技術革新による雇用の変化と不安定化
ベーシックインカムが注目されるもう一つの背景として、技術革新による雇用の変化と不安定化があります。AIやロボティクス、IoTなどの技術の進展により、多くの仕事が自動化される可能性が指摘されており、大量の失業が発生することへの懸念が広がっています。
例えば、オックスフォード大学の研究では、今後10~20年の間に、アメリカの労働人口の47%が自動化によって代替される可能性が高いと指摘されています。
世界経済フォーラムの報告書では、2022年までに、世界で7,500万人の雇用が失われる一方で、1億3,300万人の新たな雇用が生まれると予測されています。
特に、ルーティンワークと呼ばれる定型的な仕事は、自動化のリスクが高いと考えられています。例えば、工場の組立作業や、データ入力などの事務作業は、ロボットやAIによって代替される可能性が高いとされています。
学習段階と利用段階の区別 AIの開発・学習段階と生成・利用段階を明確に区別することが重要です。
学習段階での著作物の利用は、著作権法第30条の4に基づく許諾なく行うことができますが、生成・利用段階での著作物の使用は通常の著作権侵害と同様の判断基準が適用されます。
著作権法第30条の4の規定 この規定は、特定の条件を満たす場合について、著作権者の許諾なく著作物を利用することを認めるものです。具体的には、著作物に表現された思想や感情の享受を目的としない利用行為が含まれます。開発学習段階までが合法だとしてもAI生成時が合法とは限りません。著作権者の利益を害する場合は許諾が必要です。
享受を目的とする利用行為には著作権者の許諾が必要です。
享受を目的とするAI無断学習は違法です。
著作権侵害の要件 AI生成物が著作権侵害にあたるかどうかは、類似性や依拠性が認められるかによって判断されます。既存の著作物と似ているものが著作権侵害にあたるかどうかは、類似性や依拠性が認められるかによって判断されます。
司法判断と立法問題 学習段階における著作物の利用が著作権侵害に該当するかについては、司法判断において30条の4の但書の解釈問題となります。立法問題としても、著作権法の改正が必要と考えられます。
AIの労働代替可能性
AIの進化が労働の代替可能性を高めることが懸念されています。AIは膨大な情報を短時間で処理できるため、知的職業の分野でもAIの利用が進み始めています。特に、医療診断や法律判例検索など、医師や弁護士などの職種でもAIが代替する可能性があります。
ロボティクスの労働代替可能性
ロボティクスも労働の代替可能性を高めることが指摘されています。例えば、介護支援ロボットや掃除用ロボットなどの家事ロボットが家庭内で活躍し、人々を家事労働から解放することが期待されています。
IoTの労働代替可能性
IoT(Internet of Things)は、労働過程の外部から情報を取り込むことが可能になり、AIの操作がより効率化されることが期待されています。ただし、このような技術の進化が大量の失業を引き起こす可能性も指摘されています。
その影響
これらの技術の進化が大量の失業を引き起こす可能性があるため、企業や政府は新しいビジネスモデルや新しい技術を通じて労働生産性を高めることが重要視されています。特に、イノベーションによる省力化と労働生産性の引き上げが期待されています。
政策の提言
日本政府は、AIやロボティクス、IoTなどの技術の進化に伴う労働の変化に対処するために、イノベーションによる省力化と労働生産性の引き上げを推進する政策を提言しています。
著作権者の利益を不当に害するAI無断学習は違法です 著作権法第30条の4の乱用
著作権法第30条の4は、AIの学習に用いる著作物の利用を一定の条件の下で認める規定ですが、AI生成物の利用については直接言及していません。
AI生成物の利用に関しては、既存の著作物との類似性と依拠性が認められる場合、著作権侵害となる可能性があります。ただし、人間がAIを使わずに行う創作活動とは異なる点もあるため、著作権侵害の考え方について整理する必要があるとされています。
また、AI開発・学習段階では、思想又は感情の享受を目的としない利用であれば、著作権者の許諾なく著作物を利用できますが、生成・利用段階では通常の著作権侵害と同様の判断基準が適用されます。
したがって、AI生成物の利用に際しては、既存の著作物との類似性や依拠性に十分注意を払い、必要に応じて著作権者の許諾を得る必要があります。
AI無断学習は、著作権法第30条の4の規定により、一定の条件の下で合法化されていますが、AI生成イラストなどが合法とは明記されていません。
特定の場合にはAIの学習に著作物を無断で利用することができます。
・AIの開発・学習を目的とし、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない場合
・楽器や音楽再生機器の研究・開発のために曲を再生する場合
・AI技術の開発のためにデータの解析を行う場合
・その他、コンピュータの情報処理の過程で著作物を利用する場合
ただし、生成されたAI作品が既存の著作物と類似性・依拠性が認められる場合は、著作権侵害とみなされる可能性があります。
また、AIの学習に利用する著作物の利用方法によっては、私的使用の範囲を超えるため、著作権者の許諾が必要になる場合もあります。
著作権法の改正により、AIの機械学習のために著作物を無断で利用することが合法化された主な目的は、AIの技術開発を促進し、AIの社会実装を後押しすることです。
具体的には著作権法30条の4が改正・創設されました
著作物の情報解析 AIの開発のための情報解析のように、著作物に表現された思想や感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能とされます。これにより、AIの研究開発が大幅に促進されます。
ビジネス創出と社会実装 人間が鑑賞する目的ではなく著作物を利用する場合には、その利用に必要な限度で著作権者の許可を得ることなく著作物を利用してよいとされます。これにより、AIを活用したビジネスの創出や社会実装が加速することが期待されます。
ただし、例外もあります
著作権者の利益を不当に害する場合
著作権者の利益を不当に害する場合には、無断利用が認められません。
当事者間で著作権法の規定と異なる合意をした場合
当事者間で著作権法の規定と異なる合意をした場合には、無断利用が認められません。
人間が著作物を鑑賞する目的で利用する場合は、原則として著作権者の許諾が必要です。
著作物に表現された思想や感情の享受を目的とするAIイラスト生成のためのAI無断学習は違法です。
これらの例外を無視しているAI推進派が多すぎるため、著作権法の規定を遵守することが重要です。特に、人間が鑑賞する目的で著作物を利用する場合には無断学習は違法です。
学習用データとして利用されることを明示的に拒否する旨の表示がされている既存著作物を学習用データとして利用した場合や、有料で提供されている解析用データベースを許諾なく利用した場合は、「著作権者の利益を不当に害することとなる」と評価され、著作権侵害となる可能性があります。
また、特定の既存の作品群を集中的に学習させた場合など、AI生成されたイラストが既存の著作物に依拠していると認められる場合も、著作権侵害のリスクがあります。
著作権法第30条の4では、著作物を人間が鑑賞する目的ではなく利用する場合、必要な限度で著作権者の許可なく利用できると規定されています。 しかし、この規定は下記の場合には適用されません。
・著作物の視聴等を通じて視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることを目的とする場合
・主たる目的は非享受目的であっても、享受する目的が併存している場合
・著作権者の利益を不当に害することとなる場合 AI無断学習は不当に害している
特定の作品群を集中的に学習させたAIは、おそらく著作物の表現を模倣・再現することを目的としているため、違法である「享受を目的とする利用」に該当する可能性が高いです。 また、著作権者の利益を不当に害するおそれもあります。
例えば、情報解析用のデータベースの著作物を無断でAI学習に使うのは、著作権者の利益を不当に害するため、第30条の4の適用外となります。 特定の作品群を集中的に学習させたAIも同様に、著作権者の利益を不当に害するおそれがあるため、無断での学習は適法とは言えません。つまり違法です。
著作権法第30条の4は、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない」利用を認めています。この条文では条件が設定されています
・享受目的がないこと
利用者が著作物から得る目的が「享受」でない場合、利用が許可されます。享受目的である場合、著作権者の許可、許諾が必要です。
・著作権者の利益を不当に害さないこと
利用が著作権者の利益を不当に害する場合、この条文は適用されません。
具体的には、技術開発や情報解析など、著作物を直接享受することを目的としない利用が認められています。
AIによる生成物が著作権侵害と見なされる場合
類似性と依拠性 AIが生成した作品が元の著作物に類似している場合、またはその表現に依拠していると判断されると、著作権侵害となります。
特に、プロンプトに著作者名や版権キャラクター名を含めた場合、
その依拠性が強くなるため注意が必要です。
狙い撃ちLoRAは著作権侵害です。
絵柄LoRA,アートスタイルLoRA,有名イラストレーターLoRA、絵師LoRAの使用には依拠性があるAIイラストが生成されるため、著作権侵害、著作権法違反です。
赤松 健 ⋈(参議院議員・全国比例)
@KenAkamatsu
樋口紀信先生のLoRAの件で、多くの質問を頂いています。特徴的なのは、Civitaiでの配布場所に「学習に使用した画像は全て自作したものであり、イラストレーター本人の著作物は一切使用していません。」と書かれている点です。しかし、仮にイラストレーター本人の著作物が一切AI学習に利用されていないとしても、生成物の生成・利用行為が、既にある著作物との関係で「類似性・依拠性」を満たせば、それで著作権侵害となります。
利用者のみならず、開発者(つまりLoRAを作った人)が侵害主体になる可能性もあります。
この辺りは、文化庁が出した「AIと著作権に関する考え方について」に詳しく書いてありますので、ご参照下さい。
https:// bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_07/pdf/94024201_01.pdf
また、AIと著作権について相談できる「法律相談窓口」も設置されましたので、ご活用下さい。
https:// bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index.html
ちなみに生成AIについては、パブリシティ権など著作権以外の侵害の可能性なども、政府で検討が進められています。
https:// x.com/KenAkamatsu/status/1770426111706685705
イラストレーター狙い撃ちLoRA、漫画家集中学習LoRA、有名なイラストレーター名や絵師の名前、版権キャラクター名をプロンプトに含めると、その作品が元の著作物に依拠していることが明確になります。このような場合、元の作品と新たに創作された作品との間に類似性があると判断される可能性が高くなります。特に、オリジナルの表現や特徴が直接感得できる場合、法的には著作権侵害と見なされることがあります。
著作権侵害は民事上および刑事上の責任を伴う可能性があります。無断で著作物を利用した場合、損害賠償請求や差止請求などの法的措置を受けることがあります。また、刑事罰として懲役や罰金も科せられることがあります。
最も確実な方法は、オリジナルの著作権者から許可を得ることです。この際には使用目的や条件を明確にし、書面で残しておくことが重要です。これによって後々のトラブルを避けることができます。
狙い撃ちLoRAを使用したり、
有名イラストレーター名や版権キャラクター名をプロンプトに含めることは、高い依拠性を示すため、それ自体が著作権侵害につながるリスクがあります。
日本音楽作家団体協議会(FCA)
パブリックコメント 著作権法30条の4
「著作権法改正の審議の過程で強調されたことは
日本発のイノベーションを促すための法改正で、
日本版検索エンジンの開発のために著作物を利用するということであって、
人が知覚を通じて著作物を享受するものではないということでした」
だまし討ちで著作権法改正
AIイラストは人が知覚を通じて著作物を享受しているため著作権法違反
また人工知能導入、機械化、自動化の影響は、単に雇用の量的な減少だけではありません。技術革新は、雇用の質的な変化も引き起こしています。従来の終身雇用や正規雇用の形態が崩れ、非正規雇用や短期雇用、フリーランスなど、不安定な雇用形態が増加しています。
このような雇用の不安定化は、所得の不安定化につながります。安定した収入を得ることが難しくなり、将来の生活設計が立てづらくなります。また、社会保険料の支払いが不安定になることで、社会保障制度の維持にも影響を及ぼす可能性があります。
不安定な雇用形態の特徴
不安定な雇用契約 契約更新が確約されていないため、雇用が不安定です。
時給制の給与 時給制の給与が多く、月給や年俸制の給与は少ない。
休日が多い月の給与減少 休日が多い月には給与が減少することがあります。
昇給や昇格が見込めない 昇給や昇格のチャンスが少ないため、キャリアアップが困難です。
退職金制度の無い場合 退職金制度が無い場合があります。
不安定な雇用形態の例
派遣労働者 企業から派遣されて、特定の仕事を行う労働者です。
請負労働者 企業が請負契約を結んで、特定の仕事を行う労働者です。
パートタイマー パートタイムで働く労働者です。
アルバイト アルバイトとして働く労働者です。
零細自営業者や在宅就業者 自営業や在宅で働く労働者です。
不安定な雇用形態の問題点
正規雇用との賃金格差 正規雇用との賃金格差が大きく、安定した生活が築きにくいです。
ある日突然仕事がなくなることがある 企業の経営業績が悪化した際に、人件費を抑えるために最初に雇用を打ち切られることがあります。
さらに、技術革新は、雇用の二極化をもたらす可能性もあります。自動化によって中間的な仕事が失われる一方で、高度な知識やスキルを必要とする仕事と、対人サービスなどの低賃金の仕事は残るという「労働市場の二極化」が懸念されています。これは、格差の拡大につながる可能性があります。
このような技術革新による雇用の変化と不安定化に対して、ベーシックインカムは一つの解決策になると期待されています。ベーシックインカムによって、全ての人々に無条件で一定の所得が保障されることで、技術革新によって仕事を失った場合でも、生活の基盤を維持することができます。
また、ベーシックインカムは、技術革新に適応するための教育や職業訓練の機会を提供する上でも重要な役割を果たすと考えられています。ベーシックインカムによって生活の基盤が保障されることで、個人は必要なスキルを習得するための時間と資源を確保することができます。
ただし、ベーシックインカムが技術革新による雇用の変化に対応するためには、ベーシックインカムだけでは不十分です。教育や職業訓練の充実、雇用政策の見直しなど、総合的な対策が必要とされています。また、技術革新そのものをどのようにコントロールするかという点も重要な課題です。
以上のように、技術革新による雇用の変化と不安定化は、ベーシックインカムの必要性を示す重要な背景となっています。ベーシックインカムは、技術革新に適応するためのセーフティネットとして期待されていますが、その実現のためには、他の政策との連携が不可欠です。
AIが人間の重要な判断をすることに対する違和感
AIシステムが人間の判断を代替することには懸念があります。
AIは人間の偏見を学習し、拡大させる可能性がある
AIシステムは学習データに含まれる人間の偏見を学習し、それを拡大させてしまう可能性があります。例えば、人種や性別に基づく採用や融資の差別につながるような偏見がAIに組み込まれる恐れがあります。
AIの判断は不透明で説明困難
多くのAIシステムは、その内部の判断プロセスが不透明で、人間には理解や説明が難しい「ブラックボックス」です。重要な判断を下す際には、その根拠を明確にできることが重要ですが、AIではそれが困難な場合があります。
人間の判断には文脈理解が含まれる
人間の判断には、状況の文脈を理解し、柔軟に対応する能力が含まれます。
AIはまだ文脈理解が不十分で、状況に応じた適切な判断を下すのは難しい面があります。
人間の尊厳と自己決定権の尊重
人間の重要な選択を自動的にAIに委ねることは、人間の尊厳と自己決定権を侵害する恐れがあります。人間が自らの人生に責任を持ち、自律的に判断することは重要な価値だと考えられます。
AIに人間の判断を委ねることには慎重であるべき理由があります。ただし、AIを人間の判断を支援するツールとして活用し、最終的には人間が責任を持って判断することは有効だと考えられます。AIと人間が協調して判断することで、より公平で適切な決定ができるかもしれません。AIの活用においては、人間の価値観や倫理観を反映させ、人間の尊厳を守ることが重要だと言えるでしょう。
効率性を追求することは、組織や社会を前進させるために重要です。しかし、効率性を追求する際に、人種や性別などによる差別が生じてはいけません。
例えば、ある企業が効率性を理由に、職務経歴書の名前から性別や人種を判断して採用を決めるのは差別につながります。 一方、業務遂行能力に応じて公平に評価し、多様性を尊重することは効率性と両立できます。
また、数学や物理学などの分野で、天性の頭の良さを重視する文化的固定観念により、女性の参加が少ないという指摘もあります。 しかし、これは効率性を高めるためではなく、偏見に基づく差別です。
効率性を追求する際は、人種、性別、障害の有無などによる差別をなくし、多様性を尊重することが重要です。効率性と公平性は両立可能であり、むしろ多様性を活かすことが組織の競争力を高めるのです。
企業がレイオフを行う際、従業員の人種、信条、性別などを理由に選別的に解雇することは、憲法14条1項の平等原則や国際人権条約に反する差別行為と判断される可能性が高いです。
三菱樹脂事件の最高裁判決では、企業の人事権の行使にも平等原則が及ぶとされています。従業員の解雇に際しては、客観的で合理的な理由が必要不可欠です。
企業は、レイオフを行う際、従業員の人種、信条、性別などを理由とした差別的取り扱いを避け、客観的な基準に基づいて公平・公正に実施することが求められます。差別的なレイオフは、憲法や国際人権条約に反し、企業の社会的責任を問われる重大な人権侵害行為に該当し得るのです。
社会保障制度の限界と課題
ベーシックインカムの必要性を考える上で、現在の社会保障制度の限界と課題についても理解しておく必要があります。多くの国で、社会保障制度は複雑化・肥大化しており、制度の持続可能性や効率性、公平性などが問題となっています。
まず、現在の社会保障制度は、主に雇用を基盤としたものになっています。失業保険や年金、健康保険など、多くの制度が雇用関係を前提としています。しかし、前述のように、技術革新や経済のグローバル化により、雇用の形態が多様化・不安定化しています。非正規雇用やフリーランスなど、従来の社会保障制度では十分にカバーできない雇用形態が増えています。
また、現在の社会保障制度は、特定のリスク(失業、疾病、高齢化など)に対応するものになっています。しかし、現代社会では、これらのリスクが複合的に発生することが多くなっています。例えば、非正規雇用の増加は、失業リスクだけでなく、貧困リスクや健康リスクとも関連しています。このような複合的なリスクに対して、縦割りの社会保障制度では十分に対応できない可能性があります。
貧困リスク
低賃金 非正規雇用の平均賃金は正規雇用の約半分であり、生活の安定が困難です。国税庁の2019年民間給与実態統計調査によると、非正規雇用の平均賃金は175万円に対し、正規雇用の平均賃金は503万円です。
不安定な雇用 非正規雇用は、短期契約や一時的な雇用であり、将来の雇用の安定性が低いです。これにより、貧困の経験が長期化し、生活の安定が困難になります。
就労可能層の経済的困難 リーマンショックを受けた厳しい雇用環境の中、経済的に困難な状態に陥った者が増加し、受給世帯の増加につながっています。
健康リスク
ストレスと精神衛生 非正規雇用は、不安定な雇用と低賃金により、ストレスと精神衛生の問題が増加します。厚生労働省の「貧困・格差の現状と分厚い中間層の復活に向けた課題」によると、貧困経験が精神衛生に与える影響が深刻です。
健康状態の悪化 貧困とストレスは、健康状態の悪化を招きやすく、医療費や医療サービスへのアクセスが困難になることがあります。
失業リスク
就職率の低下 非正規雇用から正規雇用への移行が困難であり、就職率が低下します。厚生労働省の「非正規労働者の正社員化に際しての政策課題」によると、非正規労働者が翌年に正規社員になった人は、10%程度にとどまっています。
長期的な経済成長の脅威 企業では、有期雇用の非正規社員が増加し、長期的な展望での人材育成ができず、継続的な経済成長を脅かしています。
さらに、現在の社会保障制度は、給付と負担のバランスが取れなくなってきているという問題もあります。多くの国で、高齢化の進展により年金や医療費などの給付が増大する一方で、少子化により現役世代の負担が増えています。このような状況の中で、社会保障制度の持続可能性が脅かされています。
加えて、現在の社会保障制度は、受給資格の制限や手続きの煩雑さなどから、本当に支援を必要とする人々に十分な支援が行き届いていないという問題もあります。例えば、生活保護制度では、厳しい資格要件や社会的スティグマ(偏見)などから、受給率が低くなっているという指摘があります。
このような社会保障制度の限界と課題に対して、ベーシックインカムは一つの解決策になると期待されています。ベーシックインカムは、雇用形態に関わらず、全ての人々に無条件で一定の所得を保障するものです。これにより、雇用を基盤とした社会保障制度の限界を克服することができます。
また、ベーシックインカムは、複合的なリスクに対しても、包括的な支援を提供することができます。ベーシックインカムによって、失業、貧困、健康などのリスクに対する基礎的な保障が提供されることで、個人はより安定した生活を送ることができるようになります。
資格要件の厳しさ
生活保護制度の受給要件が厳しく、特に日本では受給漏れが問題になっています。稲葉剛氏は、受給漏れの割合が要件を満たしている人のうち7-8割に達すると指摘しています。
社会的スティグマ(偏見)
受給者に対するスティグマが強く、生活保護を利用することが恥ずかしいと考える傾向が強いです。日本では、生活保護を「恩恵」と見なす風潮があり、受給者が「やってあげる」ものとして認識されていることが問題視されています。また、メディアの報道もこのスティグマを助長しており、受給者に対するバッシングが広がっています。
メディアの影響
メディアの報道が生活保護に対する態度に強く影響しており、受給者に対するスティグマをさらに強めるおそれがあります。特に、エピソード型フレームに基づく報道は、当事者への安易な責任帰属を促す危険性があります。
政策的背景
生活保護の厳格化志向が社会経済階層やメディア接触との関連から分析されており、特に失業経験や失業不安を持つ人々がこれを支持する傾向が指摘されています。
対策
生活保護の受給率を高めるためには、スティグマの軽減が重要です。具体的には、受給者に対する尊重と理解を促すメディア報道や、受給要件の緩和を含む政策の改善が必要です。
メディアの報道が生活保護受給者に対するスティグマを助長しており、バッシングが広がっていることが指摘されています。特に、生活保護バッシングという現象が問題となっており、受給者に対する偏見やマイナスイメージが強く、受給者自身も内面化して恥や後ろめたい感情を抱くことが多くなることが指摘されています。
メディアの報道がスティグマを助長する要因
偏向報道 メディアが生活保護受給者に対する偏向報道を行うことで、受給者に対するスティグマを助長しています。具体的には、不正受給や受給者が貧困に陥ることに関する報道が多く、受給者に対するマイナスイメージを強化しています。
受給者に対する攻撃 メディアが報道する中には、生活保護受給者を攻撃し、制度への不信感を煽るような報道も少なくありません。これにより、受給者に対するスティグマが強化され、受給者自身も内面化してしまうことがあります。
さらに、ベーシックインカムは、社会保障制度の持続可能性を高める可能性もあります。ベーシックインカムは、既存の社会保障制度を部分的に代替することで、制度の簡素化と効率化につながる可能性があります。また、ベーシックインカムによって個人の自立が促進されることで、社会保障費用の抑制にもつながる可能性があります。
ベーシックインカムでは、労働は最低限の生活を起点として必要な分だけ賃金を得る方式となります。このため、仕事と余暇の割り当てを自由に行えるという点から、多様な生き方を認める思想につながります。
また、ベーシックインカムの導入により、個人の収入が保証されるため、自らの意思で仕事を選択したり、起業したりするなど、個人の自立が促進されると考えられます。
さらに、ベーシックインカムは生活保護制度に代わる制度として提案されており、個人の自立を後押しすることが期待されています。
ただし、ベーシックインカムが社会保障制度の限界と課題を解決するためには、ベーシックインカムの制度設計が重要です。ベーシックインカムの給付水準や財源、既存の社会保障制度との関係性など、詳細な制度設計が求められます。また、ベーシックインカムだけでは解決できない課題もあるため、他の社会政策との連携も必要です。
以上のように、社会保障制度の限界と課題は、ベーシックインカムの必要性を示す重要な背景となっています。ベーシックインカムは、雇用を基盤とした社会保障制度の限界を克服し、複合的なリスクに対応するための新たな社会保障の形として期待されています。ただし、その実現のためには、詳細な制度設計と他の社会政策との連携が不可欠です。
ベーシックインカムによる貧困と格差の是正
ベーシックインカムは、全ての国民に無条件で一定の所得を保障することで、貧困と格差の是正に寄与すると期待されています。ここでは、ベーシックインカムによる貧困と格差の是正について、より詳しく見ていきます。
シングルマザー
ベーシックインカムは、シングルマザーにとって特に有効な制度と考えられます。シングルマザーは、子育ての負担が大きく、労働時間の制約や経済的不安が多いことが多いです。BIは、シングルマザーが子育てを続けるための経済的安全網を提供し、生活の質を向上させることが期待されます。
高齢者
高齢者にとって、ベーシックインカムは、生活の安定と経済的安全を提供することが期待されます。高齢者は、労働力が衰え、経済的不安が増加することがあります。BIは、高齢者が安心して生活できるように、最低限度の生活費を提供します。
障がい者
障がい者にとって、ベーシックインカムは、経済的不安を軽減し、生活の質を向上させることが期待されます。障がい者は、労働力が制限されることが多く、経済的不安が増加することがあります。BIは、障がい者が安心して生活できるように、最低限度の生活費を提供します。
まず、ベーシックインカムは、貧困の予防と緩和に効果があると考えられています。ベーシックインカムによって、全ての人々に基礎的な生活が保障されることで、絶対的貧困に陥るリスクが大幅に減少します。また、相対的貧困についても、ベーシックインカムによって所得の底上げが行われることで、貧困率の改善が期待されます。
実際に、ベーシックインカムの効果を検証したシミュレーション研究では、貧困率の大幅な改善が示されています。例えば、カナダの研究では、年間2万カナダドルのベーシックインカムを導入することで、カナダの貧困率が10.8%から4.8%に改善されると試算されています。
また、ベーシックインカムは、特に貧困のリスクが高い人々にとって重要な意味を持ちます。例えば、シングルマザーや高齢者、障がい者など、就労が困難な人々にとって、ベーシックインカムは重要な生活の基盤となります。ベーシックインカムによって、これらの人々の生活が安定し、社会参加の機会が拡大することが期待されます。
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